「1982 おたくのビデオ(OVA)」

総合得点
66.9
感想・評価
22
棚に入れた
133
ランキング
2690
★★★★☆ 3.7 (22)
物語
3.8
作画
3.8
声優
3.7
音楽
3.6
キャラ
3.8

U-NEXTとは?(31日間無料トライアル)

ネタバレ

セメント さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

オタキングになってやる!

オタクの中のオタク、オタキングに!


「げんしけん」「こみっくパーティー」などオタクが主役のアニメは数ありますが、これほどオタクに対して誠実で、またオタクを極めている作品はないでしょう。
名前もその通り"おたくのビデオ"、まさしくオタクの生態ドキュメンタリーです。
企画にはあの"自称オタキング"で有名な(最近スキャンダルで別の意味で有名になりましたが)岡田斗司夫さんが入り、またガイナックスおよびその母体DAICON FILMの自叙伝としての性質もあり、オタク史がさらっと浚えるのが持ち味です。
しかもこの作品、オタクの本質を捉えた作品だと理解しているのですが、発表された年代がなんと1991年と「エヴァ」も放送してなければ況してや「CCさくら」も「ハルヒ」も「まどか」も放送されてない中でオタクのメインストリームを完全に分析・把握し描かれている点が恐ろしいのです。
20年以上前の作品ですが、アニメ文化が隆盛を極める今の時代であっても全く色褪せておらず、最早発想・着眼点などは新鮮さすら感じる、そんな偉大な作品なのです。

今の生温い時代を生きる生温いオタクにこそ見てもらいたい作品です。
1980年代に"連続幼女誘拐殺人事件"が起こります、そしてその犯人は"オタク"だったとマスコミで取り上げられました。
当時オタクという言葉も出来たばかりの時代で、この事件を境にオタクは日陰者、はみ出し者、下手をすると犯罪者というイメージが広く大衆に植え付けられたように思えます。
今でこそアニメ・マンガ・ゲームは日本の文化だの世界に誇るジャパニメーションなどと言われてはいますが、そんなことを公言すれば確実に迫害される時代があったのです。
オタクは恥ずかしいこと、でも辞めようと思っても辞められない、こんな風潮は今では信じられないですね。
なんともなしにアニメ・マンガ・ゲームを謳歌出来てなんともなしに友人たちとの会話の題材に出来る今の生温い時代で、アニメのサブカルチャー・カウンターカルチャー的側面に触れることは大事だと思います。
正直言ってアニメなんか恥ずかしい趣味だと今は思っています、辞めれるならそれに越したことはないです。
でも生来染み付いたものなので離れようとしても離れられない、そんなもんなんですよね。
これまで色々なオタクを見てきましたが、そういう自己言及的な意識が欠如してるのかなぁと。
オタクの血統を呼び起こさせる良い機会になるんじゃないかと私は思いますね。

アニメーションに関しては天下のガイナックスに第1部は「エヴァ」「ナディア」の本田雄さん、第2部は「ああっ女神さまっ」「サクラ大戦」の松原秀典さんを作画監督とした強力陣営で構成されています。
まぁそもそもアニメパートは普通なのですが、本編に登場する劇中劇が如何せん物凄いクオリティなのです。
これらはDAICON FILMの自主製作アニメで板野一郎さん、平野俊裕さん、垣野内成美さんなどが参加していて動きもピカイチです。
さらには、音楽には田中公平さんが入り、OP、EDの作曲も出がけています。
「戦え!おたキング」も「おたくの迷い道」も名曲中の名曲です。
声優も辻谷耕史さん、桜井敏治さん、井上喜久子さんなど、ナレーションの大塚明夫さんもイカします。

オタクが迫害されていた時代、オタクに人権がなかった時代。
人に言うのが憚られる趣味を持ち、後ろ指を指される時代に生きたオタク達の雄姿が"おたくの肖像"で描かれています。
そもそも本作、第1部50分第2部50分の100分ものなのですが、アニメを描く手間を省かせるがために"実写パート"が取り入れられています。
その実写パート、フェイクドキュメンタリーではあるのですが、リアルなオタクがモザイク付きで登場します。
そこに出てくるオタクたちのそれはそれはキモいこと(褒め言葉)
これでこそオタクだよなぁ・・・と思うような"ステレオタイプなオタク"がそこに写されています。
気になった部分を備忘録的にピックアップします。

同人誌オタクの肖像
無作為オタクのデータから、"オタクが大学時代所属していたサークル"はSF研究会、マンガ研究会、アニメ研究会、麻雀研究会の順に多いそうです。
SF研究会とはアニメ、マンガ、ロリコン、セーラー服、変態など多岐に渡っているとも言われていて、今でいうところの現視研、サブカルチャー研なんていうのがまさしくそれなのでしょうと思うところはあります。
オタクが麻雀研究会に所属してるのって意外だと思う反面、身内を思い返すと私を含め麻雀大好きオタクが沢山いるのでなるほどと思いましたね。

コスプレオタクの肖像
無作為オタクのデータから、"コスプレしたことはあるか"という問いに対して意外にも全体の15%程度と少ないことが指摘されています。
しかしながらコスプレをしたことがあると答えた人は繰り返し何度もコスプレをする人が多くリピーターになっているとも言われています。
これは「げんしけん」でも題材にされてましたね。
最近のコミケとか見てみると、コスプレってただ格好良い、可愛いと言われて持て囃されたいからやっているようにしか思えなくて、実は私嫌ってる節があって。
でもやってみると意外に、なんてのはあるかもしれないですね。

収集オタクの肖像
彼はありとあらゆるアニメやアニメCMのビデオを収集するオタクです。
収集するだけで見ないのが特徴として挙げられているのですが、意外にこういうオタク、居ます。
アニメなど映像系もそうなんですが、例えばアニソンCDとかもそうですよね。
私自身、漫画なんかは買って満足するタイプですし気持ちは分からなくもないです。

ミリタリオタクの肖像
ミリタリオタクは勢力としては小さいことを挙げ、無作為オタクデータで、"モデルガンに憧れますか"という問いに半分以上が憧れると答えていてます。
しかし、モデルガンに憧れると答えた人の中でアニメファンは少なかったというデータも提示されています。
実際ミリタリオタクってあまりアニメを見ていない、もしくは見ていても硬派アニメばかりで萌えアニメは嫌いという方が多いように思います。
"現実逃避のアニメファンと超現実主義のミリタリファンに接点はないのだろうか"と締められていますが、実際そうなのかもしれませんね。

AVオタクの肖像
既婚オタクのデータから、童貞・処女のまま結婚したオタクは多いと示されています。
これ驚くべき事実ですね、まず結婚出来たオタクというのが(ry
童貞は守るべき、処女じゃなきゃ嫌だ、こういう理解が90年代のオタクの中でもあったとは・・・
かくいう私も処女厨ですのでよろしくお願いします。

フィギュアオタクの肖像
彼はどちらかといえばクリエイティブなオタクとして登場していますね。
自分好みの彼女を創造できるというのは素晴らしいことだとは思います。
今のフィギュアオタクはどちらかといえば創作より観賞とかのが主流なのかもしれませんが。
ガレキかー、部活で昔作ったことがありますが、腕が要るんですよねぇ、可愛く仕上げようとすると。

外国人オタクの肖像
日本で生まれることが出来なくて不幸だと言う強烈な外国人キャラクターが出てきます。
彼を差し置いても、日本に来る外国人は総じてアニメ文化に触れたことがある人が多いそうです。
実際、私の知り合いの留学生も、そこまで詳しくなくとも一般人より知ってるんじゃないかと会話していて思うことは多々ありました。

エロゲオタクの肖像
かなりコミュ障として特徴づけられていて、会話が成り立ってませんでしたね。
しかもその時の無作為オタクのデータでは、"オタクはよく独り言を言う"のを裏付ける結果となっていて、非常に悪意あるものでしたねw
ただ、オタクは一人の時間を大切にするというのは言いえて妙な気もします。

セル画泥棒の肖像
これはどぎついオタクです、ぶっちゃけ犯罪者なんですが、まぁこういうオタクもいたことに違いはないのでしょう。
今はセルの時代じゃないですからアレですけど、デジタルの時代であっても原画が主体でして、実はまだこういうのってあるんじゃないかなと思います。
例えば、まんだらけ中野店なんかは明らかに関係者じゃなきゃ入手できない設定資料、台本、原画などがいくらでも出展されています。
それに対して、好きな作品であればオタクは買ってしまうんですよね・・・
"セルを盗品と分かってて買う奴が居る訳だし、それを宝物のように大切にしている奴が居る"、この台詞はある意味真理で、転売なんかもこれが当てはまると思います。

アニメオタクの肖像
接触に失敗していますが、ある種オタクも仙人的なところがあって、それがここに描かれているように思います。

このように驚くほど的確にオタクを捉えているように感じるのは私だけでしょうか。
というか、オタク界隈を取り巻く状況は今も昔も実は変わってないといった方がいいのかもしれませんね。
この方々、実はガイナックス関係者で本物のオタクなのです。
勿論、台詞に脚色はありますが基本的には真に迫っていて、佐藤裕紀さんなど今でもガイナにおられる方もいれば、村濱章司さんなどゴンゾの代表取締役になった方など、今はお偉方になったオタク達の若き姿が写されているのです。


高校時代に本作に触れて、私に強烈なインパクトを与えた作品の一つです。
私も大学に入ってオタサーを立ち上げたのですが、深層心理の中で本作が根付いていたのか、集めたメンバーはここで描かれてきたオタクばかりでした。
流石にコスプレオタクや外国人宣教師は居ないのですが。
私は再現がしたかったのでしょうか、このアニメに憧れて。
ともなれば就職活動なんか辞めて会社を設立してオタクランドを築き、ゆくゆくは宇宙に進出するしかないですかね(笑)

投稿 : 2015/11/25
閲覧 : 456
サンキュー:

9

1982 おたくのビデオのレビュー・感想/評価は、ユーザーの主観的なご意見・ご感想です。 あくまでも一つの参考としてご活用ください。 詳しくはこちら
1982 おたくのビデオのレビュー・感想/評価に関する疑問点、ご質問などがございましたら こちらのフォーム よりお問い合わせください。

セメントが他の作品に書いているレビューも読んでみよう

ページの先頭へ