おむえむ さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
変わっていく日常
観終わってみて一期がキャラクターそのものを描いていたのに対して、二期はキャラクターの変化を描いていたように思う。
二期についてはスロースタートであったというのは共通の意見として存在するだろう。しかしそれも、あくまで二期前半は日常を描くことが中心になっていると考えれば納得のいく展開だ。
一期はココアが木組みの街に引っ越して来る場面から始まる。ついに足を踏み入れた新天地。否が応にも“心がぴょんぴょん”する展開だ。
一期は全てが目新しく、また初めて見るキャラクターや景色に新鮮さがあった。視聴者である我々もココアの目を通じ、新たな世界を体感することができる。
一期放映時において“心がぴょんぴょんする”というネットジャーゴンが流行したのも、秀逸なキャラクターデザインと世界観への導入があったからのように思う。つまり我々はココアと一緒になって“心がぴょんぴょん”していたのだ。
しかし二期はそうもいかない。既に主人公であるココアにとって、ラビットハウスでの生活は新天地ではなく、良い意味でも悪い意味でも日常になってしまっているからだ。
だからこそ二期のOPテーマは一期のように新天地へ足を踏み入れるニュアンスではなく、かけがえのない日常をテーマにしている。
二期において描写されるのはあくまでキャラクター達の日常だ。
正直前半は不安だった。勢いだけの笑いどころが分からないギャグなど、死屍累々と横たわる二期で失敗したアニメの轍をごちうさも踏んでしまうのかと思った。
けれど後半になって変化していく日常が描写されることで、全てに意味が出てくる。
もしもココアが街に足を踏み入れなければモカが現れることもなかったし、千夜とチノが出会うこともなかったかもしれない。リゼがコテージに泊まる計画を立てたのもココアに影響されたからだ。
主人公によって周囲のキャラクターが変化を迎える。それは物語の基本であり、ごちうさに二期に通っている一本の筋のようなものではないだろうか。
そのような変化がどこへ結実するのかといえば最終話。チノとココアが枕を投げ合うシーンだろう。
最終話はまさしくココアと出会ったことによるチノの変化を描いており、あのシーンはまさしく象徴的な意味をもち堪らない。
決して一期の焼き直しではなく、一期があったからこそ日常を経て変化を迎える二期は観て良かったと思えるクオリティだった。
願わくばこれからも優しく賑やかなラビットハウスの日常を、三期目も観てみたいと思うばかりだ。