ポッチャマン さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
まんず、がんばっぺ!
タイトルは第8話に登場したみゃーもりの姉ちゃんのセリフから。謎に出てきた感じだったけど、なぜかすごい印象に残ってます(笑)
P.A.WORKSの作品はオリジナルものが多く、そのなかでもこの作品は異色中の異色ですね。アニメを作る制作現場をアニメで描くという視点の特異さには頭が上がりませんw
2クールものなのにけっこうセリフのテンポが良く、どんどん観てしまいます。登場人物がかなり多く、繰り広げられる会話が仕事の話なのでハイペースで聞けて気持ちいいです。作中で序盤はずっと人物の名前のテロップが出ていたり、所々で細かい工程の説明もあったりなので、誰でもある程度は分かるように作られていますね。観ている途中はアニメ業界という世間的に普段見られない現場を本当に観てた気になります。
最初から最後まで、制作進行という、特定の技能は必要ないがスタッフ全員と関わる仕事を担当する宮森あおいが主人公で進んでいきます。この制作というポジションの忙しさやいろんな方と対話できる特徴を活かして、上手く物語としてブレずにスタッフたちの仕事を紹介出来ていたと思います。この作品一番の長所です。
前半は、本社元請けのオリジナルもの、後半は漫画原作作品の制作で、担当編集者に殴り込む展開もあって、ここはあくまでフィクションですが、エンターテインメント性も充分に感じ取れます。
特に会話の間や言い方に繊細に気をつけているんだろうと思います。例えば、14話の声優のキャスティングの場面とか。製作関係者の掛け合いはとても勢いがあって面白いですw
そのため、全部が全部ノンフィクションだとは言えませんが、とても具体的にアニメ制作がわかる作品ですね。
{netabare}
知ってる人は多いと思いますが、本作、アニメ関連のパロディ(?)が非常に多く、結構簡単なもじりで気づきやすいとこが多くて、面白いです。
まず、作中の木下監督は水島精二監督がモデルで、Twitterでもわかるように、実際この作品の監督である水島努監督は誠二監督と交流があるそうですし。作中の人気声優も言わずもがな。人物は本当に実際のモデルがいる人ばかりで挙げきれない(笑)
制作会社だと、ザボーンの伊波政彦はボンズの南雅彦さんだし、サンアップとか完全にサンライズだしw
{/netabare}
所々、気になったところとして
{netabare}
第8、9話を観ててひとつ思ったのは、木下監督が最終話の絵コンテに煮詰まり、シナリオライターの人と話し合うシーン。アニメ製作を企画した当初に何をやりたかったか、監督は主人公たちがこういうラストだと視聴者に夢を諦めないことを伝えられるだろうと気づいたところ。
私はこれ以前にも観はじめて早速、テレビアニメの制作がここまで放送と同時にリアルタイムで進行していて、(1話放送始まってもまだシナリオが決まっていないこととかに)驚かされていたのですが、
この9話で、アニメのの話のつくり方がこうも特殊で、たくさんの人に影響されて、リアルタイムで決めていき、アニメになるのか!なるほど!と思ったのです。(作中では最終話の絵コンテを仕上げるのが遅いという指摘がありましたが。)
というのは、普段私たちが観ているテレビアニメという媒体がなぜ、演出にとっても、脚本にとっても《日本のアニメ》とわかる雰囲気を持った特徴を持っているのか、その要因のひとつにこういう、チームワークで、かつ放送と同時に長い時間をかけて創られるからなのかなと思えました。
↑直接的な答えになってないですけど、少し噛み砕いて言うと、名作と呼ばれる日本アニメには直接ではなくとも分かりにくくとも、ほぼ全てにメッセージ性があって、他に何も気にならないくらい、「観て良かった。」と素直に出てくる物語の締め方があるふうに感じます。例えば{netabare}作中劇の『えくそだす!』は現実から逃げまくっても最後には、歌という夢を捨てきれずに大勢のファン前で歌うエンドでしたっけ。木下監督はそこで、警察に囲まれていながら一気に観客や馬までもが走り出していくところをリアルさを捨てて、精一杯豪華な演出にしようとしてましたが、{/netabare}
これって普通ありえないだろとか視聴者に言わせるよりも、「こういう終わり方だとアニメっぽくて印象に残るな〜」とか、「こういう締め方だと視聴者の受け取り方が幅広くなって自由に続きを妄想しやすいな」というのが視聴者側にあって、制作スタッフもこれを意図して制作していて、こういうメッセージを受け取ってほしいみたいな願いが詰まっていると感じるのですよ。私は。
もちろん【萌え】もそのために大事な要素のひとつかなと。
だからこそアニメらしい《超展開》が生まれたりするのかな。当初と気持ちが変わったり、脚本家の嗜好の違いだったり。それが良いか悪いかは作品や人それぞれですけど。{/netabare}
昨今のネットでのアニメーター待遇の騒動など、私達は放送を観てBD・DVDや関連グッズを買うことでしか応援できないですが、好きなことを仕事にして、時に徹夜してまで頑張って描かれているこの業界の人たちにはある意味すごい人たちで、そうした職人技をテレビ放送など簡単に拝見できる世の中、業界の人たちにはちゃんと感謝して観ないといけないですね。
と、色々アニメ制作の驚き、発見をたくさんくれた本作ですが、もちろん、みゃーもりたち5人それぞれの成長物語としても丁寧な描写で良かったんじゃないですか。基本的な舞台として武蔵野アニメーションの人たちが多いけど、人数が多い割には同好会の5人の描写が最後までしっかりと描かれていて、最終話の七福神のシーンはちゃんと感動できるようになっていると思います。
感動と言えば、声優志望のずかちゃんはもう...最高に涙しました。あそこのみゃーもりの表情はアニメ界随一の素晴らしい描き方だと思います。ウワサによるとあのシーンだけ女性が原画やってるらしいですけど。
兎にも角にも、素晴らしい作品のひとつであることは間違いないです。アニメを観るのに慣れてきたくらいの人にとてもオススメです。