101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
依存した日常が外される脅威
奈須きのこ氏の原作小説は未読。
近頃、傾いたマンションが世間を騒がせている。
情けないニュースと思う同時に、少し傾いたくらいで住めなくなるものだろうか?
との疑問も頭をかすめる。
そんな不謹慎な愚問に冷や水を浴びせるのが、この劇場版『空の境界』第五作。
{netabare} 人間は想像以上に、日常の中で当たり前になっていることに依存し切っている。
それは現実を上辺だけ追認したに過ぎない標識の表記や、
それにまつわる経験に則った認識など、
曖昧なものに裏付けられた脆いものだ。
その常識にちょっかいを出されて、
右なのに左に誘導されていただとか、2階なのに実際は3階だったとか…。
ちょっと日常を外されるだけで、人間の精神は異常をきたす。
例えば、傾いたマンションに住むのは安全性の問題だけじゃない。
真っ直ぐなはずなのに高低差のある通路を歩くなど、
自己の精神をも傾ける自殺行為に等しいのだ。
本作は日常の脆弱性に着目した陰謀を軸にした、
高度な異能力バトルが展開するキワモノであるだけじゃない。
さらにそこから、日常と並ぶ人間のもう一つの脆い土台、
記憶にも着目し、人の存在意義をも問うた傑作。
繰り返される日常と共に、増殖するアイスカップなど、
前衛的な表現も刺激的でお気に入り♪{/netabare}
設定、表現ともに三半規管を狂わせるグロい作品でもあるので、
くれぐれも自分の土台を踏み固めた上で鑑賞に挑みましょう。
ところで、あなたの日常…本当に大丈夫ですか?