「がっこうぐらし!(TVアニメ動画)」

総合得点
81.6
感想・評価
1929
棚に入れた
9597
ランキング
399
★★★★☆ 3.7 (1929)
物語
3.7
作画
3.7
声優
3.7
音楽
3.7
キャラ
3.7

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ネタバレ

sekimayori さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4
物語 : 2.5 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

終わりから始まる日常系 【63点】

ゾンビが徘徊する世界にあって、学校の中で生活する生き残り少女4人の日常を描いた作品。
(放送前から原作宣伝しまくってたので)ネタバレ食らっていたけれど、予想以上に楽しめた。
ニトロとは言え、一発屋・出オチと断じるには惜しいと思う。
同時に、作品構造に少し歪みがある気もして、賛否両論なのには納得です。


■雑感
・音楽が好き。
 特にED、中塚さんのジャズナンバーと「アフターグロウ」が好み。
・ホラー系あまり観ないので、1話ラストに限らず、重要シーンのホラー演出(オルゴール音とか)も新鮮。
・りーさんの曇った顔が可愛いです。
 みーくんは銀髪ショートという超私得な上、ガーターベルトって……ふぅ
・日常系メタでありつつ真っ当に日常系として走り切った、意外と一本気な作品でした。
 最後の太郎丸は物語の主題から外れてる気もするけど、やっぱ卑怯な破壊力。
・ただ他の日常系に比べ、「日常」描写が少し魅力に欠けたのは残念。
 あと正直、1話のアレは必要だったのかなぁ、とも。


■「日常」と、「日常」化する非日常と、卒業と。
{netabare}一見日常系に対するメタだし、実際そうなんですけど、観終えて感じたのは「(カギ括弧つきの)日常」の終焉という極めて日常系っぽい感傷でした。

そもそも、日常系の「日常」は、辛い終焉を義務付けられています。
美少女学園日常系で言えば、作品内の次元では卒業、作品外の次元では放送や連載の終了という形で、それはもたらされます。
大きな物語展開の無い、愛くるしいキャラたちのひたすら優しい箱庭は、永遠のようにも思える。
でもオタクコンテンツがサザエさんに取って代われない以上、残念ながら、日常系は必ず終わってしまうのです。
ほんと、残念ながら。

がっこうぐらしは、終わりから始まりました。
女の子たちがキャッキャウフフしてるのを脳内麻薬ドバーな状態で鑑賞できる箱庭は、最初からありません。
そこにある現実は、「日常」はおろか日常からもほど遠い、ゾンビが闊歩する非日常です。
それに対し、ゆきの脳内世界では「日常」が生き続けている。

視聴者は、現実とゆきの目線、非日常と「日常」を行き来します。
度々見せられる「日常」は幻想で、そこに癒しを求めることはできない。
一方で、厳しいはずの現実は、意外と牙をむかずスローペースに流れて。
むしろ非日常が「日常」に限りなく近づき、ついには現実で水着回なんてものが発生する始末です。

しかし最終盤、ゆきの「日常」は壊れます。
同時に非日常は本来の厳しさを見せつけ、学園生活部の陥った「日常」も失われて。
そして迎えるのが卒業です。
最終回のゆきの演説は、幻想の「日常」、非日常のエアポケットに生じた「日常」、二つの「日常」からの脱却を、高らかに宣言したものでした。
みんなが好きな「学校」=「日常」にありがとう、そしてしばしさようなら。
めぐねえが守り、りーさんとくるみとみーくんが守り、そして最後にはゆき自身が守った「日常」から、学園生活部は卒業していきます。
日常系好きとしては、その姿に明るい喪失感を禁じ得ませんでした。

結局、ポジティブな「キルミーベイベーは死んだんだ」が、この作品が目指したかったことのような気がして。
個人的に、もう少し「日常」描写に中毒性があれば、感傷はより大きく心を打ったとは思います。
あと、日常系の喪失を悲しむってのは、萌え豚の現実逃避用特殊技能だと考えてるので、ARIA的エブリデイマジックを裏からやってるとは言いたくないんだけど(関連して、ゆゆゆやこれを「新日常系」と持て囃すのには反対)。
でもテーマは貫徹できてたし、清々しい気持ちで観終えることができました。

「」使いすぎでどっかのニートゲーマー兄妹に怒られそうだなコレ。{/netabare}


■がっこうぐらしのちょっとした不幸
{netabare} 余談ですが、賛否両論の原因は、物語構造上における第1話の種明かしの位置づけかも。

本作でショッキングなのは設定だけ。
その基盤の上に語られる物語は、日常系プロパーなものです。
しかし1話のギミックは、視聴者の期待をミスリードして、本筋への興味より、超展開への衝動を植え付けてしまった。
終わりから始まって終わりを語る物語なのに、始まりの存在を錯覚させてしまった。
作品の掴みを良くしたいという強い欲求が存在し、しかも考え付いた設定がそれに足るインパクトを持っていたことが、ある意味がっこうぐらしの不幸な気がします。

あと、バイオハザードな世界観はどうしてもストーリーを要求してしまいますね。
一見しただけでは乱雑なエピソードの集積でしかない日常系とのかみ合わせは、少々悪い気もします。
非日常での人間関係をリアル寄り(?)にして、ゆきの「日常」と学園生活部の非日常を対比させても、面白い作品になったかもしれません。
というか、もっと明確に対立して顔を曇らせるりーさんとみーくんも観たいんじゃ←オイ{/netabare}


【個人的指標】 63点

投稿 : 2015/10/13
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サンキュー:

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