退会済のユーザー さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
灰色の青春を描いた名作
本作は日常ミステリーを掲げてはいますが、その真のテーマは「灰色の青春」を描いた群像劇です。
輝かしい薔薇色の高校生活を送る級友がいる一方で、誰かに伝えたい思いがあるのにそれを伝えられない灰色の高校生活を送った者がいる。彼らのメッセージは、日常の謎だったり小さな事件という形で主人公たちの周辺で発生します。本作の焦点は彼ら救われなかった者の救済だと考えます。古典部の4人も含めて…ミステリーをメタ的に扱いながら、高校生活を送る奉太郎たちが抱く思慕、期待や羨望といった感情にどう向き合うべきかを問いかけるというテーマ性に感心しました。
古典部というチョイスや会話の演技がアカデミックでちょっと芝居染みている(特に里志)など、硬派な雰囲気の作り方が上手く、ミステリーによく合います。最高級の作画やクラシックの名曲を用いるのもそれらに一役買っています。
しかしながら原作のビターさがやや抑えられていたり、千反田えるという最強ヒロインの「萌え」に頼る側面も見せています。ここがアニメとして商業的に成功した点でもあり、本作が芸術性を獲得するのにあと一歩だけ惜しかった点でもあります。しかし間違いなく傑作です。