STONE さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
仮想と現実、生と死
原作は未読。
1期はゲームの死が現実の死となるデスゲーム的要素が根幹にあったが、それも解決した
ため、視聴前は「本作はどうするのか?」と思っていた。普通にゲーム世界で冒険をしても
たいして面白いものにはならないだろうし。
で、本作に関しては「こういう切り口もあるのか」とちょっと感心。
1期と2期、更に2期内でもファントム・バレット編とマザーズ・ロザリオ編、まったく異なる
展開を見せるが、いずれも現実と仮想、それに伴う生と死を扱っており、この辺がこの
シリーズの一貫したテーマなのかなと思ったりした。
ファントム・バレット編は再びゲーム内での死が現実の死になるというミステリー的展開で
話を進めつつ、現実において人を殺したことのある朝田 詩乃(シノン)の心の問題を取り上げて
いく。
この辺に関してはかなりじっくりと描いた印象。逆の見方をすればテンポが悪くとも取れる
感じで、人によってはイライラするかもしれないが個人的にはこれぐらいていねいにやって
くれた方が好き。
このシノンの問題と並行して、主人公である桐ヶ谷 和人(キリト)の似たような過去からくる
問題も描いていくが、こちらは1期においてキリトがそのことで葛藤するような描写がなかった
ためか、ややとってつけたような感はあった。まあアインクラッド編の頃にこういう展開を
考えていなかっただろうからしょうがないことだろうけど。
あとGGO内のキリトの女声はやはり無理があったような(笑)。
中盤のキャリバー編に関しては話としては取るに足らない印象だったが、ファントム・
バレット編とマザーズ・ロザリオ編が重たい話であったため、ちょっとした箸休め的効果は
あったみたい。特に問題のない時のキリト達の日常が垣間見られるような楽しさもあったし。
後半のマザーズ・ロザリオ編では紺野 木綿季(ユウキ)という病による寝たきり状態の少女が
描かれるが、これまでVRマシンがゲーム利用としてのものだったのに対して、医療としての
利用に触れるなど一種の社会問題提議をしていたのはなかなか興味深かった。
身体の障害により現実では動くことにできないユウキにおいては仮想世界こそ生を享受できる
ものだったようで、彼女にとっては仮想世界の方が現実なのかもしれない。
ここで興味深いのは同時並行して描かれた結城 明日奈(アスナ)の問題で登場したアスナの母で
ある結城 京子の存在で、彼女からは随所に「仮想世界はあくまで仮想であり、現実の
代わりにはなり得ないものである」という趣旨の発言が出てくる。彼女自身はユウキの話には
一切絡んでこないが、一種の対比的存在として見ると面白いものがある。
全体的には色々な部分に踏み込んできたような印象でドラマ的には面白いものがあったが、
その分アクション的側面は大幅に後退した感じで、1期を広義のファンタジー作品として捉えて
いたような人は面白さが半減したかも。
キャラに関しては本作もキリトが色々な見せ場でいいとこ取りみたいな感じだったが、
話自体はファントム・バレット編に関してはキリトの心の問題も描いていたが、やはりシノンの
物語といった印象が強く、マザーズ・ロザリオ編はアスナとユウキの物語といって言いような
内容で、そういう意味ではちょっと印象が薄かった。
1期に続いて相変わらず勿体ないなあと思うのは脇キャラの扱い。
いずれも話の展開が少数のキャラのみで進んでいくため、その少数のキャラは魅力的に
描かれるが、もっと魅力を引き出せそうなキャラがモブ+α程度で終わってしまうのが惜しい。
原作者が少数精鋭の展開を好むのか、群像劇スタイルの展開を書くのが苦手なのかは
知らないけど。
キャストに関してはファントム・バレット編とマザーズ・ロザリオ編のそれぞれの
キーパーソンであったシノン役の沢城 みゆきとユウキ役の悠木 碧の両名が素晴らしかった。
あと新川 恭二役の花江 夏樹氏のいっちゃってる感もステキ(笑)。
1期に引き続いて、音楽は相変わらずいい。