「WHITE ALBUM2(TVアニメ動画)」

総合得点
77.8
感想・評価
1114
棚に入れた
5637
ランキング
595
★★★★☆ 3.9 (1114)
物語
4.0
作画
3.7
声優
3.9
音楽
4.1
キャラ
3.9

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タケ坊 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.5 作画 : 3.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

続編制作を切望する作品

老舗ゲーム雑誌「ファミ通」のレヴューにてプラチナ殿堂入りしている名作ギャルゲームが原作。
アニメはゲーム内の「序章」部分を1クールでまとめたもの。
(因みにゲームとしてはこの次の章からが本番となる。)

いわゆるギャルゲームと呼ばれるジャンルの中では、
世間的に最高峰に位置するものだということに、異論を唱える人は少ないと思われるが、
アニメの方も大きな改変もなく、カットも必要最小限で、
概ね原作ファンの期待を裏切ることのないものになったと思う。
これは原作者の丸戸氏が脚本として関わっているという事が、その理由として大きいだろう。
(自分はアニメを観てから原作をプレイしてみたが、一話の作りに関しては完璧だと思う)


☆物語☆

構図としては使い古された、ありふれた三角関係を描いた恋愛物語でありながら、
何故多くの人の心を掴むのか。
それは、ありふれたハーレム、恋愛ものには無い「緻密に作りこまれた設定とシナリオの秀逸さ」に尽きる。

例えば作りの甘い作品ではヒロインが主人公に惹かれる理由や動機が弱かったりするものだが、、
この作品では出会いから三角関係に到るまでの過程が、本当に丁寧に描かれている。
やはり土台となる設定がしっかりしているからこそ、物語の中の人物に感情移入や共感する事ができるというもの。

三角関係になってしまうのは、直接的には一人の行動が招いた結果だが、
その他二人の人物にも同様に落ち度があり、
それらはキャラクターの性格や過去を鑑みると不可抗力とも言えるもので、
ご都合主義ではないリアリティを伴っていて、また充分な説得力を持っていると思う。

前半部分は学園祭までの、「三人の最高だった日々」が描かれていて、
特に学園祭ステージの場面では、甘く爽やかな最高の青春の1ページを味わわせてくれるが、
後半部分との落差、ギャップが溜まらない。

また、セツナだけが他の人物の心情を敏感に察していて、あとの2人は全く鈍感な所が面白い。
6話で「届かない恋」の譜面を観て、一瞬唇を噛むような仕草が見受けられるが、
この時点でセツナは全てを確信しているんですよねぇ。

一方のポーカーフェイスなカズサの心情はなかなか読み取れないが、
後半に感情を爆発させる場面は、心動かされずはいられない。
そこからカズサの回想が描かれるシーンを観て、一気にカズサの想いに胸を打たれる視聴者は多いはずだ。

12話エンディングの「届かない恋」は最高の学園祭ステージの最後の曲。
これほどの皮肉はない、素晴らしい演出。
しかも注意深く聴くと解ると思うけど、この学園祭バージョンはセツナの歌声が悲しげなんですよね。。

突っ込みどころを挙げるとすれば、最後の空港の場面になるかな、とは思うけど、
個人的にはこの作品中の三人の関係の残酷さを伝えるものとして、シンボリックな場面で印象深いものだと思う。
たぶんここはゲームの方が違和感が少ないかもしれない。


☆声優☆

ヒロイン二人の声質が対照的でよくハマっているし、ハルキの声もキャラの性格によく合っていて、
キャスティングとしては申し分ないと思う。

セツナ演じる米澤さんの歌唱力も素晴らしく、一声優が歌うレベルを超えていると思う。
カズサとハルキが感情をぶつけあったシーンは、まさに迫真の演技。
この場面は感情をMAXに高めてアフレコに臨むために、別で録ったと何かで読んだ気がする。


☆キャラ☆

この物語が名作として名高いのは、シナリオが優れていることはもちろんだが、
キャラ設定の作り込みによる所も大きいと思う。

ヒロイン2人共に美人だが、感情を敏感に読み取れ素直な性格のセツナ、全く鈍感でへそ曲がりなカズサ、
また、セツナに関してはリアリティを感じるし、カズサは2次元的なキャラである意味究極のツンデレ、
と、かなり対照的な描かれ方をしている。

ハルキに関しては、その面倒見の良さと責任感の強さが、ウザいキャラとして描かれているが、
結果として2人のヒロインの気持ちを掴んでしまうのは何とも上手い設定。
恋愛ものの主人公というと、視聴者から観てなんでこいつが?的なキャラが多かったりするものだが、
(設定やシナリオの作りこみが甘いため)
ハルキに関しては、そのように思う視聴者は少ないのではないだろうか。


☆作画☆

贔屓目に見てもクオリティとしてはあまり高くはないと思う。
ただ、原作よりキャラデザインが見やすくなっているのと、
何より動いてるだけで充分ありがたい。
ゲームでは描くことの出来ない表情の変化、
細かい部分の描写でテキストを補う事ができているのは、アニメならではだと思う。


☆音楽☆

このアニメを語る上では欠かせない、最も重要な要素の一つだが、
大人の事情で採用されるようなミュージシャンの楽曲とは全く異なり、
各曲はすべて登場キャラクター達の想いがリンクし、またその歌詞に込められている。
(WHITE ALBUM1からの曲は除くが、曲自体は同様に素晴らしい)

OP,ED以外の挿入曲も同様で、捨て曲無しの名曲のオンパレード。
それ以外のBGMもゲームで使われた曲がアレンジされて使用されているが、
これが本当にクオリティが高くて、要所での盛り上げに一役買っている。
音楽、楽曲面での充実ぶりは、本当に驚異的なレベルだと思う。

因みにアニメ公式HPのインタビューでアクアプラスの下川氏が言うには、
<とにかく打ち込みを排除して生音に拘った。
<通常のアニメの相場よりも3~4倍は予算がかかってしまいました。
とのこと。。


正直恋愛ものでここまでよく出来たシナリオはなかなか無いと思うが、
(ゲーム含めた全体で)
最初に書いた通り、アニメで描かれているのはあくまで導入部分。
ここからが本当の始まりなので、何とか続編制作を願わずには居られない。

しかしながら、そもそもこの作品をアニメ化したのは、原作のプロモーションを兼ねてのことなので、
その目的が達成されてしまった以上、アクアプラス的には続編を作るメリットはないのだろう。
円盤売上もそこまで売れなかったようなので、続編制作の可能性としては低いと言わざるをえない。
どこかの制作会社がこの物語を完結させようと、立ち上がってくれると良いのだが。。

投稿 : 2016/03/05
閲覧 : 257
サンキュー:

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