STONE さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
話のための死、死のための話
原作は未読。
視聴したのはテレビ放送版。
前半はファンタジー版必殺シリーズといった印象。
世界自体が異世界感のあるいわゆるハイファンタジーだが、小説、ラノベ、ゲーム原作によく
見られる中世や近世のヨーロッパをベースにしたようなものではなく、少年漫画などによく
見られる、良くも悪くも世界観や時代設定がフワッとした感じのハイファンタジー。
まあ、この手の作品の世界は、キャラクターが活躍するための舞台設定という位置付けの
印象で、作り込まれた世界観や時代設定を売りにしているわけではないだろうから、これは
これでいい。
とにかく人が死ぬ作品といった感じで、初回から主人公のタツミの友人であるイエヤス、
サヨが残虐に殺されるが、可愛い女子キャラと言えども容赦なしといったところ。
更に早い段階でナイトレイドのシェーレが死亡するなど、レギュラーキャラでも安心できない
作品。
このキャラの死に関して、かなり残虐な殺され方が多く、序盤は演出で処理していた感が
あったが、中盤以降は規制のラッシュで正直なところ観づらかった。
余談だが、本作品が放映された2014年は他にも残酷描写の顕著な作品が多かったが、規制は
あくまで自主規制ということで、規制の度合いが作品ごとに異なるのが興味深かった。
本作、「東京喰種トーキョーグール」、「TERRAFORMARS」などがしっかり規制
していたのに対して、「寄生獣 セイの格率」、「PSYCHO-PASS サイコパス 2」などは
緩かった印象。
話が動くのはエスデス、並びに彼女が率いるイェーガーズが登場してからで、それまで
ナイトレイドが狩る展開であったものが、ナイトレイドとイェーガーズが互いに狩る者であり、
狩られる者であるという状態。
ここからのナイトレイドはそれまでの必殺シリーズのような法に代わって悪を裁く者と
いうより、革命の先兵としての暗殺屋(例えば幕末の人斬りを行った志士)のような印象が強い。
一方のイェーガーズも単なる敵役ではなく、ストーリー上の重要性もキャラの個性の強さも
ナイトレイドと対になっている印象で、後半OP映像の作りなどはそれが顕著。
この両陣営の抗争は善対悪ではなく、イェーガーズはイェーガーズの正義があるところも
面白いが、こうした一種のイデオロギーの中で異彩を放つのがエスデスで、彼女に関しては
善悪という観念はなく、強弱で全てを推し量ってしまうところが印象的。
自然界では弱肉強食で物事が進んでいくわけで、そういう部分では彼女の思考は間違って
いない。しかし、生物として弱者である人間は社会を構成することでそれに対抗したわけで、
社会を構成するということ自体に弱者保護という観念があるのだが、その中に弱肉強食を
持ち込んでしまうとは・・・。まあ、現実世界にもこういう人いますけど。
それで無慈悲な人物かと言うと、部下である三獣士やイェーガーズや、恋愛対象である
タツミには優しかったり、なんか感受性は子供がそのまま大きくなってしまったみたいな感じ。
イェーガーズ登場以降は自身の身を削りながら、相手の身を削っていくような展開で、敵も
味方も重要キャラもモブキャラも関係なくの殺し合いで、最後まで雪崩れ込んでいった感じ。
最終回前に主人公であるタツミが死んでしまったのはちょっと驚いたけど。
回を重ねるたびにキャラが死んでいくために全体に無常感が漂うところがこの作品らしい
味わいがあるが、終盤はキャラの在庫整理をやっていたような印象が強く、それまでは「話の
ための死」だったのに対して、終盤は「死のための話」になっていた感が強い。
この終盤の展開はアニメオリジナルらしいが、話を締めるためにこうなったのかな。
また展開をナイトレイドとイェーガーズの抗争に絞ったため、ブドー、シュラといった
キャラがちょっと雑な扱いを受けている印象もあった。
こういったテーマの作品はその所業ゆえの業の深さや悲哀などを求めたいところだが、正直な
ところそういった奥深さはあまり感じられず、ショッキングな映像で目を引くバトルものの域を
出なかったのがちょっと残念。
その分エンターテイメントに徹していたようで、帝具を駆使したバトルシーンなどは
それなりに面白く、更にナイトレイドやイェーガーズの和気あいあいとした日常の光景も
楽しい。もっとも楽しいがゆえにメンバーの死は一層悲しく映ってしまうのだが。
他に印象的だったのはタツミを巡る恋愛要素で、当初はW主人公格であるタツミとアカメの
カップリングになるかと思っていたら、敵であるエスデスがタツミに惚れるという意外な
展開に。
更にこういった部分に無頓着そうなアカメを尻目に、チェルシーが恋愛感情を抱くも死亡、
結局両思いになったのはマインだが、そのマインも死亡という、予想だにしない展開だった。