はあつ さんの感想・評価
4.9
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
マリンブルーに彩られた繊細な恋模様
海底と地上に暮らす人々がいる架空世界を舞台に、美しく繊細に男女7人(+1人)のひたむきな恋心が描かれます。
前半から後半へドラマチックに転換するストーリー構成が見事です。
その大きく変化する物語の雰囲気を、情感たっぷりに描き分ける背景美術がさらに素晴らしいんです!
私、今年の夏もまた観てしまいました。
暑い夏にぜひ観て欲しいオススメの作品です。
(初放送は秋から冬なんですが、絶対夏向きだと思う!)
《ストーリーについて》
青春群像劇の人気脚本家、岡田麿里さんは、登場人物の心情の作り込みに定評のある方ですが、マイナス評として見かけるのが、多いトラウマ設定に鬱になり過ぎたり、ドラマの収束が粗っぽいと思えたりする点かと思います。
しかし今作では、ファンタジーな設定に登場人物達の感情を上手く絡ませ、青春物に欠かせない心の成長を爽やかに描いて最後まで清々しい。
(特に主人公の変化が気持ちいい!)
全26話をかけてキャラクター1人1人の葛藤や想いを丁寧に綴ってあり、主要キャラ全員に納得の見せ場を作り、終盤まで雑になることなくしっかりと恋心の帰結までを描き切ってます。
(切なさに胸を締め付けられるシーンが多く、持ち味の深い心情描写は流石です!)
《美しくエモーショナルな作画》
今作の美術監督の東地和生氏は、インタビュー記事で、
~普段は背景美術に対して想い入れせずフラットな気持ちで取り組んでいたが、「凪あす」では感情が入ってしまった~
的な事を述べられてました。
それは、見た事のないファンタジー世界を描く為、監督個人の独創性や内なる美的感覚をさらけ出して綴った「ラブレター」の様な情熱を込めた絵作りをされたという事。
(その反動からか、「凪あす」以降しばらく絵が描けなくなった、とも仰られてました。)
そんな監督の、想いを乗せて創造した世界は、多くの観客を魅了したと思います。
前半は海中をメインにおとぎ話の絵本を見るようなファンタジーな世界観を、青を基調とした色彩で創造性豊かに描き、爽快感と清涼感に満ち溢れています。
対して後半は切なさの募るキャラクターの情感を高める様に、白く包まれる景色が寂寥感たっぷりです。
海辺の街並みも、海中のファンタジーな景観に沿いながらもどこかノスタルジック。
観る者に和みと懐かしさを感じさせる装飾や人工物の丸みを帯びたデザイン、
登場人物に過ぎた時間の重みを与える様な経年劣化してかすれた塗装など、
感情を刺激するハイセンスな美術に溜め息が出るほど見とれました。
海の子らの瞳や制服のデザインも清潔感とピュアさを引き出しながら背景に映える見事なマッチング!
作中の自然現象「巴日」の場面は幻想的で美しく画面に吸い込まれるよう!
数え上げたら切りがない~ええ加減にやめときます♪
《音楽について》
Rayさんの透明感のある優しい歌声は海を舞台にした作品の始まりに相応しい。
前半のOP「lull~そして僕らは~」(因みにlullラルとは凪のこと)は、伸びやかな曲調でキャラの躍動感を引き立たせ、
後半の「ebb and flow」(潮の満ち干き)は、ピアノからフォルテへ強弱をつけたメロディーで、抑えきれずたかまる恋心を表現。
どちらも作品を盛り上げてました。(後半OPの途中のセリフが堪りません♪)
劇伴曲のオリジナル民謡も、後半の夕方の時報のアレンジが渋く、しんみり心に染みました。
《キャラクターについて》
(ここからはネタバレのオッサン感情入るのでご容赦を~)
{netabare}
モブキャラに至るまで男女とも目鼻立ちが一様に見えるキャラクターデザインはやや残念に感じますが、憂いを帯びた後半の女子キャラ達には萌えました♪
(ロリコンだ、萌え豚だと言われてもカワイイんだから仕方ない~^^;)
中でも私のお気に入り「ちさき」
突然、家族や友達と離れる事になり過ごした5年間。
その間の寂しさに耐えてきた辛さや、変わりゆく想いの葛藤を伝える描写が切な過ぎる~~
あと、篠原監督の個人的嗜好かな?と思える、中学時代の制服を着ようとする茶目っ気サービスや、紡に迫られる場面の色っぽさ(CV茅野さんの発するセリフは深夜アニメじゃなく昼ドラを彷彿♪)など、大人と子供の2面性が私のオッサン心をくすぐってくれました。
思春期に覚醒する可愛いさ「美海」
お子ちゃまから中学生になり、まなかに遠慮しながらの好き好きオーラ全開の仕草や表情が可愛すぎ~
CV小松さんの甘ったるいキュートな声も可愛さに拍車をかけてました♪
意外なインパクトを見せた「さゆ」
多くの方が名場面にあげてる、踏切の告白は、恋愛映画のクライマックスに使えるレベル。
演出とCV石原さんの演技が素晴らしく、鳥肌が立ちました!
メインヒロイン・・のはず・・「まなか」
エンディングのキービジュアルを務め、まさしく物語の鍵を担ったヒロインなんですが、個人的に入れ込めませんでした。
守ってあげたくなる妹キャラのような描写だけで、光が一途に惚れ込む強い魅力が描けてなかったと感じます。
観ていて気持ちのイイ主人公「光」
年頃相応の未熟さ故の苛立ちや戸惑いを見せますが、素直に誤りを認め、ポジティブに気持ちを切り替え成長する様が、潔くて小気味いい!
女の子達が惚れるのも納得して観れました。
主人公に劣らぬイイ男「紡」
前半で光も認めざるを得なくなる、抑えた優しさがイイ。
後半に見せる、秘めてきたちさきに対する恋情は、クールな熱さ!
(5年間ひとつ屋根の下で我慢できたのもある意味ファンタジー♪)
渋い男らしさは女性視聴者のファンが多そうですね。
なんとか救われた「要」
登場人物達が、ぎすぎすする度に潤滑油のように立ち回り貢献度は高いのに、ちさきへの一途な想いは実らず、影も薄い存在。
そんな彼を最後に救ったさゆと、幸せになるのを願います♪
オッサン的にキャラ萌えした1人なので特筆します「あかり」
前半のヒロインと言っても過言ではない切ない描写の数々。
父親との喫茶店での会話には泣かされました(T T)
後半の若妻っぷりは色めいて、母親としても愛嬌たっぷりで可愛い♪
(これも監督の嗜好が入った?)
《最後に》
自分にとっては、納得のいく恋愛ストーリー、絵画観賞を楽しめた作画、萌えて癒されたキャラクターと、多くの面で大満足でき、P.A.WORKSさん製作で一番好きな作品です。
また、こんな三拍子揃った作品を期待してます!{/netabare}