101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
胸にしまい込んだ夢の置き場所
仙台を拠点に活動する七人のアイドルグループの奮闘を描いたシリーズ一作目。
随分前に続・劇場版前後編までのシリーズを見終わった上で、
最近、この秋に放送されるTVアニメ新章に向けての復習がてら、
物語の原点を再見したら、ふとこんなレビュータイトルが浮かんで来ました。
ストーリーはかつて国民的アイドルグループ・I-1clubのセンターだった島田真夢の、
一度は諦めた夢の再生などを軸に展開。
かつて東京で母子二人三脚で芸能活動で夢を追った親子による夢の封印方法は壮絶。
“消息不明”になるために仙台に住む母の実家に落ちのびるように転がり込み、
夢路となっていた東京との地縁からぶった切り、夢を物理的に排除。
迎え入れた母方の祖父母もアイドルに関係するニュースに真夢らが触れないようにするなど、
家中にはかつての夢を黒く塗りつぶし強制終了したことによる、
重苦しい空気が充満しています。
『WUG!』シリーズにはこの母子の他にも夢を終わりにしたり、
或いは夢を諦め切れない登場人物が数多く描かれて行きます。
例えば後のシリーズ作までネタバレして言及すると……。
{netabare}「アイドルは物語」と豪語した事務所の女社長もかつて芸能活動で夢を追っていましたし、
マネージャーも遠い昔に音楽活動を封印しており、
一方で、その時の親友は今も音楽活動を続けています。
さらにはTVアニメ1期以降、東京-仙台間で乱戦を仕掛ける天才プロデューサーの奇行も、
I-1clubが初期にゲリラライブやっていた頃の、
輝きを求めた足掻きとも解釈できると思います。
もっと言えばスキャンダルすら出汁にして
I-iclubをトップに押し上げる白木社長の冷酷非情も、
過去に展開していたアイドルグループ夢散を繰り返すまいとする
彼なりの答えなのだと思います。{/netabare}
何も諦めた夢が傷になっているのは元アイドルセンターの少女だけじゃない。
大人たちもまた、胸にしまい込んだ夢が疼いたり、
或いは後悔という恐怖を回避するため夢にしがみ付いたり、
日々、夢と折り合いを付けながら生きている。
『WUG!』にはそんな様々な夢との向き合い方が散りばめられ、
私も時にシンパシーと共に胸にチクチクとした痛みを感じるのですw
ただ大人たちは諦めた夢に対しても、すんなり割り切れるのかもしれません。
例えば芸能事務所で、或いは楽曲提供という形で、
アイドルと言う物語を育むことで、夢を託すという軟着陸も可能でしょう。
結局、真夢が封印した夢はしまい込むには余りにも大きすぎたし、
何より少女自身が夢を諦めるには余りにも若すぎたのだ。
そんな着想と共に、真冬の仙台、寒風雨天を切り裂いて、
少女の夢がふたたび走り出したシーンに再会した時、
私は初見時以上に心が震える物を感じました。
再見時まで忘れかけていましたが、そう言えば丹下社長がぶち上げたWUG!の目標は、
{netabare}「夢はでっかく紅白出場!」でした。因みに現状まだ実現する気配はありませんw{/netabare}
どこまで本気なのか……あの社長もなかなか曲者なので読めませんがw
豪語した以上は、TVアニメ新章以降で、
抱いた夢の決着……きっちり付けて頂きたいと思います。