おむえむ さんの感想・評価
4.9
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:今観てる
汚い大人にしかなれなかった俺たちを殺してくれ
オルフェンズが何の話なのかと問われれば、おそらく階級闘争の話なのだろう。
子ども対大人。金持ち対貧乏人。
主人公の三日月をはじめとする鉄火団の面々は少年兵であり使い捨てられる安い命の持ち主だ。
最新話の五話までの間にも、様々な大人の都合で彼らは度々命の危機に晒される。
ストーリーの大筋としてはそんな最底辺の少年兵である鉄火団が生き抜く為に、お姫様を守りながらギャラルホルンに代表される金持ちの大人をぶん殴っていく。
なによりも観ていて脚本が紛争地域に相当詳しいなと感じられる。
地球に搾取される火星は一枚岩ではなく、常にきな臭さが漂っている。搾取する側にしてみれば、一致団結されるよりもバラバラになっていてくれた方が当然やりやすいだろう。だからこそ団結の旗印となるクーデリアが地球圏の利益を代表する立場のギャラルホルンに狙われることになっているのだろうが。
この視点はいわゆる現代の大国と中東問題にも関係する気がする。
火星を出がらしと評しながらもその恩恵を享受しているおそらくは富裕層であろう地球圏の面々は、中東だから紛争が起きても仕方がないとニュースを通して感じている我々と遠くない存在な気がする。
またクーデリアを通し視聴者は火星の実情を知ることになる。{netabare}火星に存在する格差(平和にデモをする人々とスラム街の少年少女の対比など)は一朝一夕のテコ入れでどうこうなるものではない現実の根の深さを感じさせる。
それがあるからこそ、子どもが戦うということにショックを受けて独走するクランク二尉のヒロイズムが怖いほど滑稽に映る。
三日月が三発の銃弾(通常は二発。三発目は弾を無駄にするだけ)をクランクへ撃ち込んだのは、彼の自分自身の行動に酔ったヒロイズムが汚らわしく我慢ならなかったからだろうか。
クランクの行動はある意味では間違っていないし人間としては称賛されるべきものなのかもしれないが、オルフェンズの現実の前には何の意味もなさなかった。
しかし三発目の銃弾は果たしてクランクだけに向けられた物だったのだろうか。安直なヒューマニズムを盲信し、三日月達の置かれた火星の実情を知らない(説明されていないから無理もないのだが)我々視聴者へと三発目の銃弾は向けられていたのかもしれない。もしかしたら三日月達は汚い大人にしかなれなかった俺たちを殺してくれるんじゃないだろうか。そんなことをオルフェンズには期待してしまう。{/netabare}
単純に子どもが大人に抗うというのは普遍性のあるテーマだし、どん底から勇気と友情で這い上がるのは燃える話でもある。
生きる糧を求めて戦い続ける少年たちがどこへ向かうのか、これからも楽しみに見守りたい。