RFC さんの感想・評価

5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態：観終わった

破綻しなかった超展開

　私は声優「今井麻美」のファンでして
彼女が出演している作品はないかと探していたところ
これに行きつきました。

　タイムマシンと並行世界の話です。
主人公岡部は偶然に過去にメールを送ることができる装置を
発明してしまいます。このメールを使って仲間の願望を
かなえてしまいます。世界全体からするとほんの小さな
過去改変だったはずですが、その結果岡部はタイムマシン開発と
世界を裏から操作することを秘密裏に目論む組織に
目をつけられてしまいます。
さらに自らが行った過去改変により、主人公にとって
最も大切な人の一人が必ず死ぬ並行世界に来てしまします。

　最初はギャグパートを交えつつ中二病の主人公の日常が
語られますが、すでにいろんなフラグが立っています。
アニメなんだからと小さな違和感を感じつつ気にしないでいると、
それらが全部大事な要素だったりします。
2回目見ると「ああ、そういうことか」と納得できます。
1話目のタイトル「始まりと終わりのプロローグ」。
中二病なタイトルかと思いきや、ちゃんと意味がありました。

　私がこの作品で最もシビれたのはそれらのフラグを最後で一気に
回収しきったところです。途中から鬱ストーリーが続きますが、
最後の最後で超展開し、それによってすべてのピースがきっちりはまる。
鳥肌立ちまくりでした。ものすごくよく考えられて作られたストーリーに
脱帽です。
　ありがちな「なんか解らんけど奇跡が起きました」じゃありません。
細い細い一本の糸を手繰り寄せ、望む結果を得る！素晴らしい！

　あと、OPが印象的ですね。Voの声も含めてサイエンスフィクション
らしいです。「孤独の観測者」というフレーズにゾクッとしました。

好きなor衝撃的なシーン
（これから視聴する方は絶対見ないでください。完全なネタバレです）

{netabare}
①ダルの女性陣に対する卑猥な発言の依頼
　「まゆしぃ、あなたのバナナぶにゅぶにゅだねって言ってみて」
　「牧瀬氏、変態のバナナなんて食べるもんですかって、
　　もう一度お願いできる？出来たら悔しそうな顔で」
　中の人楽しくてしょうがなかったんじゃないでしょうか？
　関さん全開で、いちいち吹きました。

②ダル「僕たちに出来ないことを平然とやってのける！そこにシビれる…」
　牧瀬「憧れないけどね！」

　言わずと知れたJOJOの名言の一つを牧瀬が遮ったことで、
　牧瀬もそっち系に精通していることを匂わせたシーン。
　牧瀬の中の人もJOJO通であるため、因果を感じずには居られません。

③岡部「ダル、助手は何故泣いているのだ？」
　ダル「今本人が全部説明したわけだが」
　
　岡部とダルの「見た目だけ」で判断すると
　ダルの方がオタクで空気の読めない奴のように見えるのですが、
　全く逆ということが決定的になったシーン。
　クリスの可愛いところも視られて一石二鳥（なにがだ？）　

④雨の中　鈴羽を探しに行く岡部
　直前に「友達が欲しかっただけかも」と牧瀬に話したり、
　仲間を大事にする面が強く表に出ていましたね。

⑤牧瀬「あまねさんのお父さん、誘拐犯かも」
　ストーリーに新展開かと思わせといて、
　ずっこけました。まゆりはやっぱり清涼剤、なごみの人です。

⑥鈴羽の父親発見
　牧瀬が言った通り、ここでもまゆりが一番周りを見てました。
　一気にダルの株が急上昇。
　時を越えての親子対面。何気に父性に目覚めた感じのダル。
　ウルッと来たところで、ダルの空気読まない発言でこけました。
　娘にそんなこと聞くなよ！

⑦鈴羽の手紙
　⑥の直後の鬱展開。
　全員で協力してタイムマシンを修理できた後だけに
　胸にバックり穴が開いたような無力感でいっぱいになりました。
　それでもDメールで自殺から病死に変えることが出来たのは
　せめてもの救いだったかな。

⑧Dメールでの過去改変の修繕
　まゆりを助けるためには過去改変したことを元に戻すしかない。
　牧瀬の発案で進めたものの、過去改変は当人にとって願った未来。
　それを元に戻すということは、彼らの願いを壊すこと。
　
　時間が不可逆なものだから、人は不条理なこともつらいことも
　受け入れられる。それに逆らった結果がこれ。辛いものです。

⑨最後の二択
　Dメールで過去改変を修繕するたびに、岡部は心に傷を負っていきました。
　まゆりの死の回避に希望を持っては裏切られ、心は摩耗しきっていました。
　岡部の様子を心配するまゆりの健気さが余計に痛々しいです。
　そんな中で唯一岡部を支えたのは牧瀬の「独りじゃない」という言葉。
　否、牧瀬が岡部の支えになっていました。

　でもストーリーの中で岡部が気付くより先に、私は思い出しました。
　最初のDメールは何だったか？
　最初のDメールで何が改変されたのだったか？
　まゆりを救うために牧瀬を犠牲にしなければならない選択に
　迫られることに私は気付きました。
　
　なんて残酷なストーリーを考えるんだ！いや、そうでない可能性も！
　しかし私の予想通りにストーリーは進みました。
　やっぱりすべてを救うのは無理なんですね。夢物語なんですね。
　それを受け入れて、乗り越えて強く生きていくしかないんですね。

　死ぬと分かってて牧瀬はまゆりを助けろと言った。
　全てを助けられないなら、何かを切り捨ててでも最善の一手を取るしかない。
　牧瀬「ありがとう、私のためにそこまで苦しんでくれて」
　もうやめて下さい。牧瀬の覚悟は解りました。
　最後のKiss。もう悲しすぎて…
　岡部のオペレーションベルダンディーの叫びはもう血の叫びでした。
　全ての迷いを断ち切り、その責任を負うとの叫び。

⑩オペレーションスクルド
　⑨の血の涙が流せそうな終焉。美しく哀しいEDが流れる中、
　キーボードをたたく音が…。
　ん？
　そこにいないはずの人から電話が。
　終わったはずの物語が超展開、1話の時感じた違和感を一気に
　回収しにかかります。
　
　しかし世界は岡部にさらなる地獄を与えます。
　愛する牧瀬を殺したのは結果的に岡部自身。
　岡部はまたしても希望から絶望にたたき落とされます。
　「おれが何十回失敗したと思っている！？」
　彼にしか吐くことが許されない言葉です。
　
　そして打ちのめされた岡部を再び奮い立たせたのは自分自身。
　「世界をだませ」
　もう鳥肌全開！

{/netabare}


一つだけ物申すとすれば、絵とスキル的に岡部とダル、+10才でしょ？


余談ですが、同じ作品に今井麻美と関智一が出演しているのに驚きました。
過去の事件（笑）があっただけに、「強くなったな、今井」
と思いました。