「<harmony/>(アニメ映画)」

総合得点
65.2
感想・評価
272
棚に入れた
1418
ランキング
3443
★★★★☆ 3.7 (272)
物語
3.7
作画
3.8
声優
3.8
音楽
3.7
キャラ
3.6

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ネタバレ

zu さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

一人一殺

21世紀後半、〈大災禍(ザ・メイルストロム)〉と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。
医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する"ユートピア"。
そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した――

それから13年。死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰に、ただひとり死んだはすの少女の影を見る――
『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。日本SF大賞受賞作。(ハヤカワ文庫JA 商品詳細より)

フジテレビ「ノイタミナムービー」「Project Itoh」の一環として2015年11月13日に公開された。「ハーモニー」

この「Project Itoh」「虐殺器官 ,ハーモニー,屍者の帝国」の3作品とも「redjuice」さんのキャラクター原案だったし、この「ハーモニー」は近未来SFという、自分が好きな要素が多かったので、公開されて直ぐ観に行き、これは面白いなと原作を読んでからもう一度観てきました。個人的には「屍者の帝国」より「ハーモニー」の方が好みだった。

特に上田麗奈さんが演じていた「御冷 ミァハ」(みひえ ミァハ)のキャラデザ(ギルクラのいのりをちょっとキツめにした感じ)も好きなタイプで印象的だった。

自分の中では、上田麗奈さんって「てさぐれ!部活もの」園田 萌舞子(そのた もぶこ)のモブキャライメージが強かったんですが、この作品の中心人物のミァハ役では、「私と一緒に死ぬ気ある?キリエ トァンさん」などのセリフひとつでも、イントネーションとかの演技がとても印象的でかなり好印象だったし(原作を読んでいる時も完全に上田麗奈さんの声で脳内再生していた)とてもいいキャラだった!


そして、原作を読んで観てみるとかなり原作に忠実な作品の作りになってましたが、原作の方では登場人物の思想や言葉、感情を示す架空のマークアップ言語「etml」がかなり使われているのに対して、映画の方では、殆ど省略されているので、原作を知らないと??なると思います。(一回目の自分がそうでしたw)

それと、終盤にミァハに会いにいく時にトァンが言った「ここから先は、プライベートだから」のセリフも管理されたこの作品の世界では、プライベートとは、ほとんどセックス系の事を表しているというのもちょっとおもしろかった。

原作と映画の最後の結末は同じだったけど、トァンのミァハに対しての気持ち(意識)が復讐と愛の違いがあったが、原作のトァンとミャハの最後の描写は入れてもらいたかったなぁ!

完璧に管理され、病気や犯罪が無くなった(ただ。医療合意共同体を拒む人達との戦闘はあるんだけど)近未来SFの世界(この作品の場合は生府「ヴァイガメント」医療合意共同体)でしたが、これをシビュラシステムに置き換えると、物語の内容もサイコパスにかなり近いなぁというか本作をお手本にしたんだろうと思いました。

特にトァンの上司「オスカー・シュタウフェンベルク」(螺旋監察官を統括している首席監察官)がサイコパスの禾生(かせい)公安局局長の榊原良子さんがやっていたからなぁ…w

原作の最後のページに

「感謝を捧げます― 私の困難な時にあってささえてくれた両親、叔父母に。」

で終わっているので、著者の伊藤計劃さんは病気により自身の寿命があと少しだというのがわかっていて、病院の中で書き上げた「ハーモニー」という作品の中にこんな未来が来ればいいなと思ったのではないのかと感じたし、自分はこの作品に出会えたことがとても良かった。(出来れば「虐殺器官」の方から観たかったんですが仕方がよなぁ…)

あと、この作品には数は少ないですが、かなりグロい描写があるので耐性がない方は注意が必要だと思います…

タイトルの「一人一殺」とは、物語の中でのミァハの宣言によるキーワードになってます。

ちなみに入場者特典のしおりは2枚ともミャハでした。
「屍者の帝国」と同じく裏面のQRコードで声優さんが朗読してくれます


Project Ito展が秋葉のアニメーションセンターでやっていたのを知ったのが、終了日の夕方で見に行けなかったのは、とても残念だったな(泣)

イントロダクション
夭折の作家、伊藤計劃-
僕達は、彼が計劃した世界を生きる。
伊藤計劃(1974-2009)は2つのオリジナル長編小説『虐殺器官』『ハーモニー』を遺し、34歳の若さで病没した。冒頭30枚だけが遺された『屍者の帝国』は、盟友・円城塔によって書き継がれることになる。
自らの命が終わる予感の中で、伊藤計劃が見た風景、遺した物語とは。
彼は人間や世界に対する「絶望」と「希望」を物語に封じ込めた。
それは、今を生き続けるものに対して、強烈に「未来」を問いかけている。
彼は、「伊藤計劃」という自らの名前を決めたときから、自分自身の作家としての生涯を「計劃」していたのかもしれない。彼の死後、それは「物語」として我々を揺さぶる。
〈計劃―Project-〉は止まらない。(Project Ito展サイトより)

投稿 : 2015/11/29
閲覧 : 432
サンキュー:

46

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