どらむろ さんの感想・評価
4.3
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
機動戦士ガンダムに匹敵するリアルロボット金字塔。不朽の名作ですが、冗長故に敷居が高いかも
全50話の、サンライズロボットアニメ。機動戦士ガンダムに比肩する不朽の名作。
「太陽の牙ダグラム」に続き高橋良輔監督が手掛けた代表作にして、リアルロボットの金字塔です。
…間違いなく不朽の名作ではあるのですが。
細かいストーリーの起伏は意外と乏しく、全50話に渡り、ひたすら「キリコ」という男の逃走劇と戦場での生き様を延々と綴っていく感じ。
よって現代的な繊細なストーリー脚本に慣れた視聴者だと、かなり地味で退屈するかも?
名作ではあるのですが、古いロボットアニメに不慣れな人には敷居が高そうです。
細かい話は気にせず、戦場の「むせる」雰囲気を楽しめる人向きかも。
※高橋良輔監督が書き、銀河万丈さんが読み上げる次回予告が最高にむせる!
…本編は敷居高いですが、是非とも予告だけでも見てください!
(検索するとニコニコ動画などにあります。何故名作と称されているか雰囲気ヒシヒシと伝わりますよ!)
※2014年11月1日に亡くなられた、フィアナ役の弥永和子さんのご冥福をお祈りします。
{netabare}『物語』
強くてカッコイイ主役ロボツトが無双!…する普通のロボットアニメと違い、とにかく泥臭いです。
単なる量産兵器に過ぎないボトムズ(最低野郎)をガンガン使い捨て、果てしない闘争に明け暮れる…。
…また「次回予告」がカッコイイのも見逃せない。
センス抜群の名調子な上に、世界観や状況説明が分かり易い。
本編が寡黙な分、次回予告でだいたいのストーリーが分かります。
逆に言うと「本編は淡々と戦っていて、ちょっと分かり辛い上に退屈」かも。
世界観は、銀河系を二大勢力が二分して100年も戦争続けていたようなスケールのでかいSFです。
…普通のお話なら、主人公がどちらかに属して敵勢力と戦うのかな?
と思いきや。
本作はバララントとギルガメス(という二勢力)の戦争すらもバックボーンに過ぎず。
物語は開幕から徹頭徹尾、主人公のキリコ・ビューイーを中心に動いていく。
世界観の巨大さに比して、話はひたすら(一見すると一兵士に過ぎない)キリコの逃走劇なので、意外に地味です。
地味ですが、話の中心は常にキリコ…敵の謎の思惑や巨大な意思すらも、キリコを最重要目標にしていく。
物語の中心に常にキリコあり。その意味で本作は究極の主人公無双系だったり。
そのキリコは寡黙でストイックな男で、ただひたすらに「自分が生き残る事」「自分の運命を狂わせた謎の女の秘密」を求めて、黙々と追手と戦ったり、逃亡し続ける。
キリコの強い意志は終始一貫していて大筋の話はとても分かり易いです。
…でも、1話1話は地味で、かなり冗長に感じるのが難。
延々と先の見えない逃亡と闘争を続ける日々。
一山いくらの量産兵器に過ぎないAT(アーマードトルーパー)スコープドックを次々と乗り捨てたり、ATにすら乗らずに生身で軍隊相手に逃げ回ったり。
ここで細かいストーリーを排しているのが本作の作風でしょうか。
キリコはあまり喋らない。BGMが流れる中を、ただひたすらに黙々と死闘が続く。
…現代的な感覚からするといわゆる「テンポ」は最悪です。冗長過ぎて飽きます。
でも、この戦場の雰囲気こそが「むせる」のです。
ボトムズという作品を楽しめるか否かは、この雰囲気自体を受け入れられるか否かでしょうか。
…ボトムズを一通り知った後で振り返ると、序盤の「ウド編」(1~13話)も見所十分なのですが。
キリコにとって得難い仲間達との出逢い、共に逃げ回る共闘関係。
敵の謎の思惑とキリコのアイディンティテイーを求める渇望の意味…
後から振り返るとよく分かります。
…ただ、初見だとここら辺は淡々と戦闘繰り返すのみ、13話が長いです。
正直飽きる。でも、粘り強く観ていくと…段々とむせる雰囲気にハマります。
14~28話の「クメン編」が一番面白かったです。
ベトナム?っぽい惑星の戦場で政府軍の傭兵として反政府ゲリラと戦うキリコ。
…特に大きな目的も無く、ただ「戦場に居たい」「自分の居場所」というのがキリコらしい。
傭兵仲間との男くさい友情や、無能だが何か憎めない上司カン・ユー大尉、敵将のカンジェルマン王子、もう一人のPS(パーフェクトソルジャー)イプシロンとの因縁など、見所多し。
キリコ以上に戦友のポタリアの方がクメン編の主人公っぽい。
ポタリアとカンジェルマン、臣下と王子でありながら盟友同士だった二人の理想と決別のドラマは熱かった。
…ここでキリコとフィアナの愛のドラマも加速していく。
ジャングルでのAT戦も泥臭い魅力あり目が離せない。
バトルも全編通してクメン編が一番好きです。
この後は、謎めいた巨大な意思に流されるままにキリコとフィアナが銀河を彷徨う…。
見所は二人の愛が深まっていくロマンスでしょうか。
宇宙戦闘も砂漠戦も中々派手ではあるのですか、ATはジャングル戦の方が好きです。
何故か追われ続けるキリコ、彼自身に重大な秘密が…
終盤に向けて核心に迫る展開は面白いのですが、それまで些か冗長にも感じました。
終盤クライマックスのまさかのどんでん返しは驚愕。
あくまでも自分自身を見失う事無く、何者にも…神にさえも屈しなかったキリコ・ビューイーの物語でした。
キリコとフィアナのラブコメ…以上の深いロマンスも魅力。
物語評価はちょっと迷うところ。きちんと真価を知れば不朽の名作で間違いないのですが、全50話は冗長(2度の総集編含む)で飽きやすいのが難でした。
…正直な所、私には凄く合っている…とまではいかなかったです。
(聖戦士ダンバインのファン。ファンタジー好き)
この「むせる」雰囲気を気に入るか否か、かなり人を選ぶのでは。
続編の諸作品も含めて、ボトムズの雰囲気とキリコのドラマは続いていくので、過去編の「ペールゼンファイルズ」等を視聴していくと、更に世界観にハマれる…かも。
『作画』
全体的にはあまり綺麗とは言い難いかも。バトルも意外と地味。
でも、AT(アーマードトルーパー)の量産兵器としての泥臭い戦場の雰囲気は素晴らしいです。
量産メカ・スコープドックかっこいい!
キャラ作画は、キリコかなりイケメンだと思う。
フィアナは美人だが、現代的な萌えるタイプではない。ココナの方が可愛い。
戦闘中はキリコも敵も同じ量産機でスコープ装着している為、敵味方が分かり辛いのが難。
『声優』
キリコは郷田ほづみさんの代表役、地味ですが、キリコといえば郷田ほづみさん!
淡々とストイックに、でもイケボです。
…私的に郷田ほづみさんといえば「金色のガッシュ!」のサンビームさんのイメージ強かったです。
フィアナの弥永和子さんの悲憤の美女なヒロイン役も素晴らしい。
キリコへの愛が伝わる演技は心に響きました。
…2014年11月1日に亡くなられたそうです。
ご冥福をお祈りします。
ゴウトの富田耕生さん、バニラの千葉繁さん、ココナの川浪葉子さんも存在感抜群でした。
ロッチナ大尉の銀河万丈さんは、予告編も担当。
あの名文章の読み上げ…最高にむせます!
無能上官カン・ユー大尉は広瀬正志さん。ガンダムでは超有能なランバ・ラル中尉だったのに…でもヒステリックな小物軍人も良い感じでした。
ちなみに「ガンダムビルドファイターズ」のラルさんの人。
…私的に絶対外せないのが、速水奨さんです!
クメン編の主人公ともいえるポタリアかっこいい、声が若いです。
実はポタリア以外でも、序盤のモブ兵士として登場、グワーッ!とやられまくってますw
他多数の豪華声優。
『音楽』
ボトムズは音楽が素晴らしいです。音楽面で文句無し。
乾裕樹さんが手掛けた代表作であり、戦場のBGMが熱い。
淡々と泥臭く戦う地味な展開続いても、音楽の力で理屈抜きに盛り上がれる。
主題歌「炎のさだめ」も、キリコという男の生き様綴った完璧な主題歌。
当時としては歌詞に主役メカ入れてないのに、歌詞のセンスはズハ抜けてます。
ED「いつもあなたが」も、キリコとフィアナのラブロマンスという本作一環したテーマ貫いた名曲。
『キャラ』
キリコ・ビューイーは徹頭徹尾、物語の渦中にいた。
キリコ本人が不屈の意思で突き進みつつ、話のスケールでかくなっても、常にキリコを中心に世界が回る。
キリコこそは、究極の主人公といえるのでは。
寡黙でストイックな戦士だが、決して人情味が無いワケではない辺りも魅力高いです。
一見地味。けれど、ロボットアニメ史上でも名主人公の一人に違いない。
ヒロイン・フィアナは自己のアイディンティティーに苦しみながらも、キリコに惹かれていく過程で、次第に魅力発揮。
初期のミステリアス、中盤の救われヒロインと来て、終盤のベストパートナーとなる。
キリコが恋愛面で不器用な分、フィアナの存在は大きかった。
ウドの街で知り合った腐れ縁トリオもしぶとく話に食い込んできて、キリコにとっては数少ない気の置けない仲間として安心感あり。
ココナは80年代っぽいお転婆娘で今の感覚だとウザいかもですが、これで中々可愛いです。
クメン編の傭兵仲間が気の良い奴らで好きでした。
ポタリアは高潔な男、クメン以降出番ないのが残念。
カン・ユー大尉はとことん無能上官で困った男なんですが…これが何故か妙に憎めないんですよねぇ。
敵はあまり大物出てこないのですが、常にキリコの存在に振り回されている感じはむしろ本作らしいのかも。
ロッチナ大尉も、ある意味裏の主人公だったのかも。
ラスボスは意外なスケールのでかさでした。{/netabare}