takarock さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
「下セカ」か!?「監獄」か!?
奇しくも下ネタを題材にしたアニメが同時期に放送されたのですが、
せっかくなので、この2作(「下ネタという概念が存在しない退屈な世界」と「監獄学園」)を
比較してみたいと思います。
べ、別にそれぞれの作品ごとにレビューを書くのが面倒とかそういうことではないんだからねッ!
前者はラノベ原作。漫画化もされていて、漫画の作者は柚木 N'先生です。
主に成年向けの雑誌で活躍されている方で、
私もよく実用させてもらっています!(右手的な意味で)
後者は漫画原作で、作者は「アゴなしゲンとオレ物語」の平本アキラ先生です。
まず、両作品の共通点ですが、当然の事ながら下ネタということです。
「生徒会役員共」のように下劣さを感じさせない下ネタというのも存在しますが、
この両作品は、はっきり言って下品です。
「下セカ」に関しては言うに及ばずですが、
「監獄」も女子に聖水ぶっかけるというとても紳士向きの作風です。
ここの認識がひょっとしたらズレているかもしれませんから
もう一度はっきり言いますよ。 両作品共スゲー下品です!!!(断言)
エロスを感じるかどうかは人それぞれでしょうが、
個人的に言えば、「下セカ」はくだらない(誉め言葉)。
「監獄」はくだらない(誉め言葉)。そしてエロい!ですかね。
滴る体液はまるで迸る愛液のようにあらぬ妄想をかきたてますw
くだらなさを追求し、ぶっ飛んでいるのが両作品の良さであり、共通点でしょう。
では、今度は両作品の相違点について比較してみたいと思います。
この両作品はお笑いのメソッドが大きく異なっています。
まず「下セカ」ですが、主に下ネタギャグを担当するのは女キャラなのですが、
それを主人公の奥間狸吉(おくまたぬきち)が
「結局下ネタじゃねーか!!」といった具合にツッコむのが基本形です。
多数のボケに1人のツッコミが1つ1つ打ち返していくような
ドタバタコメディではよく見かける比較的分かりやすいお笑いのメソッドです。
ただ、この作品のギャグの肝となるところはツッコミではなく、
EDの歌詞で「抑制(ヨクセイ)の中には性欲(セイヨク)が潜んでる
規制(キセイ)の中には性器(セイキ)が隠れてる」
とありますが、このような下ネタ(ボケ)の巧みさにあると思います。
一方で「監獄」ですが、
主人公のキヨシの声優を担当されているのが神谷浩史さんということもあり、
一見キヨシがツッコミ役のようですが、キヨシはボケに乗っかってくるのです。
作中にこんな台詞はありませんが、
「おっぱいがいっぱいだと・・おっぱいがいっぱいって何だ・・僕は一体どうすればいいんだ?」
とこんなような台詞(ボケ)を言い、
それを視聴者側が「おいおい、こいつ何言ってんだw」とツッコむケースが多々あります。
所謂ツッコミ役が不在で、その役を視聴者側が担うタイプのお笑いと言えるでしょう。
これは、シリアスなシーンにも関わらず、読者ないし視聴者がそれを論って笑うという
シリアスギャグ(シリアスな笑い)と共通する部分でもあるわけですが、
シリアスギャグというのは、制作側(作者)が笑わせようと意図していないものに対して、
「監獄」は言うまでもなく意図された(シリアス)ギャグです。
閉店間際のスーパーの半額弁当を賭けて狼と呼ばれる者たちが死闘を繰り広げるという
「ベン・トー」という作品がありましたが、
この作品もツッコミ役が不在で、視聴者がその役を担う意図されたシリアスギャグでした。
作中の誰もがくだらないことを真剣に行うという点でも、
「監獄」と「ベン・トー」はお笑いメソッドの類似性を有していると思います。
さて、「下セカ」の評価はいまひとつというのに対して
「監獄」の評価は非常に高いように見受けられます。
この両作品の評価を分けた最大のポイントは何かということですが、
どれだけ視聴者を飽きさせないようにするのかという部分で
「監獄」の方が大きく優っていました。
「健全ロボダイミダラー」という作品のレビューでも触れましたが、
突き抜けたくだらなさでゲラゲラと笑っていられるのは私的に5話が限度です。
そこからは新鮮味も薄れていき次第に飽きてしまいます。
「下セカ」はその点において、予定調和の域を脱却できず、
ややマンネリ化していたように思えます。
これだけ突き抜けたくだらなさを追及した設定なのだから、
ストーリーももっとダイナミックに展開した方がよかったです。
もっともそれは、原作では今後そのような展開にということかもしれませんけど。
一方で「監獄」は、そもそも平本アキラ先生の原作が素晴らしいというのもありますが、
構図だったりカメラワーク、音響効果やその他諸々の演出により
臨場感、緊張感を伴う極めてシリアスな映像(シーン)が作り出されていました。
それは、ギャグをより一層際立たせるギャップ作りに繋がると同時に、
ハラハラドキドキ手に汗握ってしまうような展開作りにも一役買っているわけです。
原作を十二分に料理した水島努監督の手腕と言えるところでしょう。
ここが視聴者を飽きさせない工夫であり、おもしろさに直結しているのだと思います。
突き抜けたくだらなさというのは意外と早く飽きられてしまうものです。
そうした中でどのような視聴者を飽きさせない工夫が施されているのかが
重要になってくるのですが、
両作品の評価の差はまさにそれを物語っているのかもしれません。