「リトルプリンス 星の王子さまと私(アニメ映画)」

総合得点
67.1
感想・評価
15
棚に入れた
41
ランキング
2616
★★★★☆ 4.0 (15)
物語
4.1
作画
4.2
声優
3.6
音楽
3.9
キャラ
4.0

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けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

【全ての物語の終わりには続きがあって、全ての物語の続きには終わりがある、そのことを暗に示した後世に残す価値のある偉大な傑作】

2015年はさんざん凄いアニメ映画が!凄いアニメ映画が!と、言い続けてますが今作は本当にトンデモナイダークホースでした;
いや、予告の時点でちょっとヤバイ感は醸し出してましたがw
正直公開規模がめちゃくちゃデカイ割りにはあまり話題になっていないというか・・・オイラの周りでは『デジモン』の方が流行ってしまっていたのでコイツの話題をしてくれる人がのほどいない悲しい状況;
端的に言って『デジモン』は今年一番ツマラなかったアニメ映画でしたね!(お
で、遅ればせながら観た『リトルプリンス』でしたが、ああやっぱ3Dでも観とくべきだったと今更ながらに後悔しています
3Dだと後半の迫力が違ってくるだろうになぁ・・・
オイラは2D字幕で観たので例の滝川クリステルとかが出てる日本語吹き替え版は未視聴
身の毛もよだつ日本語吹き替え版専用主題歌なるテーマソングも聞いてません
(別にユーミンが良いとか悪いとかじゃなく日本語吹き替え版主題歌っていう制作者の意図しない企画は簡便してくれマジで!って話ですよ)
ってことで本来満点を挙げたい「声優」と「音楽」の項目はあえて4.5点とさせていただいてます
いやだって劇伴ハンス・ジマーですよ?
ハンスのサントラにケチつけることなんて出来ないよ!(お


監督はドリームワークス時代に手描き2Dを3DCGの中に練りこむ演出を『カンフーパンダ』で魅せた生粋のジャパニメーションヲタのマーク・オズボーンです
制作の主体となっているのはフランスのONアニメーション
音楽は我らがネ申ことハンス・ジマー
劇中で印象的に使われているノイズミュージックライクな主題歌を手掛けたのはリチャード・ハーヴェイと歌手のカミーユ


原案になっているのはタイトル通りアンワーヌ・ド・サン=テグジュペリの『星の王子さま』
そのラストはご存知の通り幾重にも解釈を拡げられることが可能な、切なくも儚くも幸せともあってちょっと謎に満ちた最後です
なんとこの物語には続きがあったとしてしまっているのが今作なんですね!
第二次世界大戦下で消息不明になったサン=テグジュペリがどこかでこの話を聞いていたら彼はどう思ったでしょうか!?
もちろん今作のスタッフ達もかなり動揺していたようです
「名作をCGにして良いものか?名作に続きなんて作って良いものか?」とね
(まあ日本ではかなりオリジナル要素を足して1回アニメ化してますがw)


エリート校への入学に力を入れる、英才教育熱心な母親の元に生まれ育った9歳の女の子が主人公
(いやはや役名が「女の子」なのがいいねb原作の世界観を壊さないための配慮を感じますbそれに少女が主人公ってのは宮崎駿大好きなオズボーン監督らしい)
幾何学的な街並み、噂話しかしない交流無き住民達、みっちりと組まれた人生設計のスケジュール、遊ぶこともままならないが外の世界を知らない女の子にとっては志望校に入って素敵な大人になるため日々勉強に精を出すしかなかった
しかし夏休みの始まり、変わり者の隣人とふとしたきっかけで友達になる
彼女にとって初めての友達になったのは86歳の老いた男性
彼はかつて砂漠に飛行機で不時着したとき、不思議な男の子に出会ったという・・・


老飛行士が話す物語は、そのまんま原作の『星の王子さま』そのもの
原作を一切改変させず本編の中で紹介しているんですね(呑み助と点燈夫と地理学者は省略されてはいますが)
本編自体、つまり女の子が現実として見ている世界は3DCGで描かれていますが、女の子が想像する物語の中は人形を用いたストップモーションアニメとして描かれ、世界観を明白に分断しています
この割り切り方は上手い!の一言です
原作を知らない人も知っている人もすぅっと『星の王子さま』の世界観に入れます


飛行士はいつか庭に鎮座しているオンボロのレシプロ機を修理して、“王子に逢いに行く日”を待ちわびていた
しかし母親に飛行士と会うことを禁じられ、さらに『星の王子さま』という物語自体がとても悲しい結末を迎えると知った女の子は飛行士に対して冷たく言い放って別れてしまった
だが夏休みも終わる頃、飛行士は突然病床に倒れ女の子は自分の行いに酷く後悔する
その夜に女の子は飛行士の果たせなかった夢を、飛行機をまた飛ばすことを、たった一人で実践すべく真夜中に部屋を抜け出したのでした・・・


とまあ、ここまでで十分オイラの涙腺は緩みきってしまったのですがw
察しの良い方はおわかりでしょう、飛行士というのはサン=テグジュペリ本人がモデルです
彼の体験談として語られる『星の王子さま』は、彼がもし生きていたら・・・そういったifが込められた第1の可能性をここまでで含んでいるんです
そして本編のクライマックスではいよいよ女の子が『星の王子さま』のその後の世界という第2の可能性に飛び込んで行くわけですが・・・もうこの辺になるとCGなのか人形なのかほとんどわからなくなるw
と、いうのもこの作品ってCGならではのヌルヌル動く感じを極力減らしていて、リミテッドアニメ的なモーションを使ってるんですわ
人形が上手く出来すぎているのか、光源や色彩を使ってCGが人形に寄せているのか、いやはや両方なのか
このリミテッドアニメのCGという技術に関してはこの後オイラがレビュを書く『I LOVE スヌーピー』がさらに上を行ってしまっているので(笑)この辺りにしておきましょうw


で、原作は【児童文学と見せかけて子供心を忘れた大人へのメッセージ】という体裁に捉えられているのが一般的で、今作も表向きにはソレを描くのがメインなんですけど・・・
今作に限って言えば【全ての物語は可能性であるが故にその続きがある】ってことを暗示しているように感じました
当然【“その続き”にも終わりがある】ってところに辿り着くのが映画としての〆になるんです


これって凄いですよ!
物語論への投げかけですよ!?
これこそが今作が“ダークホースだった”と言わしめる理由なんです!
あ~、『星の王子さま』ファンに限らず、全ての物語ファンに一度は観て頂きたいアツい映画ですね、コレは!
自信を持ってオススメします!

投稿 : 2015/12/09
閲覧 : 595
サンキュー:

12

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