プリングル さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
「当たり前の毎日が突然愛しく思うのは・・・」
(以前にもレビューを書きましたが、大味な文章となってしまい納得行かず書き直しました。レビューというより考察のようになってしまいました……)
毎日が愛しく思うのはどんな時ですか?
タイトルにも書かせていただいたこの一節は、
主題歌「プリンシプル」の歌詞です。
そしてそれは『たまこラブストーリー』という作品そのものでもありました。
本作品はTVシリーズ『たまこまーけっと』の続編として作られ、スタッフも同じく
監督-山田尚子
キャラデザ総作画監督-堀口悠紀子
脚本-吉田玲子
という『けいおん!』と同じ顔ぶれのメインスタッフにより制作されました。
舞台もTVシリーズから変わらずうさぎ山商店街です。新しく登場するキャラクターもおらず、
「TVシリーズと何もかも同じで、続編って何するの……」と思うことなかれ!
本作品で「北白川たまこの成長」と共に「日常系アニメというTVシリーズの殻」を破ってしまいました。
ストーリーはシンプルであるものの、京アニが魅せるアニメ的演出で彩られて、
真っ直ぐに見ている人の心に突き刺さる作品になっています。
しかし、『たまこラブストーリー』はただのラブストーリーではありません。
前述した「たまこの成長」という点が物語の本質的なテーマになっていると思います。
・「成長というテーマ」
{netabare}
たまこにとって成長とは?
物語ではたまこの進路はボンヤリ決まっていて、
それは「餅屋」というそれまでの彼女らしい答えではありました。
ただしそれはボンヤリとした将来像でもあり、
その点はハッキリと進路が決まっている同級生ととても対照的に描かれ、強調されています。
しかし河川敷でもち蔵が告白するシーンで、それは決して「漠然とした将来的なビジョンではない」ことが、たまこの口から語られます。
「母親のようになりたい」という、
憧れにも似た「成長したい」という彼女の意志がハッキリと垣間見えたのです。
「このまま餅屋を手伝って毎日を過ごせば、成長出来て、「母親」のようになれるのではないか」そう思ってたはずの彼女に大きな変化が訪れます。
それはもち蔵の告白です。
「もち蔵とはただの幼馴染み」
そんな彼女にとって当たり前の事実が崩れようとしていました。
{/netabare}
そして、前述した通り「たまこの成長」は「日常系」という殻を割らずして有り得ず、
私にとって感動も有り得えなかったと思います。
・「日常系からの脱却」
{netabare}
いつでもマイペースである主人公の北白川たまこは「何も変わらない日常」を体現しているキャラクターでありました。
言ってしまえば、たまこがたまこでいるから『たまこまーけっと』なのです。
ではもし彼女が変わろうとしていたら?
それが『たまこラブストーリー』のストーリーの核であると私は考えています。
告白はたまこが変わるきっかけになりました。
告白だけではありません。
自分の進路に向かい前進していく友達
たまこの周りにいる夫婦たち。
自分の先を行く人々に、あのマイペースなたまこが「焦ってしまう」のです。
悩むたまこですが、
解決するきっかけは「母親」の歌が入ったテープでした。
たまこの母も同じように高校生の時に告白されていました。
上にも書いた通り、たまこが描いた未来のビジョンは「母親」です
母と同じ状況にあることは、たまこにとって1歩踏み出すのに十分な理由となりました。
「母親と同じく告白に答えよう」と決意する様子で、「明日からお店戻れる!」と元気よく言い放つ彼女にもう迷いがありません。思い描く将来像への一歩を歩み始めたのです。
バトンをキャッチ出来るようになったのは、たまこがまさに成長した証でした。
そして彼女が壁を乗り越えたということは
『たまこまーけっと』が「日常系アニメ」という壁を飛び越えた瞬間でもあります。
大きな成長を描いてしまった「日常系アニメ」は、そこにドラマが生まれ、「日常系アニメ」ではいられません。
『たまこまーけっと』は『たまこラブストーリー』という別の作品に生まれ変わったのです。
つまりラブストーリーはたまこが成長するための「手段」に過ぎませんでした。
本作品は「恋愛物」の皮を被った、
「たまこの成長物語」そのものであったのです。
{/netabare}
TVシリーズの雰囲気そのままに、新しい作品に仕上げられている『たまこラブストーリー』。
ここには書いていない目を惹き付ける要素が他にもたくさんあります!
TVシリーズ抜きでも楽しめる作りになっているので、どんな方にもオススメできる作品です。
高校生の女の子にとっての「恋」とは何なのでしょうか。
それが『たまこラブストーリー』には詰まっているのです。
(長々とすみませんでした)