101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
あなたの存在を脅かすangelaの鎮魂歌
〝あなたは、そこにいますか…?"
{netabare}いきなり、あなたへの所在確認で開幕する本作。{/netabare}
何を寝ぼけた質問を…。俺様はここにいるだろう?
はいwあなたの存在は、まもなくいなくなりますw
戯言はさておき、アンダーグラウンドたる深夜アニメにおいては、
どこまでも堕とすことができる自由度ゆえ、
視聴者へのトラウマは付き物ですがw
そんな中でも私にとって、本作のトラウマは、
痛みを通り越して、もはや感動的なレベルに達しています。
大体、物語のテーマからして「存在」なわけです。
{netabare}存在についての認識の相違から、人類に危急存亡の一大事をもたらした、
テカり具合が眩しすぎる、ケイ素生命体・フェストゥムは、
上記の問いかけを繰り返すだけではありません。
そこに物体が存在するという、物理法則レベルから解体する
寒々しい攻撃で、虚無主義を執拗に体現。
あなたの存在を消滅の危機に陥しいれます。
そこへフェストゥムと戦う少年少女の
思春期ならではの青春の痛みが、スパイスされ、
いなくなりたい衝動を、焚き付けていきます。
こうして存在し続ける自信を支える足腰を、
ローキックでたっぷりと弱らせた後、叩き込まれる
仲間がいなくなるシーンはKO必至。
KOに至る一連の流れの中で、オーケストラによる荘厳なBGMも
あなたの魂を…いや存在を終始揺さぶり続けます。
そして、極め付きはangelaさんが歌うEDテーマ「Separation」
失恋歌を装いながら {netabare} 「眩しすぎる朝は 諦め誘うんだね」 {/netabare}
と歌い出し、普段から威力十分な鬱ソングぶりを発揮するこのバラード。
それが誰かがいなくなる回では、ピアノバージョンになりさらにパワーアップ。
{netabare}「あたし行かなくちゃ」{/netabare}と敢えて二番から歌い出す、優秀過ぎる鎮魂歌ぶりで、
あなたの傷口に塩を塗り込んで来ます。
散華のシーンの中で、特に印象に残っているのは、
{netabare}翔子と咲良がいなくなる回。
主要キャラで最初にいなくなった翔子は、
その名の由来の通り、空に翔(と)んでいなくなってしまう展開や、
BGMやピアノverのEDまで続く、一連の演出の流れが、凄惨なまでに美しく、
このアニメが本気で存在を問いかけて来ていると、
知らしめるのに十分すぎる破壊力を誇ります。
咲良の方は、連戦で削られた存在が、
幸せに満ちた日常のシーンで、
意識だけぷつりといなくなる攻め方が強烈。
…もういっそ、ひと思いに殺してくれよと(泣){/netabare}
〝あなたは、そこにいますか…?"
…段々、自信がなくなって来たぞww{/netabare}
存在を脅かす、容赦ない攻勢を耐え忍んだ後で尚、
{netabare}「例え苦しみに満ちた生でも 僕は存在を選ぶだろう」{/netabare}
と言い切ることができるかどうか…。
あなたの存在への執念が試される作品です。
※先日、本作の羽佐間翔子役も演じた、声優・松来未祐さんが天に召されました。
私にとって、{netabare} 翔子のあのシーンは、屈指のトラウマシーンとして印象的ですが、
今後は中の人の早逝も想いながら、空を見上げて涙することとなりそうです。{/netabare}
ご冥福をお祈り致します。