ぽ~か~ふぇいす さんの感想・評価
3.7
物語 : 2.5
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
江戸川乱歩・没後50年作品・・・?
江戸川乱歩・没後50年作品
・・・なんだそうです
私が江戸川乱歩に触れたのは大分昔
小学生の頃にポプラ社版を読み
高校生の頃に大人向けのやつを2~3冊手に取ったものの
肌に合わずにそれ以上読んでいません
乱歩の作品はデビュー当時は本格推理小説だったものの
読者のウケがあまり良くなかったこともあり
本格ミステリから変格ミステリへ
いわゆる「エロ・グロ・ナンセンス」でヒットを飛ばしました
私が高校生の頃に読んだものはこのあたりで
今回のアニメ化の元ネタ(?)となっているのもこの辺
その後子供向けの作品を中心に執筆するようになり
全国どこの図書館にもあるアレが生まれたわけですね
アニメは本格や児童文学ではなく
変格ミステリが原作というか
そこから着想を得た話を中心に進めています
序盤の1~5話はかなり面白かったです
どこか壊れたコバヤシ少年と
陰鬱で救いようのない話など
コバヤシ少年が主人公と聞いた時点で
ポプラ社的な少年探偵団なアニメを予想していたので
かなり面喰ったと同時に興味がわきました
そしてそこまでで作ってきたものをすべて台無しにして
夏アニメNO1候補から
視聴継続ぎりぎりラインまで突き落としたのが6~8話です
6話のコミカルなノリはそこまでの暗い話に対する
一種の箸休めとしてはそこまで悪くなかったので
直後の7~8話が面白ければそれで許されたでしょう
でもパノラマ島があまりにツマラナイので
視聴者としては3週間続けて見たいものが見れていない
という状況になってしまいました
そうなるとやっぱり6話も含めて失敗だったと言わざるを得ません
ラストの3話に関しては
一応伝えたいことはなんとなくわかった分だけ
7~8話よりいくらかましに見えないこともありません
数学屋さんとしては
ラプラスの悪魔やカオス理論が出てきた時点で
トンデモ科学の世界に入ってしまってびっくりですが
この手のネタに関しては厳密な議論を期待できるとは最初から思ってないですから
そういう路線ならそれはそれで実世界の科学とは切り離して観るだけです
だからバタフライエフェクトの象徴となっている蝶が幻想的で綺麗だったなぁ
とかまぁそんな程度の印象ですね
それよりも気になったのは
虐げられる弱者にとって
死ぬことだけが最後の抵抗手段である
という図式を最後まで崩せなかった点
結局のところそれは大きく間違っていないのかもしれませんが
実際にそういう行動に出ちゃう人って
こういうのを見ると覿面に影響されちゃうんですよね
自殺というものを意義のある行動として描くと
たとえそれを見た人がすぐに自殺するわけでは無かったにしても
このアニメによってわずかに自殺のハードルが下がったことで
いつかだれかが踏みとどまれたはずのタイミングで
踏みとどまれないケースがあるかもしれない
そうして増えた自殺者とアニメの因果関係なんて誰にも証明できないけど
証明できないだけで因果関係が無いわけではありませんよね
OVAや劇場アニメならともかく
公共電波に乗せて放送するべき内容じゃないと思います
タバコや乳首を規制してる暇があったら
こういうものにNGを出すべきなんじゃないでしょうか?
あと、検死官ミナミによる3分間ショッキングのノリは
同じ岸&上江洲コンビでやっていたダンガンロンパを思い出します
ただし、ダンガンロンパの同様のシーンはは死体の状況描写であると同時に
モノクマの人物紹介シーンでもあり
モノクマの猟奇性や残虐性を伝える意味がありました
しかし、乱歩奇譚では終盤を加味しても
その描写を選択する意味が薄く
ただただ不謹慎でうすら寒いだけの演出でした
ダメなところばかりではなくいいところも上げておきましょう
声優は全体的にいい仕事をしていたと思いますが
特筆すべきはやはりコバヤシ役の高橋李依でしょう
春まで無名だった彼女ですが
今期だけでがっこうぐらし、それが声優!、乱歩奇譚と
主役準主役級がずらりと並んでおります
しかしなぜでしょう?
他2作では女性役でコバヤシだけは少年役なのに
なぜかコバヤシが一番色気があるという・・・
コバヤシやみーくん役のせいで
中性的なキャラが似合うみたいな話も聞きますが
ここさけでの演技(夜の学校でキスしてた子)をみる感じだと
単純にそういう要求があったから応えただけで
これが彼女の本領というわけでは無い気がしますね
まだ現時点では底が見えないという感じ
今後要注目なのは間違いないでしょう
OPはamazarashiのスピードと摩擦
EDはさユりでミカヅキ
どちらも映像含めて非常に雰囲気のあるOP・EDに仕上がっており
本編よりよっぽど江戸川乱歩作品っぽい感じでした
音楽は横山克
君嘘で注目し始めて
ロリガ・やまじょ・乱歩・ここさけときて
個人的には今一番注目している劇伴作家です
結局のところシナリオ以外はどれも高い水準にあるのに
肝心のシナリオがあまりに残念すぎた感じですね
そもそも乱歩がもっとも大衆に受けたのがエログロ路線だったのは確かですが
本人は自分の作品の低俗さに嫌気がさして何度か断筆しています
だから本当に乱歩リスペクトありきのアニメ化であれば
デビュー当初の本格ミステリ路線か戦後の少年向け路線であるべきであって
少年に自殺を唆すような作品にはならなかったんじゃないでしょうか?