ostrich さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
冷静に評価できない作品
タイトルの通り、冷静に評価できない作品というものがある。
劇中にあまりに自分の体験やトラウマに近いシーンがあると、それだけで作品そのものを大好きになってしまう(あるいは大嫌いになる)、ということがあり、本作はまさにそういう作品だった。
一応、評価の星はつけたが、それは私がこれから書くシーンを体験したことがない人が観れば、こういう感じなのかな、という評価であって、個人的には何の意味もない。
誰かを愛するときに、その理由を語ることが難しいのと同じだ。
その人の美点(顔がかわいいとか、スタイルが良いとか、頭がよいとか)が、そのまま愛情に変わるならば話は早いわけだが、実際にはそうではなく、その人のある一面を見てしまった、遭遇してしまったために、決定的にその人を捨て置くことができなくなってしまうこと。これが、愛情の本質だと私は思っている。
そして、その一面が自分にとってどのような意味を持っているのか、それは、つまり、愛情を抱く理由ということになるわけだが、それを説明するのは本当に難しい。
本作の話に戻ろう。
私にとって、本作の「ある一面」とは、言葉が発することができないヒロインと男主人公との{netabare}ケータイでの{/netabare}やりとりだ。
私は10年以上前に実際にああいうやりとりをしたことがあるのだ。立場は男主人公の側だった。
それは現在の私に良くも悪くも大きな影響を残している出来事で、そのためなのかどうかわからないが、思い返してみれば、そういう出来事があったことを誰かに話したこともなかった。それどころか、私自身、本作を観るまで忘れていた。
そして、まったく出会い頭に、私にとっての10数年前の出来事がスクリーンで再生されることになったわけだが、そうなると、もう、いけない。私はヒロインも男主人公も決定的に捨て置けなくなってしまった。
たとえば、ヒロインのわがままぶりに手厳しい評価のレビューもあって、冷静に考えればその通りなのだが、でも、違うのだ! おまえらはヒロインのことを何もわかっていない!
…と言いたくなってしまうほどだ。
とはいえ、細かい部分で注文を付けたいことは私にもある。
たとえば、{netabare}ミュージカルについて。あれはもう少し丁寧にお話を説明、あるいは、絵として見せる必要があったと思う。
それは歌詞についても言えて、違う歌詞とメロディーを同時に歌うというアイデアはとてもよいと思ったのだけど、歌詞がよく聞き取れないのはいただけない。たとえば、字幕を使ってもよかったのではないか、{/netabare}などと思う。
が、あの{netabare}ケータイでの{/netabare}やりとりを観てしまったことで、そんなことは些末な問題になってしまった。
私はあのヒロインが大好きになってしまったし、男主人公の心の動きとも完全にシンクロしてしまった(彼の最終決断もふくめて、だ)。
だから、もう、この作品についてはそれ以上のことは何も言えない。
ただ、この作品が好きだ、と私の心が叫びたがってるんだ。