ようす さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
On Your Mark―ここには宮崎駿監督からのメッセージが隠れているのかも。
1995年、「耳をすませば」と同時上映されました。
「ジブリ実験劇場」という副題がついたこの作品。
最初は「どういうことだ??」と思いましたが、
なるほど、繰り返し観ているうちにその副題の意味がわかった気がします。
この作品、繰り返し観ないと意味がわからないでしょうね。
映画館では当然一度しか流れなかったでしょうから、
お客さんにはどよめきが起こったことでしょう(笑)
● ストーリー
舞台は近未来。
放射能によって地表が汚染されたため、
人類は地下で生活をしていた。
警官の男2人は、襲撃したオカルト教団のアジトで
天使の少女と出会う。
CHAGE and ASKAの曲「On Your Mark」の
プロモーションフィルムとして制作されたため、
作中の台詞は一切ありません。
音楽に合わせて映像が流れるだけです。
(効果音はあります。)
主人公の警官2人のモデルはCHAGE and ASKAの2人です。
およそ7分の作品。
ちゃんと映画1本分作れそうな設定や構成を持っているので、
ストーリーはものすごく駆け足です。
こちらの想像と理解が追いつかないほど目まぐるしいです(笑)
しかし、意味不明ではないですし、展開が急速な分、
ものすごく内容に惹きつけられます。
細かい描写がカットされていることもあり、
この作品が一体どういう話なのか、解釈は観る人によって変わるでしょう。
私も初めて見た時と、繰り返し観た今とでは
随分解釈が変わりました。
≪ 私の解釈 ≫
*ここからは作品の構成について触れます。
この作品の場合、
いろいろな解釈を知れば知るほど楽しめるところもあるので、
未視聴の方も興味があれば開いてください。
(ネタバレはしていませんので。)
まっさらな気持ちで視聴したい場合はとばしてください☆
{netabare}
初めて見た時には、
構成に疑問を感じました。
宮崎駿監督のことだから、
いろいろなことを考えて構成を作っているのだと思うけれど、
途中で未来の描写が挟まったり、
時間が過去に戻って別の展開が続いたり。
混乱しました。
これによる私の解釈は以下の通り。
◆世界にはいくつかの未来があるということを示唆しているのか。
◆天使やオカルト教団の不幸な境遇と、
天使や教団の人一人ひとりに待っていた(はずの)明るい未来を対比させ
ているのか。
◆目指す未来への道程は一つじゃないことを言いたいのか。
◆「実験劇場」だから、いろいろなパターンのラストや演出を
考えていて、それを音楽に合わせてつなぎ合わせたのか。
ネットでも少し検索をしてみたのですが、
やはり人によっていろいろな解釈がありました。
一つのストーリーのように見えて、実は三部構成であり、
精神の発達が異なる3つの人生を意味しているのだ、
という解釈もありました。
説得力があり、それもなるほどなーと思いました。
{/netabare}
この作品を長編化する、という話もあったそうです。
長編化されてしっかりとしたストーリーを観てみたい気もしますが、
私は7分のこの構成だから、
この作品の良さが味わえると思います。
観る人によって様々な解釈がなされている本作品。
自分なりの解釈を探すのが好きな人にとっては
うってつけの作品と言えるでしょう。
時間も短いから、
とことん見返すことができますしね。
そして自分なりの解釈を深めたり、
他の人の解釈から新たな発見を得たり、
そういう無限の楽しさと可能性をこの作品は持っています。
それにしても、自分の生き様を貫く!という
かっこいい役のモデルとなっておきながら、
現実では今や犯罪者。
2次元の理想と3次元の現実との壁は
なんと高くて冷たいものなのか…。
● まとめ
『On Your Mark』とは、
『位置について』という意味。
この作品は完結しているように思いますが、
実際はそうではないのかも。
主人公の警官2人にとっても、私達にとっても、
あなたの行動から未来は少しずつ作られているのだという、
宮崎駿監督からのメッセージなのかもしれませんね。