runa21 さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
努力し続ける王
原作者が銀河英雄伝説の人と一緒ということで
かなり期待していた作品です。
銀河英雄伝説では
たくさんの「英雄」たちが出てきて、
それぞれの得意分野を生かして活躍する
群雄割拠なお話だった。
それに対してアルスラーンは
はじめっからかなりどん底に突き落とされる。
アルスラーンは両親からも突き放され、
クーデターにより父は囚われの身、
忠臣の活躍によって何とか戦場から逃げ出したはいいが、
たった二人・・・。
そこから仲間を少しずつ集めて、
国を取り戻そうとするお話である。
はっきり言って、アルスラーンの部下たちはとても優秀。
でも、アルスラーン自体はぱっとしない。
なぜ彼のもとにこんなに優秀な人たちが集まってくるのか、
終始謎だった。
ただ、最終回に
ファランギースによって語られた内容に納得させられた。
「玉座にはそれ自身の意思はない。
座るものによって、それは正義の椅子にもなるし、悪逆の椅子にもなる
神ならぬ人間が政事(まつりごと)をおこなう以上、
完璧であることもないが、
それに近づこうとする努力をおこたれば、
誰もとめる者がないままに、王は悪への坂を転げ落ちるであろう。
王太子殿下はいつも努力しておられる。
そのことが、つかえる者の目には明らかなのだ。
かけがえのないお方と思うゆえに、みな喜んでつかえておる」
アルスラーンの父ももちろん王だった。
そして、さまざまなタイプの「王」や、
玉座を狙う者をこの物語を通してみることができるのだが、
だからこそ、このセリフにはグッとくるものがあった。
そして、
「だから彼らはアルスラーンを選んだのか」
としっくりきた。
最終話のファランギースのセリフまで
しっくりこないまま見続けていたのだけど、
なんとなく、この物語は、「これが言いたかったのかな」
とこのセリフにすべてが要約されていたような気がした。
アルスラーンは何も持っていない。
それだけでなく、彼自身も特筆すべき何かがあるわけでもない。
王太子という肩書もあやふやな感じになっている状況で、
凡庸なアルスラーンは「足りない」ことを自覚し、
日々努力をしている。
いろんなタイプの王様や、王位を狙う人と接しながら、
いいところを吸収し、悪い所は反面教師にし、
たくさんの失敗を重ねながらも
地味な一歩かもしれないが、前に進もうとしている話である。
物語の中の解説者より、
王太子アルスラーンがのちに王位に就くことがわかってしまう。
大いにネタバレしているのである。
そこからでもわかるように、
この物語のもっとも重要なところは、
アルスラーンと仲間たちの知略と派手なアクションで、
国を取り戻していくような話ではなく、
「王太子」という肩書以外何も持っていなかった
特に何の変哲もない少年が、
どうやって王になっていくのかを楽しむ物語である。
だから、英雄ものとか、カリスマ性を求めるような
そんなお話ではない。
そういうのを求めてこのアニメを見た人は
おそらくかなりがっかりしたことだろう。
ミステリーを求めていたのに、
内容がサスペンスだった並みのがっかり具合だろう。
(大まかなくくりとしては近いけど、肝心の部分が違う)
ただ、私はこの物語が好きだ。
正直初めは銀河英雄伝説的な
頭を使って戦っていくような話だと期待していた。
それでも、ラストのファランギースのセリフから、
この努力し続けるアルスラーンが作る国を
見てみたいと思わせる魅力が確かにあった。
今回では途中で物語は終わる。
この後どうやってアルスラーンが王位につくのか
とても気になって気になって仕方がない。