東アジア親日武装戦線 さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
不当な評価を受けている名作。臭い物に蓋をする風潮こそが問題。※グロ表現あり!閲覧注意
※レビュに当たり作品の性質上グロ表現を多用しています。気分を害すおそれもあるので、これより先は自己責任で閲覧してください。
原作未プレー。
初回放送時11話まで視聴済み。
最終話が放送中止となり、替わりにフィヨルドを航行するボートが放送された有名な作品。
ちなみに、問題の最終話では言葉が誠の頭部を抱いて一人、クルーザーで漂流している描写で終了です。
急遽差し替えた映像にしても出来すぎた演出は4chで嘆かれた「ナイスボート」の名言まで生みました。
【あらすじ】
(伊藤)誠が高校に入学後、通学電車で会う(桂)言葉(ことのは)に片思いをする。
その様子を誠と同じクラスで席が隣の(西園寺)世界が察知し、誠の恋愛が成就するようにあれこれと世話を焼き、訓練と称して誠に身体を触らせる。
世界のお節介で誠と言葉は付き合うこととなりますが、言葉はとてもウブな子で異性とどう接していいかわからない。
誠も、付き合ったけど言葉とどう接していいか分からない。
そこで世界が言葉の悩みを聞き、そして誠には様々アドバイスをしたり、いい人全開の世界を演じている
ここまでが前半。
中盤に入り、お嬢様でおとなしい言葉にはクラスメートからのイジメが苛烈になり、一方、誠には様々な異性の誘惑が入り込んでくる。
言葉のクラスメート加藤乙女は中学時代から誠を片思いしていました。
その誠と付き合っている言葉は、彼女にとって憎悪の対象となったことがイジメの動機。
学園祭が近づき実行委員である言葉は加藤乙女を中心とした女バスグループから無理難題を押しつけられ、誠と過ごす時間も激減していく。
その機会に、言葉の堅苦しい雰囲気に辟易していた誠は、気楽に話せる世界に急接近していく。
誠と世界の関係が急激に進むにつれて、言葉も心中穏やかではないところに、世界の親友の刹那が言葉の目の前で誠とキスをして愕然とする言葉。
なぜ、刹那が誠の携帯を弄り言葉を着拒設定するなど言葉に辛く当たり、目の前でキスをしたのかの謎は後半で明らかになる。
更に誠が言葉に飽きていることを確認した誠の友人(澤永)泰介は、これを好機としてレイプ同然に言葉と肉体関係を交わす。
一方の誠も世界と肉体関係に発展していく。
前夜祭で一緒にフォークダンスを踊る世界と誠とは対照的に、泰介にレイプされた言葉の哀れな様相が描写される。
アニメ史上初となるヤンデレキャラが誕生。
後半、世界と関係して童貞を捨てた誠は、その後同級生達と次々ベットインし快楽と性を貪るハーレム状態かつクズ街道を真っ逆さまに突き進む。
対照的に、心が折れた言葉は繋がらない携帯と会話するような精神異常をきたす。
壊れた言葉の描写はいっそう彼女への哀れみを誘い、誠に対する憎悪へと視聴者の感情を煽る。
略奪愛が成就した世界は有頂天の真っ最中。
しかし、ここで事態が少しづつ変化していく。
外面は明るい性格を装っているが、世界の本当の性格は外面と内面の落差が激しくメンタルが弱い気質であることを熟知している刹那は、誠に世界を託してパリに行く。
刹那も誠に恋心がありながら、世界も誠を好きなことを知り誠を譲る。
その想いこそが、言葉に対する辛辣な態度と気持ちのこもったキスの正体。
言葉は直感で気がつくが、世界は言葉に指摘されるまで気づかない。
後に、世界にとって刹那はかけがえのない存在だったことを思い知ることになるが、後の祭り。
ハーレム状態を満喫していた誠は、世界から妊娠したことを告げられる。
世界の妊娠が公となり、更に言葉を追い詰める。しかし同時に誠の周囲から次々と女友達が去り、気がつくと世界しか残っていない。
妊娠に動揺した誠はどう処置して良いか分からず、世界を避けるようになり、それとともに言葉が脳裏に浮かんでくるようになる。
クリスマスイヴの夜、世界が疎ましくなった誠のもとに言葉が現れる。
誠は言葉とイヴを供にし、世界が用意した自宅のパーティーをすっぽかす。
誠の帰りが遅いことに逆上した世界は、誠が言葉と一緒であることを疑い、手作りの料理をひっくり返して誠の家を去る。
去り際に誠と言葉が本当に一緒だったことを目撃して、誠の家に戻り言葉にビンタを張り詰るが、逆に刹那の本心を始め世界の行動を鋭く指摘した言葉の返り討ちにあう。
更に誠との濃厚なディープキスを見せつけられたことで、立場の逆転を悟り自宅に引き篭もる。
自己嫌悪に陥り鬱状態の世界に対し、追い討ちをかけるように誠から暗に中絶を言い渡される。
苦労して手に入れた誠との愛を終わらせない、誠だけが幸せになることは許せない、最後に世界がとった手段は誠の殺害。
誠の遺体を見た言葉は頭部を切断し、バッグに詰める。誠の携帯を使って世界を学校の屋上に呼び出す。
世界の妊娠に半信半疑な言葉は、なぜ医者に診せないのかを問い詰め、彼女ですらない世界には誠の子供を産む資格はないと言い放ち、ノコギリで世界の頸動脈を切断、殺害の後、世界の腹を割き胎児の有無を確認する。
その後、言葉の家で所有しているクルーザーに乗り込み、誠の頭部を抱きしめながら沖合で漂流。
あらすじここまで。
【スクイズの本質と社会への影響など】
この作品は社会を騒然とさせた問題作品でもあり、結末に賛否両論があることは十分承知です。
かつて、余所でこの作品を擁護し、炎上させた苦い経験もありますけど、どこでレビュしても同じことを書きます。
まず、誠の所業を考えればスクイズのバッドエンドは社会的に当然あって不自然ではないこと。
最終話放送以前から言われていた「誠氏ね」は当時誰でも思っていた「人」として当然の感情であり、同時に、世界の狡猾なあざとさも叩かれていた当時の状況では、誠と世界の死で結んだ最終話の展開は多くの方々が望んでいた結末でもありました。
寧ろ、三角関係破綻の悲劇を犠牲を出さずに回避してしまうと、ホワイトアルバム2のような非現実的な違和感のみ残ってしまう。
世の中、痴情の縺れから事件に発展したケースは腐るほど存在し、スクイズのクライマックスはけっして特殊な出来事ではなく寧ろリアリティに満ちています。
痴情のカオスを扱い、かつ、リアリティへの帰納を無視したハッピーエンドに結びつけるとすれば相当の脚本能力が要求されます。
視聴者を満足させられる自信がなければ、安易に痴情をストーリーに用いないことが賢明ですね。
また、世間で様々に提議された批判の本質はこの作品のクライマックスが殺人で終わったことと、アニメ作品として世界が誠を滅多刺した描写と、言葉が世界の頸動脈切断後に、腹を裂いて胎児の確認をした描写が極めて猟奇的であったことでしょう。
「中に誰もいませんよ。」言葉が言い放った有名なセリフです。
(そういえば、プリズマイリヤドライでイリヤも同じセリフを・・)
実写ドラマでは普通にある描写が、アニメではなぜ許せなくなるのかは理解に苦しむところです。
その原因として、アニメに対して綺麗で純粋なロマンを求める一方的な思い込みや、アニメは本来子供が観るもので、社会の黒いところは表現すべきではないとの偏見に問題があるように思います。
アニメであっても実写ドラマであっても、現実と非現実の見境いがなくなり、理性を喪失するような影響を受ける側こそ問題があり、精神的に何らかの問題を抱えている極一部です。
その極一部の特殊な問題行動をことさら摘み上げて、一括りにアニメの影響にされることこそアニメファンとしては心外です。
この作品は人間の本性を包み隠さずに表現した結果に過ぎません。
更には、男性視点としては誠を道化師として、女性関係を含め社会のいたるところにあるトラップに嵌り人生をフイにしないよう、多くの警告がされていると見るべきであり、女性視点としては世界と言葉を道化師に男を見る眼、人を見る眼を養え、うす汚いことすると後で自分が困ると、さりげなく教示しています。
抽象的で恐縮ですけど、表面のストーリーを批判することは容易いことですけど、この作品は反面教師としてメッセージを読み取ることが表面的な批判より重要だと感じます。
多少具体例を挙げれば、
言葉のように何事にも受け身で素直すぎ、積極的にコミュニケーションを図らないと視野が狭まり、世界のことばを額面どおりに受け取り、嵌められていることすら気付かず知らない間に事態がとことん悪化し、なす術が無くなる。
世界のように他人を陥れてまで自分のための利益を追求すると、最後には因果応報で自滅する。
誠のように優柔不断で問題の先送りを続けると、最後には解決困難となり進退極まり、藁をもすがる思いで甘言に乗り新たな問題を抱え最終的に破滅する。
まだまだ、読み取れるメッセージはありますので、このレビュを読まれた方は考えてみてください。
次に、放送中止の理由で、スクイズの影響で殺人が起きたかのような因果関係が逆転してしまった誤った情報も多く流れていますけど、事実は最終話放送直前に起きた「京田辺警察官殺害事件」の犯人で当時16歳少女の殺害手口がオノで頸動脈を切断したことで、この犯人の年齢や犯行の手口が放送中のスクイズ「言葉」と似ていたことで社会への影響を考慮して、先発放送局が放送中止を判断し他局も右倣えで放送中止。(言葉はノコギリを使用)
つまり、タイミング悪く現実の事件が発生したのが放送中止の直接動機であり、事件が無ければ放送されていたでしょう。
同時期に放送されていた「ひぐらしのなく頃に解」も、とばっちりを受けています。
特に注意喚起しますが、作画の質は全般的に低いながらも、殺害シーンはアニメーター渾身の作画とも言える出来ばえで、グロ描写が苦手な方は絶対に見るべきではありません。トラウマになります。
スクイズが与えた影響は作品そのものより、放送中止の事情がアニメ業界を萎縮させたことでしょう。
例として、ヤバイものはOVAの風潮もスクイズを契機にはじまったのでは?
社会のパッシングを恐れアニメにおける殺人シーンやグロ描写に過度の自粛が起こり、創作表現の幅に自粛のタガをはめたことは、とても致命的で不幸な出来事です。
企業活動としても、スクイズ制作会社はほとぼりが冷めるまでは元請けから排除されたなどの社会的な制裁まで受けています。
制作会社の都合で放送がおちた例は多くありますが、放送局の判断で中止は前代未聞。
この事実こそ現場の「萎縮」という後遺症を生み、更にBPOの存在も圧力となって創作の障害となっているとの指摘も聞いたことがあります。
作品の良し悪しを判断するのは視聴者(消費者)であり、悪しき作品は自然淘汰されるのが競争原理です。規制をいたずらに増やさなくても、対価を払う価値のない酷い作品は市場から消滅していきます。
最初から、批判が生じないように調理された無難な作品は誰も望んでいないでしょうし、表現の自由が保障されている環境でこそ優れたアニメの製作が可能ではないでしょうか。
日本の技術をパクリながらも、特亜のアニメがいっこうに世界から認められないのは、創作活動に絶対不可欠な表現の自由が保障されていないことが原因であることは自明のことです。
スクイズで批判されるべきは、その内容よりも放送中止が決まった後に原作のゲーム会社が未開封のゲーム所持者向けに特別上映会を企画するというトンデモ商法です。
さすがに批判を浴びてゲーム所持者であれば誰でも参加可能と方針を転換しましたが、企業の社会的な責任として放送中止の意味を自覚するべきであり、モラルを問われるならばアニメ制作会社ではなく、原作側のゲーム会社の姿勢です。
【物語と音楽】
作品本体以外で生じた数々の後遺症を除き、スクイズの脚本、構成は精錬されており、演出は各話でバラツキがあるも、強烈な最終話で各話の負の部分が帳消しにされています。
実際、1話から11話までは12話の為に存在していると言っても過言ではない作品。
一話ごとに変わるedや豊富な劇中曲のサントラ盤も発売され、原作ゲームとはいえ1クール作品としては異例の凝りようです。
ラストの殺人シーンは作画と劇中曲「悲しみの向こうへ」の組み合わせが俊逸であったことが、逆に放送中止の不幸を呼び起こしたようにも思えます。
物語の構成は「刀語」や今期冬アニのダークホース「この素晴らしい世界に祝福を!」の脚本、構成を担当した上江氏。
正直、妙に納得をいたしました。
【作画】
見せ場を除き、全般的な作画クオリティはけっして高くはないのでソコソコの評価としました。
【キャラ、声優】
内容が内容だけに各キャラの濃さは別格であり、声優さんの熱演は最終話を観れば十分納得がいきます。
【世界の妊娠の真偽とその影響をプチ考察】
また、よく議論になる点として、世界は想像妊娠だったの意見があります。
個人的には、言葉の人気が高いので、自己申告や状況証拠だけでは世界の妊娠は認めない意見が多いのかなと感じていますけど、この件について確定的な判断材料が少ない以上、私はどちらとも言えない立場をとっています。
世界の妊娠が事実であろうが虚偽であろうが、この先あらゆる手段を講じて世界は誠を拘束するでしょうし、束縛を嫌う誠との関係どのみち破綻へと至ります。
また、世界と誠の関係が続く以上、現実逃避傾向のある誠にとって言葉の存在も比例して大きくなり、同時に、言葉、世界相互の憎悪感情も比例して増加するのが人間心理です。
世界も言葉も誠から手を引く意思がない以上、三角関係の精算は(自殺、他殺、病死、事故死を問わず)誰かの死まで続きます。
物語では二名の死者が出ていますけど、実際問題、誠、世界、言葉のうち誰か一人死ねば精算終了ですよね。
したがって、妊娠は事態の悪化を加速させる時間的な触媒としての役目だけであり、遅かれ早かれどこかで精算の必要が生じるこの三角関係の大局に影響を与えません。
なお、高校生という限られた時間と環境では第三の女、世界や言葉に第二の男が出現する可能性もない訳ではありませんけど、全12話の物語で起きた内容に限定すると想定し難いシナリオですし、それこそ別ルートの設定が必要となります。
スクイズに限らず、考察はあくまで物語の範囲であり邪道です。
次に、物語では言葉が腹を割いて確認していますが、世界の様子から外見で妊娠の判断ができない初期です。
物語の時系列から世界は妊娠2カ月から1カ月以内の妊娠初期で、素人が肉眼で胎児の有無を判別するのは困難であり、一介のJKに過ぎない言葉に血に塗れた腹部を他の臓器と誤認せず判別能力があったとは思えません。
また、世界が受診を拒否したのは、言葉から紹介された病院であったことが理由であり、恋敵の相手に紹介された病院での受診なんて普通受け入れないでしょう。
(世界の味方ではないけど一般的に)世界の気持ちを考えれば、妊娠の有無を隠すための方便とも一概に思えません。
ただ、シナリオから淡々と読み取れることは、誠と言葉にとって世界の妊娠は不都合な事実であり、世界にとっては、たとえ誠のようなクズでも恋人の子供を身篭った女性としての優越感かつ強力な拘束具になります。
なので、妊娠の有無はどのキャラに感情移入するかで決めて良いのではないでしょうか。
正直、妊娠の真偽を議論しても不毛であり、この物語設定では三角関係精算に死人が伴う結論には変わりはないでしょうから。
【スクイズのシリーズ】
最後に、スクイズにはOVAが2本出ていますけど、本編とはうってかわって誠、世界、言葉達の楽しいスクールライフと、言葉の妹「こころ」ちゃんが主人公の物語。
両方とも本編のオドロオドロしさはありません。
しいて言えば「Valentine Days」で、出刃包丁を持った世界と、ノコギリを持った言葉が誠を追いかけ回す描写が数秒チラっとある程度です
エロやグロ描写が苦手でなければ、スクイズは一度は観るべき作品として推します。