STONE さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
二人が過ごした1年間
原作は未読。
いわゆるBoy Meets Girlモノで、有馬 公生と宮園 かをりが過ごした1年間が描かれるが、
美しい四季の背景が1年という期間をより印象付けている感じ。
前半は亡き母との問題により立ち止まっていた公生がかをりとの出会いにより救済される
物語といった感じだが、公生の心の問題はかなり根深く、立ち直ったと思ったら、まだ尾を
引いていてといった展開がしばらく続き、そう簡単にカタルシスを得させてもらえない。
それだけにようやく真の母との別れができたシーンはなかなか見応えがある。公生役の
花江 夏樹氏も良かったし。
後半はかをりの難病モノという側面が強くなっていったが、難病モノは割とそれまでの
フラグでなんとなく結果が判ってしまうものが多かったりするが、この作品に関しては最後まで
去就が読めず、結構ハラハラさせられた。
結局、かをりは死んでしまったわけだが、ただ死んで可哀想というより、本人が生きた証を
刻んでいく部分に焦点が当てられていたこともあって、未練があるだろうが、それなりに幸せな
一生だったような。そういう意味ではハッピーエンドとも言えるかも。
ラストにおける公生に宛てた手紙で、タイトルにある「嘘」の意味、かをりの迷いのない
数々の行動の意図、そしてかをりの公生への思いなどが判るが、全て観た後で再度見直すと、
特に前半におけるかをりの発言や行動などが、どんな心情の上に発せられたものかが判り、
かなり切ないものがある。
この手紙の中で、公生との最初の出会いが綴られているが、同じ場でやはり公生の演奏に感動
した井川 絵見が公生と同じような存在になろうとピアノを志したのに対して、かをりは
公生との共演を望んでヴァイオリンを志すと、異なった選択をするところが面白い。
最後に手紙で告白という形を取ったかをり。この辺はかをりという存在を公生に忘れて
ほしくないためのものなのだろうが、意地の悪い見方をすると一種の呪縛とも取れるもので、
澤部 椿にとってこれからの恋のライバルはやっかいな相手だなという感もある。なにしろもう
ライバルはいないのだから。まあ椿もその辺は重々承知でいるようだけど。
その椿だが・・・。
かをりの公生への思いというのは死を前にしたゆえの重みのようなものが感じられ、更に
作中描写も多いものだから、かをりに感情移入してしまうことが多かったが、椿も幼い頃から
積み重ねた重みというものがあり、時折挟まれる椿回のようなエピソードを観るとこれまた椿に
感情移入してしまうことも。
ただ、ストーリー的にかをりと椿が互いに自身の感情をぶつけるような展開がなかったため、
椿エピソードは本筋に割り込むような形を取っており、話をぶつ切りにしているような感も
あった。この辺は致し方ない。
音楽モノという部分では公生、相座 武士、絵見のライバルストーリーが面白いが、単に
競い合う関係というだけでなく、それぞれの理想とするピアノが異なっていたりするのが
興味深かった。
残念だったのは後半以降は公生とかをりの物語といった色合いが強くなるため、音楽モノと
しての要素は弱くなることで、武士、絵見をもっと掘り下げて見たかった感も。
この辺は高校生編として続きを観てみたくもある。恋愛部分に関して椿だけでは物足りない
なら、絵見や相座 凪を加えてもいいかも。
演出としては光と影を意識した構図や色で感情や立ち位置を現したりといった部分が
印象的で、この辺はキャラの心情などを視覚的に表現する効果があると同時に、美しくもある。
あと各キャラの心情表現としてはポエムのような少年少女のモノローグが印象的。
このポエムモノローグはかなり小っ恥ずかしくもあるが、10代の甘酸っぱい感情が
感じられて、結構好き。
作画に関してはやはり演奏シーンがいい。
止め絵で終わらせてしまっている演奏もあるが、時間、資金に制約のあるテレビアニメゆえに
全ての作画が秀逸というのは無理な話で、力を注ぐべき部分を判っていて、そこに焦点を
当てている印象。
単なる演奏描写というだけでなく、公生の様々な人との出会いと別れが彼の演奏にうまく昇華
されていく過程は見事。
キャストに関しては主役の二人である花江 夏樹と種田 梨沙の両名がやはり印象的。