N0TT0N さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
四季折々
原作小説未読。ドラマ版未視聴。
今のところ私にとってこのアニメ作品が「すべてがFになる」の全てです。その分、理系ミステリー、キャラクター、物語を新鮮な気持ちで堪能できました。予想通り一気視聴向きで、DVDが全巻出揃うまで待った甲斐があったというものです。実に面白い。
これは天才が用意した思考的なアトラクションに安全バーでもして乗せられるようなタイプの作品だと思います。どこまでも天才の影を追いかけて、天才の構築した状況に振り回される。そういう楽しみ方です。
これは凡人だけが体験できる楽しみで、おれ、凡人で良かった。と思える視聴体験でした。
同時に、この「天才の独特の思考」への疑問も大きくなりますが、疑問であること自体が、ある意味天才性と事件を繋いでいるようないないような掴みどころのない感じを演出していたと思います。
音楽もop.ed共になかなか良曲でしたし、op映像も正確なモーションを抽象的に表現しているのが面白くて、なにげに毎回視ちゃってたし、他の映像作品にもよく使われるバッハのチェロ組曲「プレリュード」も挿入曲として使われていましたが、ハマっていたと思います。
作画的には、西ノ園くんのキャラデがイマイチしっくりきませんでしたが、やたらかわいいキャラデにするよりはこういう方向性の方が正解なのかなといった感じです。が、まあイマイチはイマイチです。。
犀川先生や真賀田四季博士なんかはdeepな理系の感じがよく出てて良かったです。ま、どちらにしても浅野いにおさんのキャラデということもあり、萌え要素は限りなく0でしたね。
内容と併せて考えると、いい判断だったと思います。
作画で印象的だったのは、夜から朝日が昇るまでのトワイライトな変化をやけに丁寧に描いていた部分ですね。ロケーションに殆ど変化がないので、そういう部分で気を使っていたのかな?カメラの半分が海中、半分が海上になるようなアングルも凝った背景でしたが、そういうことだったのかもしれません。
そして私の好きな作品の1つ「絶園のテンペスト」と同じように、作中の重要人物の不在がこの物語を非常にミステリアスなものにしています。
内容はミステリーということで割愛しますが、個人的にはオススメしたい作品です。
─以下、ネタバレ・雑記─
【天才・思考・死生観】
※視聴予定の方は覗かないで下さい。
{netabare}
真賀田四季。
この人が天才に見えるかどうかが物語上の大きな鍵だったと思いますが、そこは成功していたんではないでしょうか。
ただ、事件自体はプログラマーとしての天才性を生かしたトリックになっているのでしょうが、動機は天才性というよりは真賀田四季の特異な死生観や思考に求められる。
そして、その部分の謎は明かされない。
例えば、
なぜ、こんなゲームじみたトリックのために人生最後の15年を費やそうと思い、実際費やしたのか?その15年に納得しているのか?
なぜ、自分が生き残り、逃亡までし、娘を殺める選択をしたのか?
などなど。
愛した人を肉体から自由にし、真賀田四季の中の架空の人物として再生する。
肉体からFreeになり、
すべてがFictionになる。
肉体に否定的で、探求心に肯定的で、社会性と乖離した死生観を持ち、どこか矛盾しているような真賀田四季の深部が描かれているのを期待して、原作を読んでみようかなと思う。
{/netabare}