「STEINS;GATE [シュタインズ・ゲート](TVアニメ動画)」

総合得点
92.6
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ネタバレ

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 5.0 作画 : 3.5 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

タイムトラベル作品の傑作

序盤を乗り切れるか否かで評価が180°変わるだろう作品。
登場人物のアクが強く、序盤の展開がだれ気味なため脱落した人もいると思う。
しかしそこを乗り越えた所にこそ本作の魅力が詰まっている。
怒涛の展開に回収されていく伏線、そして感動のラスト。
気付いた時には訳の分からん厨二病患者を応援している自分がいた。
タイムトラベルで生じる矛盾をスマートに解決した設定と
作品との親和性が高いOP・EDテーマも見所。

{netabare}
シュタインズゲートはタイムトラベル作品の集大成(悪く言えばパクリ)
そういう評価をしばしば耳にするがそれは間違いだと思う。
過去の名作の要素が加味さているのは疑いようもない事実だが
独自の理論を展開し、破綻なく紐づけた事実を見失っている。
その根拠を以下に示したい。

①3つのタイムトラベルを同時に扱った
 すなわち、Dメール(文章データのタイムトラベル)
 タイムリープ(記憶のタイムトラベル)
 タイムマシーン(物理的タイムトラベル)の3つである。
 これは超能力や超常現象に寄らず、科学的アプローチをした作品の強みを活かした形。
 そして、過去のタイムトラベル作品において異なる方法のタイムトラベルを同時に採用した例は(たぶん)ない。

②タイムトラベル理論の闇鍋でありながら料理として完成している
 Dメールは本作独自のアプローチで、主にバタフライエフェクト(同名映画が有名)がクローズアップされている。
 タイムリープ(時を駆ける少女が有名)は主に収束(映画タイムマシンと同様)がクローズアップされている。
 一見相反するタイムトラベル理論でありながらアプローチ毎に焦点をずらす事によって見事視聴者の目を欺いている。
 しかも、後述する2つの独自の理論で矛盾を回避する離れ業をやってのけた。

③世界線
 本作独自の理論。過去から未来までの出来事に沿って形を変える。
 世界線ごとに独立して考えないと説明が面倒なため誤解されがちだが
 あくまで世界線は1本であり同時に複数存在しない。
 可能性世界線はあくまで世界線が変える可能性のある形の候補にすぎない。

 基本的に世界が1つという発想はタイムトラベルを扱う上で因果の崩壊を招く。
 なぜなら過去を変えた結果、過去を変える自分の存在が消えるという最大の矛盾を孕むからだ。
 それを簡単に回避するのが平行世界(パラレルワールド)である。
 世界が分裂するのだから何も矛盾しない。
 しかし平行世界は逃げの設定とも言える。因果をそれぞれ別世界へ丸投げである。
 世界が分裂するというのも正直ピンと来ないし、特定の世界で幸せになっても元の世界は報われないまま存在する。

 どちらも一長一短に思われるが、それを克服したのが世界線である。
 改変された事実を元に過去から未来まで辻褄を合わせるように世界が形を変える(再構成する)事で矛盾を無くす。
 いつから過去が決まったものだと錯覚していた?を地で行く逆転の発想。
 改変できるんだから世界の形が変わっても良いじゃない。悔しい…でも納得しちゃう。 

④アトラクタフィールド(収束・歴史の修正力の発展)
 本作独自の理論。事象は収束するがその収束幅を超えた時、世界線は大きく形を変える。
 この理論と世界線の構造によってバタフライエフェクトと収束の共存を可能にしている。
 世界線は一つでありながら派生作品が多く生み出されている背景でもある。
 また、未来に跨るアトラクタフィールドの原因となる事象には同様に跨るアトラクタフィールドが働く。
 つまり、未来の結果を変えない限り原因もまた変わらず因果は崩れないと言う理屈が働く(因果律)
 これは繰り返しの果てに終ぞ恋人が死んでしまう理由を見出せなかった映画タイムマシンや
 目に見える障害を時を繰り返す事で克服したひぐらしと一線を画す設定である。

⑤リーディング・シュタイナー
 世界線が変動しても記憶が再構成されずそのまま維持される岡部の特殊能力。
 世界から放置されている様は正に孤独の観測者。
 副作用として世界線が変動した際、その世界線で過去行っていたはずの一切の記憶がない。当然思い出す事もない。

 世界線は形を取った際、過去から未来までこれ以上の世界線変動はない(終わった)事になっている。
 世界線変動があればそれはもう違う世界線なのだから当然であるが。絶対の均衡と言うヤツである。
 その絶対の均衡を破るのが岡部、孤独の観測者。
 連続した記憶を持たないが故に世界線変動が終わったそばから予定と違う行動を取り始め
 あまつさえ世界線を変動させてしまう始末。
 もぉ~、なんで~?とか言いながらカチャカチャ世界を組み替える世界ちゃん(仮)が思い浮かぶ。
 世界線の発想が先かリーディング・シュタイナーの発想が先かは分からないが非常におもしろい設定であると思う。


ラストではこれらの理論を持ってアトラクタフィールドの呪縛を破り、世界を騙し、大団円を迎える。
世界が1つだからこそ無かった事にしてはいけない過去、絶望から生まれた未来、原因を縛る結果。
うまく他作品のタイムトラベル理論を取り混ぜつつオリジナルな要素が組み込まれている事が分かると思う。

本作品はタイムトラベル理論の集大成を『昇華』した作品である。


*シュタインズゲートには劇場版を含め多くの派生作品がありますが、一部作品は上記の設定と食い違いっております。
 あくまで本編は本編としてお願いします。
{/netabare}

投稿 : 2015/10/03
閲覧 : 341

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