「ご注文はうさぎですか?? (第2期)(TVアニメ動画)」

総合得点
76.0
感想・評価
1137
棚に入れた
5868
ランキング
746
★★★★☆ 3.9 (1137)
物語
3.7
作画
4.0
声優
4.0
音楽
3.9
キャラ
4.1

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ネタバレ

kurosuke40 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

家族の話 年頃の女の子のいろいろ ココアの場合

原作未読。
キネマシトラスが制作に携わると聞いて。1期も含めての感想

ごちうさは「家族」の距離感を描いた作品ですね。
 一期は大筋ではチノがココアを家族として受け入れていく話でした。血が繋がっていればそれだけで家族というわけではないのです。共同体の構成員として互いに認め合えるかが家族として重要で、そこに血の繋がりは必ずしも必要ではありません。ココアは要所要所でしっかりと家族としての責務を果たし、チノの信頼を勝ち得てチノの中で家族として認められていきます。たとえ血の繋がった家族だろうと、この責務を放棄するとサラリーマン川柳「この俺に 暖かいのは 便座だけ」になってしまうわけで、家族だからこその、遠慮の要らない距離感とその距離感を維持するために必要な(現代の)責務を描いているように思います。
 ココアは最初から「私はあなたを家族とみなすから、あなたも私を家族として認めなさい」と言わんばかりの遠慮のなさで、もしシャロに同様のアプローチを仕掛けていれば絶縁は免れない類の距離の詰め方だったと思います。ただこの熱さは対応の仕方がわからずに引っ込むチノに対しては噛み合っていました。一方で対照的なのがシャロと千夜の関係でした。シャロはいかんせん処世術を身につけた結果、受け入れ貰えるどうかわからない恐怖や自立している矜持などの気持ちが先行して、一番当り障りのない対応で距離を取ることを選び、(素面では)遠慮の要らない距離に入り込めない子です。千夜はそんなシャロの心の機微に敏感で、今のシャロを認めつつ、もう少し内側へと背中を押してくれる大人な女性でした。身内の距離感の主要人物4人に対して、身内になりきれないシャロの位置づけが、ごちうさのなかなか憎らしい点だと思います。一期はチノがココアを受け入れていく過程やシャロの葛藤が個人的に魅力的でした。
 
 一期でチノはココアを認めて、次の二期は何をするのかなと思ってましたが、やはりごちうさは家族の話が強いですね。印象に残ったので、まだ放映中ですが、備忘録的に筆を取った次第です。

 一期でココアとチノの関係が構築されましたが、その裏ではココア姉とココアの関係の分解が行われていました。ココアの行動原理は姉への憧憬です。姉のような頼れる姉になりたい。そのためには「頼れる姉と甘え真似る妹」という関係でいてはいけない。その関係性に浸かっているといつまでも「頼れる姉」という存在にはなれないからです。関係性を薄めるため、ココアは物理的にも時間的にも姉から離れ、ラビットハウスに単身で乗り込んできたのでしょうね。そして、姉のいないところで「頼れる姉」になろうとがむしゃらに頑張ってきたわけです。最初は私も一年ぶりの再開にココアが緊張しすぎやないかと思っていましたが、ココアとココア姉との関係性や、ココアの行動原理、ココア姉の包容力大きさが分かってくると、そりゃあガチガチに震え上げるわけだと魅せられました。ココアは姉と「頼れる姉と甘え真似る妹」という関係性から離れ、姉から「それなりに頼れる存在になったんだな」と認められるのが目的なのです。ここには「頼れる姉と甘え真似る妹」という関係性と打破できるか、”あの頼れる姉”からちゃんと”頼れる存在”として認められるか、以前の関係を捨てた場合どう接したらいいのか、などなどの要件があり、ココアは無意識にそんな不安で一杯一杯だったのでしょうね。ココアにとって姉との再開は、今まで築き上げてきた家族である姉との関係性を一旦捨てて新たな関係性を作る、つまり、家族間の関係性の再構築という人生のターニングポイントです。
 しかしながら、(再開直後の)結果としては、ココアは新たな関係性を築くことはできませんでした。まぁココアが頼りないとしても姉の包容力が大きすぎて、しゃーない。姉は「頼れる姉と甘え真似る妹」という関係でココアに接し、当初はなぁなぁで「甘え真似る妹」でもいいかという行動がココアには目立ちました。しかし、シャロに炊きつけられ、チノの前で「頼れる姉」側でなければならないとココアは決断します。その後ココアの機微に気づくことなく、姉は以前の関係でココアに接しようとしますが、(少なくともチノの前では)以前の関係性を捨てたいココアとしては、以前の関係を拒否るに決まっています。結果、姉は以前の関係性が通じず悲しい思いをし、ココアは以前の関係性を(少なくとチノの前で)姉が捨ててくれず、かといってチノとの関係性と整合性の取れる、姉との新たな関係性を構築しきれない浮いた状態になるわけです。このような関係性を再構築しようとする心の動きが思春期の子供と親との間に見られる構造なんでしょうね。そして浮いた関係なので、ココアは姉と対峙できず、サプライズの企画もあくまで、マスコットのきぐるみキャラとして通そうとしたりしました。代わりに姉と対峙したのはチノで、チノを通して、姉はチノとココアの関係性を知り、ココアが以前の関係の内にいるココアではないと知れたのです。『ああそっか。もう私の真似じゃなくて本当のお姉ちゃんなんだ』。多少順番は前後しますが、列車の前でモカがココアを対等であることを示す行動を多く取ったのは、変化を感じていた姉も変化を受け入れた証ですね。新しいモカとココアの関係性の構築の完了です。姉としては寂しいでしょうけど、家族関係の1つの節目なんだと思います。
 本筋とは別に、モカの存在は、チノから見て”本当の姉妹”という点で、チノにいくつかの変化をもたらしていました。ところで、ココアはモカに憧憬を抱いていましたが、チノはココアに憧憬を抱いているようです。将来チノはココアとどのように関係を構築し直すのでしょうね。
 あと個人的にはシャロが恋人というカードを使わずに内側に入る過程が見れたら嬉しいですね。
 ご精読ありがとうございました。

蛇足
 途中、シャロがココア姉にココアのことを語ろうとしたときに、リゼが制止することがありました。サプライズを隠すためというのが本当のところでしょうが、サプライズがなくても千夜辺りが止めたのではないかなと思います。ココアとしては自分の実力で姉が自然と認めてくれる流れが本意でしょうし、また頭で知ってしまった結果逆に自然にできなくなったりするもので、それはそれで芳しくありません。また姉がやるとは思えませんが、もし姉がココアが認められたいことを知ってしまった結果認める”フリ”をすることになるかもしれません。フリがバレた場合、ココアとって屈辱的で、ココアとココア姉の関係にヒビが入りかねません。ここらへんの機微はやはり千夜が敏いので、リゼが制止したときは驚きましたが、なるほどサプライズだったのかーという個人的サプライズでした。
 実はこの場面結構面白くて、リゼが止めたのはサプライズをシャロが口に出すと思ったからでしょうが、ココアを炊きつけたシャロとしては上記のような理由で止められたと勘違いしてそうな気がします。

戯言
OPの歌詞に反して、全般的に日付がポイポイ進むので戸惑いました(小並感)

投稿 : 2015/11/29
閲覧 : 226
サンキュー:

5

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