どらむろ さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
「あの花」スタッフによる青春群像劇。「言葉」と「人のつながり」をネガティブ→ポジティブな感動に変えていく名作
「あの花」こと「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない」のメインスタッフが集結して制作された、約2時間の青春群像劇のアニメ映画です。
幼い日につらいトラウマで言葉を失くした少女が、やはり傷を持つ少年少女たちとの青春劇の中で、封印されていた想いを言葉にしていく。
…「あの花」程あざとく泣ける!タイプでは無いのですが、青春群像劇として非常に素晴らしいです。
綺麗な作画(メインヒロイン・成瀬順ちゃんが美少女)と水瀬いのりさんの好演にも注目。
ああ^~こころが叫びたがってるんじゃ^~
感動面だけでなく(順ちゃんかわええ~♪)と萌え面に期待できるのもポイント高い!
(終盤以外は)微笑ましい青春ラブコメとしてもかなり良いです♪
{netabare}『物語』
メインヒロイン・成瀬順は幼少期の酷いトラウマにより失語症となってしまった。
…いや…ほんと酷いなこれ!?両親最低だなお前ら…
爽やかな青春群像劇という触れ込みだったので、初っ端からの重~い設定にちょっと引きました。
いやぁ~、流石はマリーこと岡田麿里脚本は伊達じゃないな!
…順ちゃんのトラウマ、自らの「言葉」が引き起こした悲しい結果。
その心の痛みと「言葉」へのネガティブな怖れやイメージを「タマゴ」や「王子様」などの寓意で表現する演出で、まずは本作の順ちゃんが置かれている心境がヒシヒシと伝わりました。
これらの表現で、言語的には不自由で分かり辛いヒロインの心情の変化が、繊細かつ分かり易いのが上手い。
えー、普通ならドン引きしてしまうドロドロ設定と展開…
にもかかわらず、本作はここからが素晴らしい。
担任教師の差し金がきっかけとはいえ「地域ふれあい交流会」実行委員に。
主人公・坂上拓実の他、やはり心に傷を持つ少年少女たちが、紆余曲折で交流していく…。
…意外と王道な学園青春物路線です。王道だけに青春物として安定感ありました。
順以外の葛藤やドラマも青春物として強烈なリアリティーと十分な密度があり、これらが絡み合い、最終的に一つのミュージカル成功に収束していく流れは終始目が離せなかったです。
「一度言った言葉は取り返せない」
順ちゃんが振り絞ったこの言葉は強烈な説得力で心に刺さりました。
「言葉」と「人同士のつながり」の怖い部分、ネガティブな部分がヒシヒシと伝わります。
確かに言葉は怖い。人を傷つけるのも、人から傷つけられるのも怖い。
でも…
それでも、伝えたい。
それでも、叫びたい!
言葉を失くしても、心が叫びたがってるんだ!
一見無難に生きている拓実だが、実は相手を傷つけるのを怖れて言葉も想いも押さえている。
そんな拓実と、順の言葉にならない激情との対比で、「本当の想いの強さ」をドラマチックに見せてくれます。
廃墟でついに心が叫び出した順の言葉を、拓実が誤魔化しの無い気持ちと言葉で静かに返していくシーンが、本作の見せ場でした。
たとえ自分も相手も傷つけても、それでも伝えたい、伝わる想いが確かにある。
「言葉のネガティブな側面」…からの「言葉が仄かなラブコメ、と青春劇」で劇的かつポジティブに少年少女たちの関係性が変わっていく過程は、実に素晴らしかった。
クライマックスに至る演劇の紆余曲折は(ややベタな王道展開ながらも)終始ハラハラ、ここから順の歌が、今までの鬱屈を打ち払っていくカタルシスは見事でした。
※「アクエリオンロゴス」のテーマも「言葉(こちらは「文字」)のネガティブさと希望?」と思われますが…
15話時点では…この分野では「ここさけ」が圧倒的です。
いやまだこれから期待ですけど。
…本当に、予想以上に素晴らしい作品でした。
視聴中、数回の涙腺崩壊ポイントがありました(年々涙脆くなっとる…)
「あの花」と違い人死にでは無いのに、何故か涙が止まんない…。
「言葉」というテーマで思春期の少年少女の感情の機微と爆発を、王道青春群像劇の中で分かり易く描いた名作です。
…ラストの恋愛関係の結末が、やや強引だった感も。
いや、筋が通っているのは分かるんですが…順ちゃんの闇を救ったヒーローは拓実じゃないですかー、ここは素直にメイン同士ラブコメして欲しかった。
廃墟は名場面ですけど。
そこだけは若干残念ではありますが、主要キャラの感情の機微は十分丁寧で納得できるので、許容範囲です。
『作画』
非常に素晴らしいです。秩父舞台の学園生活の背景も繊細かつ美しく、申し分無し。
特に素晴らしいのはメインヒロイン・成瀬順ちゃんの可愛さ。
コミュ障系、小動物系だが心が叫びたがっている激情の表情の変化が、いちいち可愛い!
特に、作中非常に貴重な満身の笑顔見せたシーンは(かっ、かわえぇぇ!)と萌えましたよ!
…アニメはヒロイン可愛いに越したことはない。
テーマ云々も大事ですが、順ちゃんの絵的な可愛さは本作の醍醐味でしょう。
『声優』
メインヒロイン・成瀬順を演じた水瀬いのりさんが最高のベストキャストでした。
言葉が中々喋れない、でも実は感情は超豊かで爆発寸前…というかなり難しい役どころを、ほぼ完璧に好演されました。
本作の成功はこのキャスティングの成功が大きい。
水瀬さんをもって5点満点だと思った程。
主人公・坂上拓実役の内山昂輝さんも地味だが非常に良かったです。
やさぐれ野球少年な細谷佳正さんもはまり役。雨宮天さんも複雑な感情の機微がしっかり伝わりました。
藤原啓治さんの一癖ある名教師っぷりも流石。
…心の卵役が拓実と同じ内山昂輝さんなのは、多分ですが…
順にとっての「真実の言葉と想いを押さえている」点で共通する存在だからかな?
いや、単にこじつけかもですが、この配役は結構良かったように感じました。
『音楽』
音楽面でもベートーベン等のクラシックを効果的に使っていたり、終盤山場のミュージカルなど、非常に見せ場あり。
順(水瀬いのりさん)の歌も素晴らしかった。
※「シンフォギアGX」のラスポス・キャロルちゃんとしてかなりの歌唱力ありましたが、流石です。
…ただ、ミュージカル部分がやや聴き取り辛い面あり、映画のパンフレットで補完しなければならない点で、若干の減点。
『キャラ』
メインヒロイン・成瀬順ちゃんが超可愛かった!
ああ^~心が叫びたがってるんじゃ^~
「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い」のもこっち7割+「中二病でも恋がしたい」の六花ちゃん3割…を超可愛くした感じの超絶美少女ですな!
小動物的な萌えを感じました。
非常に感情豊かで言葉にならない叫びやクルクル変わる表情などとにかく可愛い。
本作は小難しいテーマとか度外視してもとりあえず「順ちゃん萌え~」♪
…うーむ、まさか真面目っぽい青春映画でごちうさのチノちゃんに匹敵する萌えヒロインに出逢えるとは!
主人公・坂上拓実は問題児だらけなメインキャラの中で一番の優等生ポジ…
と見せて、やはり言葉に臆病な少年であった。
それでも、かなり扱いが難しい順ちゃんをしっかりとエスコートしていったナイスガイ。
廃墟で順ちゃんの叫びを真摯に返していくシーンはイケメンでした。
やさぐれ野球少年・田崎大樹は序盤の敵役…からの、本作第二の主人公でした。
根が真っ直ぐなナイスガイ、彼の素直さ真摯さは王道青春劇に爽やかな風を吹き込んでました。
…正直メイン二人だけでは鬱すぎるので、何気に彼の存在感は大きい。
仁藤菜月はヒロインとしては割食ってますが、普通に良い子ですな。
ヒロインとしては順ちゃんが強過ぎた。でも菜月ちゃんも可愛いですよ。
先生は本作の問題児たちを結果的に良い方向に導いた功労者。
学園青春物の王道的立ち位置ですが、だからこそ良き舞台装置でした。
順ちゃん母は琴浦さん母並みの酷い母親だなぁ…
と思いきや、終盤の展開は(ベタとはいえ)後味良いです。
拓実の祖母も人格者、大人に魅力あるのは良作の条件。
DTM研究会もキャラ立っていて面白し。
王道な青春劇を盛り上げるのに一役買っていて好感持てる奴らです。
この他クラスメートも、根は良い子たちなのが良い感じ。
悪いキャラ居ないですね……だが順ちゃん父、テメーはダメだ。
卵王子よ、君ももういらないよ…。
全般に青春劇として申し分のないキャラクター達でした。{/netabare}