退会済のユーザー さんの感想・評価
3.7
物語 : 4.5
作画 : 2.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
閉じられた世界の、開かれた解釈
原作の安倍吉俊が述べているように、村上春樹『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』における「世界の終わり」がモチーフになっている。村上を読んだことのある人なら一見してそれとわかる世界観だ。
ただし、両者に大きな違いがあることも明らか。村上においては①「世界の終わり」の壁の外には現実の世界が確かにあること、②その世界の(いささかハードボイルドに過ぎる)現実をきっかけとして「世界の終わり」が成り立ってしまったこと、③「世界の終わり」が主人公の主観の内部で作られた世界であることの3つが全て明白であるのに対して、『灰羽』の「グリの街」はそれらが全て不明確である。どちらかというと、僕らは村上の「世界の終わり」を「突きつけられる」わけだが、『灰羽』の「グリ」は、「自分なりの世界として解釈してみる」という行為をせざるを得ない。こういう開かれた世界観が今の時代にどれだけ受け入れられるかわからないけれども、だからこそ貴重な作品とも言える。アニメ不遇の時代だからこそ生まれたと言えるかもしれない。