ふりーだむ さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
変わらないことの愛しさ、変わることへの不安と期待。海を舞台にした優しく美しい物語
海にすむ人々、陸に住む人々。同じ人間が2つの場所に住む世界。交流し、拒絶しながら並立する2つの世界。
海中の学校が廃校となり陸の学校に転校することになった光、まなか、ちさき、要の仲良し4人組。
登校初日、陸の学校の生徒、紡の網にかかって「水揚げ」されてしまったまなか。この出会いを始まりに、海の学校の4人と、紡、小学生の仲良し二人組みうな、さゆの陸の3人の7人が織りなす、海と恋、そして願いの詰まった永い物語が始まる。
毎度書きますが、現行の作品を見ず、評判の高い「良作」と思しき作品を「つまみ食い」する視聴スタイルの私が、この「あにこれ」で視聴する作品を探し、「2クール目大化け」の「成分タグ」に興味を引かれたので視聴しました。
序盤は海の学校から陸の学校へ転向した4人の戸惑いとその交流を描き、中盤~後半は少し重いテーマ、「世界の危機」「冬眠」「おふねひき」から「目覚め」の間の様々な「激動」を描き、最後は「まなか」の失くしたものと「平穏」を求めた7人の「想い」を織り交ぜ、描いています。
海の学校から陸の学校へ転校となった4人。その戸惑いや、期待、不安などの心の動きと、それを受け入れられずにいる陸の学校の生徒たちの不安や拒絶が序盤は良く描かれており、前情報の無い状態でもすんなり物語に入れました。
陸側の人間ながらその間に立つ紡、その紡を中心に両者は少しずつ歩み寄り、「おふねひき」の準備のさなかに起こるちょっとした事件で、共に心を通わせるようになる。その紡に羨望のまなざしを向けるまなか、それをこころよく思わない光、その光を見つめるちさき、そのちさきを見守る要、物語が進む中で自然と各個の心模様を描き、自然に見せている部分にこの作品の「良さ」を感じました。
様々な想いを乗せた「おふねひき」で起こる悲劇と別離。海側の人間の中で一人取り残されたちさき。物語の激しい流れの中での急展開にすっかりこの作品に飲み込まれました。
そしてここから描かれる5年後の世界。降り続く「ぬくみ雪」の中冷えてゆく世界の中、仲良し4人組の中で一人取り残され、冬眠もせず成長したちさき。「きっと彼らは生きている」その思いを胸に紡の家で暮らす毎日。異常気象の原因を調べる紡、彼らの帰りを待つちさき。この二人の前に突如現れた「あの日のまま」の光。そして要。いつも一緒だったみんなと違う時を過ごし、一人成長してしまったちさきの苦悩と悲しみが良く描かれていたと思います。
同年代になったみうなとさや。憧れた光と同い年になり、近づけたと思い喜ぶみうな。同じく憧れた要に同様の思いを寄せるさゆ。
まなかを想い、まなかの目覚めを待ち続ける光と、冬眠前の気持ちのまま、ちさきを思い続ける要。後半はこの二人を想うみうなとさやの幼い恋心の描き方がとても切なく描かれていたと思います。
ここから最後の最後まで、光とまなかとみうな、要とさゆ、紡とちさきの7人の恋模様がとても切なく悲しく、そして美しく描かれており、目が離せなくなりました。互いが互いを想い、自分の心を押し殺し、みんなの幸せを願う。最後には皆が自分の本心を明かし、気持ちを伝えていく。まっすぐな想い、不器用な想い、それぞれがそれぞれの心のままに。
2回目のおふねひきのシーン、ここからはまさに感動続きでした。それぞれの想いが結ばれ、互いに求め想いあう。わが身を犠牲に海神にとらわれ、皆の幸せを願うみうなと、必死に目覚めた自分を支えてくれたみうなを救おうとする光の姿。ここは良いシーンでした。
最後は元に戻りつつある世界と、変化を受け止め、互いの思いあう人と過ごすみんなの日常。素晴らしい終わり方だと思いました。
この作品の良い所は、一つ一つの事象、行動などに一つ一つ丁寧に理由や由来などがあり、それをホントに優しく美しく、時には切なく説明、表現しているところでしょうか。「えな」や「おふねひき」、海と陸の人々の成り立ち、海神とおじょしさま。様々な伏線もわかりやすく、きれいに描かれていて、これも物語に入りやすい部分なのかもしれないですね。
こういう作品を見るたび、毎回思うのですが、こうゆう筋立て、展開、そして終わり方。今までさほど多くはないですがいろいろな作品を見てきた中で、この作品や、私の好きな作品で「四月は君の嘘」「ゴールデンタイム」「シュタインズ・ゲート」などみたいに、全てがまとまり、美しく完結する作品を見るたび、すごく嬉しくなります。だからアニメ視聴をやめられないんですね。
変わらずにいることの愛しさ、変わっていくことへの不安と期待。それを抱える人々の「想い全てが溶けあう海」を舞台にした優しく、美しく切ない恋物語。非常に満足のいく一作でした。
余談~
この作品を見ている最中、作品のレビューを流し見していたところ、内容にかかわるようなタイトルがつけられているレビューがあり、それを見て、その後の展開がなんとなくわかってしまい、少し残念な思いをしました。
初めて見る作品はその展開、成り行きを期待しながら見るので、それが分かってしまうと良い作品でも、作品によっては楽しめなくなることもあると思います。
気づかないと思われますし、悪気もないと思いますし、多数の皆様は気にならないのかも知れないですし、私も同じようなことをしているのかもしれませんが、この件を機に私自身もレビュータイトルの付け方に気を付けたいと思いました。