退会済のユーザー さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
革新的な傑作
ライトな層にとってはかなり勇気がいるタイトルと絵柄。
だがその中身は高いレベルで纏まっている傑作アニメ。
構成がズバ抜けて優れており、伏線→バトル→明かされる秘密→…と
各キャラにスポットを当てつつまるでローテーションのように次々見所がやってくる。
脚本も優秀で、ラストの賛否はともかく全体として良く出来ている。
また、キャラデザは好みではないがその他のデザインと演出も秀逸。
魔女はそれぞれテーマを持っており、それ単体で一つの世界を構築している。
パッケージからは想像も出来ないほど激しい戦いが繰り広げられるバトルも見物。
挿入歌やOP・EDテーマも素晴らしい。
特にEDテーマはこの作品の為にあると言っても過言ではない程のマッチぶり。
もし冒頭に述べたような理由で躊躇している人がいるなら迷う必要はない。
{netabare}
本作の面白さの一つとして魔法少女のお約束にメスを入れた事が挙げられる。
素質に恵まれている主人公、お供のかわいいマスコット。
魔法が使えるから戦っても大丈夫と言う不文律。
そこに大した意味は無いし、誰も説明を求めない。聞くだけ無駄なのだから。
基本的に魔法が使えるから戦っても大丈夫と言う考えには本体が生身の人間である事は一切考慮されていない。
普通に考えれば身体能力が向上していても魔法の加護を貫かれれば建築物すら破壊する攻撃に耐えられる訳がない。
そこに目を付けたのが今作。キュウべえの言葉を借りれば
「ただの人間と同じ、壊れやすい身体のままで、魔女と戦ってくれなんて、とてもお願い出来ないよ」
「君たち魔法少女にとって、元の身体なんていうのは、外付けのハードウェアでしかないんだ」
「君たちの本体としての魂には、魔力をより効率よく運用できる、コンパクトで、安全な姿が与えられているんだ」
「心臓が破れても、ありったけの血を抜かれても、その身体は魔力で修理すれば、すぐまた動くようになる」
「ソウルジェムさえ砕かれない限り、君たちは無敵だよ」
「弱点だらけの人体よりも、余程戦いでは有利じゃないか」
事前に説明しないあたり完全に詐欺の手口だが言っている事は至極まっとう。
自分達に自衛する力が無いからと言って年端も行かない少女達を戦いに巻き込む愛玩マスコット共は
そんな事考えもしなかったろうが。
(まあ弱点のソウルジェムが剥き出しで本人達もその事実を知らないのはどうなんだと思わないでもないが)
この設定を作中で人間らしさや恋愛観に結び付けるあたりはこの作品の抜け目なさを物語っている。
さて、そのお約束のように出てくるマスコット達であるが性質上普通は味方である。
魔法少女の勧誘役だったり探索や戦闘のサポートを行う事が多く、敵対勢力であるはずがない。
今作のマスコットであるキュウべえも例に漏れずその勧誘役であるが
敵対勢力である魔女は魔法少女の成れの果てである。
つまりマスコット=黒幕、この図式を誰が想像できただろうか? 酷いマッチポンプもあったものである。
お約束の盲点、その極地がここにある。
最後に主人公の恵まれた素質。
本来、素質に恵まれているからこそ主人公足り得るのであって、素質が恵まれている事に大した理由は無い。
不思議パワーの素質に理由も糞もないのだから説明を求める方がどうかしている。
だがそれすらも作品のキーにしてしまったのが今作。
ほむらは大切な友人であるまどかを救う為に魔法少女となるが、失敗する度に時間を巻き戻し平行世界を渡り歩く。
そして生み出された世界の因果は中心であるまどかに束ねられその量を増していく。
魔法少女の素質は当人の背負う因果の量によって決まる為
束ねられた因果を背負ったまどかは途方もない素質を持つに至る。
主人公の恵まれた素質に理由を付けた非常に新しい試み。
ただ、理由を付ければ面白くなるかと言うとNOである。
そうなるに至る過程でドラマがなければそんな描写を見ても楽しい道理がない。
今作では、ほむらにとって如何にまどかが大切な存在か描かれている。
病弱で何をしても人並以下、友人もいないほむらにとって命の恩人であり憧れ、そして数少ない友人。
そんな彼女がまどかに訪れる悲劇を回避する為に成長していく姿は視聴者の胸を打った事だろう。
時間を操る能力ゆえに特別な攻撃方法を持たないのは成長を伺う上で非常に効果的だったように思う。
主人公に恵まれた素質がある理由を付けた上でその過程に見せ場を作ったのは流石としか言いようがない。
本作の魅力を語る上で良く語られるのがその『ギャップ』である。
しかしその裏にはお約束をぶち破りそこにドラマを埋め込んだ手腕がある。
ギャップだけで面白いアニメにならないのは他のアニメで証明済み(何とは言わないが…)
魔法少女まどか☆マギカは間違いなく革新的な傑作である。
{/netabare}