NBT さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.0
作画 : 1.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
映像クオリティが低すぎる……
※原作と劇場版、両方のネタバレをかなり含むのでご注意を。
原作はかなり好きだったので期待して見に行ったが、全体を通して原作の魅力を引き出せていないように感じた。
■映像について
まず何と言っても映像のクオリティが酷い。
2D絵は問題なく綺麗なのだが、時折挟まれる3Dが酷い。
3Dのモデリングは、正直テレビ版のシ○ニアやア○ペジオ以下だと思う。
戦闘など動きのある部分に使用するのは分かるが、予算の節約のためか、動きの少ないシーンでも低クオリティの3Dを多用していて萎えた。綺麗な2D絵と交互に映るもんだから余計にそう感じたのかも。
まぁまだそこだけなら我慢できるのだが、オーグ会議(電脳会議みたいなもの)のクオリティが酷すぎる。冗談抜きでプレーステーション1レベル、良く言ってもPS2初期のポリゴン。
ラスト前の老人達の巨大な顔が出てくる演出も、PS1時代のゲームを彷彿とさせるようなもので、ここでかなり興を削がれた。正直劇場アニメの映像クオリティじゃない。
また、会話中心の物語なので仕方がない気もするのだが、会話中に同じカットを繰り返し映したり風景を延々と映しているのは、リソースの節約にしても酷いと思った。
会話中に映すものが無いのなら、せっかくの近未来SF世界だし、『気持ち悪いほど人を思いやる世界』なのだから、そういった場面を映せばいいのになぁと思った。
例えば原作に出てきたグニャグニャのジャングルジムとか。
■内容について
内容は割と原作通りなのだが、大事な部分が省略されすぎていると感じた。
時間の都合上ある程度省略するのは仕方が無いが、中途半端に原作に忠実に描写するもんだから、おそらく初見の人は??????ってなるだろう。
まずETML。
ラストにETMLの説明をしないのなら、なぜ中途半端に出したのか。
最初と最後に出てきた墓石のようなものは、恐らくトァンの記憶をETMLで体験する装置なのだろうが、ETMLの説明がないから全く訳がわからん。
他にも、キアン視点の映像でやたらカプレーゼを映している割にその伏線を回収していない等、無駄な描写が多すぎる。
あと脳の報酬系の話はかなり複雑なので、淡々とセリフで説明するのは厳しいんじゃないか。そこらへんは変に原作に忠実にせず、上手く改変すればいいのになぁと思った。
そして内容に関しての一番の問題点は、キャラの魅力を引き出せていないこと。
まずミァハだが、原作ではトァンの回想でミステリアスな魅力が引き出されていたのだが、劇場版ではただの中二病のイタイ奴にしか見えなかった。
ミァハの代名詞とも言える、『って知ってる……』をなぜ一度しか使わなかったのか理解できない。
ただ、原作ラストのタップダンスをうまく改変したのは良かった。原作ではタンタンひゅーひゅーって何度も出てきて急にチープに思えたので。
キアン関連も酷いものだった。
{netabare}
あの昼食会にて、トァンはキアンの本当の強さを知り、自分はなんて愚かだったんだ、逆にキアンはなんて大人だったんだ、ということに気づいた直後にキアンが死ぬという過程を経ているので、たったそれだけのシーンでキアンの魅力を引き出せていたのに。
映画版では、トァンのリアクションがまるで愚痴を聞くカウンセラーのような感じだったので、キアンとトァンの絆も描写できていなかったし、キアンの魅力も引き出せていなかった。
{/netabare}
原作では、ごめんねミァハ、というセリフを見ただけで目頭が熱くなったものだが、キアンの魅力が削がれたことと連動してこのセリフの魅力も半減したように感じる。
個人的には原作で一番好きなシーンだっただけにもの凄く残念。
ラストは原作から大きく改変されていて、結構不評なようだが、個人的には劇場版のラストはアリだと思った。
{netabare}
確か原作ではキアンと父親の復讐のためにミァハを殺したが、上述したように劇場版ではキアンの魅力もキアンとトァンの絆も表現できていなかったために、もし原作通りなら『はぁ? 今更復讐? 何言ってんだ?』となったと思う。
劇場版は全体を通して百合成分が多かったので、トァンの個人的な私情で殺すという展開のほうが個人的にはしっくりくると思った。
{/netabare}
けっこう内容に関してボロクソ書いたが、全体を見れば上手く原作を纏めたなぁという感想。しかし、いかんせん映像クオリティの低さが足を引っ張って内容に没頭できなかったので、総括としてはかなり残念な出来だった。
こんな出来なら、あと数ヶ月公開を遅らせてでももっとクオリティ上げて欲しかった。
原作が大好きだし、かなり期待していただけに本当に残念。