空知 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
田舎で育つ子供たちの純情さが実にかわいい。一方で、田舎に住むことの現実も考えさせられる作品
2015年夏作品の中ではもっと評価されてよい作品だと思います。
田舎を舞台に、そこで育つ子供たちの純粋さや彼女たちを真っ直ぐに育む自然の素晴らしさやそれを見守る大人の優しさ。都会ではほとんど見えない星が、そこでは手を伸ばせば届くほど近い。
小1のれんげ、東京から引っ越してきた小5の螢、中1の夏海、中2の小鞠が織りなす物語で、子供たちをすくすくと育てるものは何なのかということを考えさせられました。彼女たちが通う旭丘分校は、小中一体で、一つの教室に小学生から中学生まで5人の児童・生徒が通っています。兄弟姉妹の多い時代であれば、兄姉が弟妹の面倒を見ることによって、共に成長していったのでしょうが、一人っ子が多い現在では、中学生が小学生の気持ちを察して手を差しのばすといった美談はまずないでしょう。例えば、カブトガニを教室で飼ったものの、死んでしまったことで、れんげは悲しい悲しい思いをします。それを体験から理解している夏海が、産卵しているのではないかと機転を利かせる場面などは、涙ものでした。
この作品の魅力の一つは、ギャグも笑いも「間」が実に上手い。笑いを誘うギャグの間も素晴らしいが、れんげが泣きそうになるまでのながーい「間」も心を打つ絶妙な演出でした。
一方で、田舎育ちの僕には、複雑な思いもありました。多分、田舎に住んでおられる方には、「田舎がそんなに素晴らしいと思っているの?」という気持ちがあるんじゃないかと思います。
僕自身、人口が5万人ほどの田舎に生まれ育ちました。小学生の時には、学校が終わってからは友達と野山で遊んでばかりいたので、田舎の良さはよく分かっています。しかし、現実の田舎というのは、人の目は厄介でうるさいですし、生活も不便。人情というのは、裏を返せばおせっかいでもあり、その土地の約束事を破れば除け者にされるという残虐な面もあります。僕などは、高校生のときは都会に出ることばかりを考えていました。都会の人の無関心、人情を押しつけない優しさ。お隣さんとも会釈一つで実に楽なものでした。それほど田舎が嫌いだった若い自分がいました。
高齢化が進み、若者にとっては出会いもないし、雇用もない。遊ぶ場所もなければ、一緒に遊びたい友達自体が都会に出ていくという現実。
この作品は、「ふるさとは遠きにありて思うもの」という言葉を理解できる人達には評価が高いかもしれませんが、田舎に住んでいる中高生などにとっては複雑な思いがあるでしょうね。
今となっては、自然がいっぱいあり、友達と野山で遊べた自分の少年時代は、贅沢でかけがいのない時期だったと思えます。
「ここは世界一優しい おかえりが待っている場所
埃かぶった思い出が 何より宝物
いつも変わらない愛しさが 出迎えてくれる場所
ほら また季節が歌ってる」
EDの歌詞の一部です。じわーっと感動するとともに、そんな場所はもうない・・という悲しい気持ちにもなりました。
いずれにせよ、とても良い作品でした。1期を観ていなくても楽しめる内容です。
1期より、りぴーとのほうが僕は良かったと思います。