どらむろ さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
勇者チームで魔王打倒…と思いきや勇者同士で「人狼」やるミステリー。極めて贅沢な異色作
ライトノベル原作の剣と魔法のハイファンタジーですが、魔王打倒よりも、勇者同士で犯人探し合う、ミステリー要素の濃い異色の作品でした。
特筆すべきは、原作わずか1巻分を1クール12話かけて繊細に描いた構成にあり。
ファンタジーとミステリーの融合を、最高水準の丁寧さで進行する脚本は素晴らしかったです。
数多い王道ファンタジーアニメから見ると異色すぎる異端作ながら、稀有な力作なのでは。
異端過ぎて万人の評価は得られなかったものの…唯一無二の魅力を感じました。
{netabare}『物語』
南米のアステカ文明っぽい舞台で、魔神(と配下の凶魔)に対して人間側は神に選ばれし「六花の勇者(りっかではなく、ろっか)」が主力、勇者は「聖者」と呼ばれる異能力者たちであった。
主人公アドレットは「地上最強」を名乗っているが勇者で唯一聖者では無く弱いが、不撓不屈の意志とトリッキーな戦術でしぶとく戦っていく。
…アドレット中心に勇者たちが集い、力を合わせて凶魔倒すぞー!
と思いきや!
「11人いる!」や「人狼ゲーム」よろしく偽物の六花の勇者を探り合う疑心暗鬼に陥っていくのだった!
ファンタジーとしては珍しい南米文明モチーフな世界観も何気に魅力でした。
個性的なキャラクター、特に主人公アドレットと、誰も信じず誰からも敵視される孤独な少女フレミーとの、綱渡りな危険な交流は終始緊迫感と僅かなラブコメの波動を感じさせて良い感じ。
アドレットを中心に渦巻く疑心とミステリー…
1場面ごとに丁寧に伏線が張ってあり、推理物としても非常に丁寧でした。
ミステリーとしては現実では無いファンタジー世界のルール用いたトリックが面白い一方で、あまり真面目に推理し辛い面も。
…もっとも、真面目に推理せずに(あー、こいつ怪しくね?たぶんこいつは違いそう?)とかテキトーに流し観ていても、結構楽しめてしまう構成でもあり。
理由は、アドレットを中心にギリギリの心理劇や危険かつトリッキーな戦闘シーンてんこ盛り、飽きさせないです。
推理劇でありながら異能バトル面でも派手な盛り上がりこそ無くても、十分楽しめるのが良い。
本作一番の魅力は、醜い疑心暗鬼の闇では無く、主人公アドレットが終始疑心の闇を払っていく前向きさにあり。
普通ならこういう内ゲバ系作品はあまり気分良くないケース多いのですが…
「人を疑う話ではなく、人を信じるか否かの話なんです
つまり本質的には『十二人の怒れる男』ってわけですよ!」
※けみかけさんのレビューより。まさしく本作の本質を得た一文、完全同意です。
どうしても気分悪くなりがちな内ゲバでありながら終始ポジティブ!
「ライアーゲーム」みたいですね。本質的に「人を信じる強さ」がテーマなんです。
ハラハラする緊張感や紙一重の死闘を繰り返しつつ…「地上最強の無能力者」がいかにして疑心の闇を払うのか!?
全方位から疑われ、吊られる寸前まで追い詰められつつ…次第に信頼を勝ち得ていく流れは痛快!
極めて丁寧な伏線の末、終盤一気呵成に真相が明かされる展開は圧巻かつ爽快でした。
※2014年度の「ノーゲーム・ノーライフ」同様のファンタジーのルールで頭脳戦やる作風。
視聴者はこの世界の法則に不慣れなので、推理物としてはちとズルい気もしますが、それでも見事だと感じさせてくれるのは伏線が巧妙なのでしょう。
…素晴らしいアニメ化作品でありましたが。
あまりに丁寧過ぎて進行が遅く、最終回で唐突に新キャラ、俺たちの戦いはこれからだ!
遺憾ながら2期が望めない中、1クールアニメとしては評価落ちてしまいます。
もっとも、それを覚悟であえて原作序盤を1クールかけた構成は称賛に値します。
非常に面白かったです!
少なくとも原作購読を決意させるくらいには…。
『作画』
地味になりがちな推理劇でありながら、構図や演出が優れていて飽きさせなかった。
南米文明めいた世界観も、スピード感とテクニカルな戦闘シーンも非常に良い。
おそらく2015年夏随一の戦闘作画だったのでは。
バトルが良い事が、全般的に飽きさせずに視聴できた重要な要因です。
キャラデザもチャモやフレミーが中々可愛い。
『声優』
斉藤壮馬さんが地上最強の男アドレットを好演。
単純な最強系ではない難しい役どころだったのでは。
MVPはフレミーの悠木碧さん、陰のある孤独で人間不信な少女を好演されました。
まさに悠木さんハマリ役。一見無感情系に見えて、内から溢れる感情の波がヒシヒシと伝わったです。
日笠陽子さんのヤンデレもコワかった…。
加隈亜衣さんのチャモも非常に可愛らしい。
鈴村健一さんの「にゃ~」良かったです。ベテランらしく食えない男…からの殺気など迫真。
全般に声優陣の熱演が良かったです。
『音楽』
OPは中々雰囲気出ていたのでは。ベスト主題歌かは判断できない。
EDはフレミー(悠木碧さん)バージョンが比較的良かった。
…評価すべきは作中BGM。
ミステリーとしてもファンタジーとしても、BGMの良さが雰囲気をかなり盛り上げていました。
『キャラ』
主人公アドレットのキャラクターがユニークで魅力あり。
地上最強を公言して憚らないクセに異能持たず、作中最弱の男…
だが!「卑劣」なる知識や道具を駆使してのテクニカルな戦い方で、戦力的に上回る他勇者たちを翻弄していく!
どんなピンチでも「笑う」どんなピンチでも諦めない。
「人を信じる事を」絶対諦めないッ!
…最初は口先だけの野郎かと思いきや…彼こそは確かに「地上最強」の勇者ですよ!
※「神撃のバハムート」のファバロの戦い方と少し似ているような。
アドレットの方がまだ性格良いですね。
ヒロインはお姫様のナッシュタニアと嫌われ者のフレミーのダブルヒロイン。
フレミーは特筆すべき可愛さでした。
孤独で誰も信じない、誰からも信じられない。
ラノベにありがちな「ちょろいん」ではなく、アドレットに攻略されても中々デレないデンジャラスガール!
…近年、ここまでチョロくないヒロインが居ただろうか!?
それでも決して諦めず信じ続けたアドレットにデレ始める、これが可愛くないワケが無い!
悠木碧ボイスも相まって名ヒロインでした。
男子ではハンスも良いキャラでした。
「にゃ~」まさか男子に萌えるとは…!賢いキャラは好きです。
この他の聖者も全員申し分なくキャラ立っています。
チャモはかわいいなぁ~。ゴルドフも年下なのにがんばったよ、たぶん。
モーラおばさんだってがんばったよ、たぶん。
犯人も含めて全員が頑張った。大したもんです。
…推理物としては、いかにも怪しそうなキャラや、怪し過ぎて逆に無いか?怪しくなさそうで実は怪しい?とバランス良く、最後の最後まで意表突かれました。
私の予想は……見事にハズれてましたw
(ニコニコ動画では皆がテキトーな予測立まくってたため、結果的に最後まで犯人分からなかった){/netabare}