おぬごん さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
ノイタミナらしいサブカル風ミステリー
同名のミステリー作品が原作
昨年同じフジテレビでドラマをやっていたので名前は知っていましたが、原作・ドラマ共に未読・未視聴
キャラクターデザインは、サブカル漫画の代表格ともいえる浅野いにお
ノイタミナの視聴者層を考えるとピッタリですが、今までありそうで無かった組み合わせですね
OPのKANA-BOONも若者層、サブカルファン狙い打ちって感じです
ミステリーの内容としては、孤島という典型的なクローズドサークルの中で起こった密室殺人
そこにコンピューターやセキュリティシステム、ロボットといった理系の要素が絡むといった物です
ただこの作品、原作が1996年発表で、作中の時間も1994年となっているんですよね
このことを留意していないと、タバコへの規制が緩そうな描写や、コンピューターがまだ一般に浸透していない描写が引っかかるかもしれませんし、
作中のセキュリュティシステムもさほど先進的でない(逆に言えば現実的な)ものに感じられるかもしれません
作中一番の謎はタイトルにもなっている「すべてがFになる」という事件現場に残された言葉です
ただ私はこの言葉、少なくとも"F"の意味については、割とすぐに分かってしまいました
これは私があるゲーム作品でこの"F"に繋がるものに慣れ親しんでいたからですが、私と同様に"F"の意味にすぐに気付けた人は多かったのではないでしょうか
これも時代の変化によって、さほど難解なキーワードではなくなっているのかもしれません
また密室トリックの鍵になるセキュリティシステムについても、詳細が分かれば分かるほどに
「あれ、このシステム危険すぎね?」と思えてしまうんですよね
これも当時ならハッタリが効いていたのが、現代の視点から見ると…という感じでしょうか
各話の構成としては、ラスト数分で真賀田博士の過去を描いて締めるという演出が取られていました
この演出とEDのイントロのおかげで毎回ミステリアスな雰囲気で終わることができていましたが、
ただそのような工夫があっても、1つのミステリー作品を1クールかけて描くというのはやや冗長なように思えました
途中で間が空けば空くほど、視聴者の頭からは内容が抜け落ちてしまいますからね…
1つの事件の解決までに4~5話を要する金田一少年の事件簿と比べて、ほとんどの事件が1~2話で解決する名探偵コナンが長寿番組になっているのも、この点が大きな要因ではないかと思います
総じてミステリアスでサブカルな雰囲気は良かったかと思いますが、
1クールで1事件を描くという構成面の不利さを覆すまでには至らず、
また視聴の際には1996年当時の作品であるという点に留意が必要、という印象です
以下、西之園さんに関する長い考察
この作品は探偵役が犀川教授、助手役(所謂ワトソン役)が西之園萌絵にあたるわけですが、
このうち西之園さんがワトソン役として不適なように思えました
ミステリーの基本として、ワトソン役は読者(視聴者)の分身として読者に物語を伝えるために配置されています
また同時にワトソン役はミステリーを分かりやすく説明し、読者に気持ちよく作品を楽しんでもらうために配置されているので「読者より少し頭が悪い」くらいの能力であるべきとされています
探偵役のひらめきに対し「ちょっと待ってくれ、どうしてそうなるんだ?」と言って、説明のタイミングを作ってくれるのがワトソン役の仕事というわけですし、また読者が事前に謎に気付けていた場合は、ワトソン役への優越感を覚えることもできます
ところがこの西之園さんは、とても優秀な学生で天才的な数学の才能を持っていたりするため、時折視聴者の考えを超えるひらめきを披露してしまったり、かと思えば直感的で直情的な性分から稚拙な考えを披露したりしてしまいます
それでいて探偵の犀川教授は西之園さんに「自分で考えるんだ」と推理を促すのですが、良くも悪くも視聴者の想像を超える答えを出す恐れのある西之園さんは、視聴者の「考え」を仮託するには適さないのです
これは西之園さん自身の人となりに一つの物語があり、それ故に真賀田博士と対になるキーパーソンたりえている、という事情もあるのですが、
そのキーパーソンにワトソン役までもを背負わせるのは過重だったように思いました