過たる さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
ジブリ発のガチ百合かと思ったら、違った
この映画は大人向けの映画だと思う。
子ども向けにしては、動きが少ない。特に、空から落ちたり、魔法で空を飛んだりといった上下移動が無いイメージ。
あとマスコットキャラがいない。魔女宅のジジ、となりのトトロのトトロみたいなの。
中身は『“思い出”のマーニー』という時点で既にオチてた。タイトルオチだよ。
思い出とは、過去の体験を思い出すこと。つまり、初体験は有り得ないということ。作中で12歳の主人公が経験することは、実は過去に何らかの形で経験してるということが核心だと思う。
以下、3つテーマに沿っていこうと思う。
・アンナが養子として劣等感を抱いており、それを解消し成長すること。
・アンナが自分の出自について知ること。
・この映画は百合なのか。
・アンナは養子である事実を受け入れることが出来ず、精神障害を患っていた。心配性の養母を「メーメー鳴く羊」と言ってしまうほど他人に対して、心を閉ざしてしまっている。
映画の終盤では克服していて、何が彼女の重石を取り払ったのか考えてみるが、なかなか難しい。
具体的に、この場面が彼女を変えたというシーンが思い浮かばないからだ。マーニーの事に夢中になり過ぎて、幻視やどこでも失神する姿を見れば、かえって症状が悪化したんじゃないかと疑いたくもなる。
よく物事を熟考して煮詰まったとき、気分転換をして再度考えてみたら、すぐに片付いたという事例があるけど、今回のアンナの体験も似たようなものかもしれない。
長年劣等感に縛られて医者に療養を勧められ、そこで出会ったマーニーに夢中となることで気持ちが紛れて、つまんないことで悩んでたなぁ解決みたいな。
結果的に養子である劣等感→ストレス→喘息の発作という流れを断ち切っていて、療養が功を奏したと思う。
・最初のテーマが解決しても、「じゃあ自分はどういう血を辿って生まれた命なんだろう」と、いずれ疑問に思うだろうし、不安になる。
マーニーとは誰か?という謎解きをするだけなら、信子がアンナの目を見て「ちょっと青が入ってて、、外国・・」という発言で鋭い人は気づくだろう。
肝心なことは、視聴者では無く、アンナが気付くことだと思う。
頼子がマーニーの形見の写真を見せたことはトドメを刺したなと思った。視聴者に謎解きだけをさせるのなら、あそこまで露骨にせず多少のミステリー成分を残す演出をすると思う。
やはり自分の起源について知ることは、単なる静養地から故郷になるくらい大きなことだと思う。
・この映画は上映当初のCMでガチ百合という印象を受けていたので、見るのを避けていた。
さすがに、夜9時の金曜ロードショーでガチ百合は流さないだろうという考えで見ることにしたら、百合では無いなと確信した。
確かに抜粋して、大好きよ、みたいなシーンだけ見たらそう映るけれど、
結局マーニーが見ていたのは和彦であってアンナでは無かった。
アンナもマーニーとの関係が崩壊することを恐れて出任せで言っていたように見えた。
そもそもマーニー自体がアンナの創造物であり、アンナが幼少期に祖母マーニーから子守唄で聞かされた思い出がオリジナル。
夢の中のマーニーが上手にダンスを踊っていたのも、限られた場所にしか行けないのも、祖母から聞いている範囲に留まっているのだろう。
そういうことを踏まえると、アンナはマーニーの子守唄の内容を夢や想像の中で懐かしんでいるだけで、一つ一つの言葉の意味について、特に恋愛感情については吟味していなかったんじゃないかと思う。