ムッツリーニ さんの感想・評価
4.2
物語 : 3.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
これからのアニメの形
蒼き鋼のアルペジオやシドニアの騎士と並んで、これからのアニメ制作技術に一つの可能性を示したアニメですね。
フル3DCGアニメといえば、アップルシードやFF7ACなどが既にありますが、あれらはいわば発展途上であり、技術先行であり、3Dであることその物をウリにした物でした。
現在は、アニメーションの表現として3Dをどのように活かすか。いかに2Dと3Dの融合を果たすか。いわば2.5D(そんな言葉ありませんが)の領域を目指しており、この楽園追放はその一つの技術的成果であるとも言えます。
勿論、ただの研究発表であれば5分くらいの動画を作ってYOUTUBEやニコニコにでもアップすれば良いわけですから、作品その物にはあまり関係はないのですが、その映像美たるや「ついにここまで来たか」と膝を打つほど美しくまた素晴らしい物で、これからのアニメの一つの形として期待が膨らみます。
まぁ、今も日々机に向かっておられる原画家さんや動画さんには戦々恐々とする話でしょうが……
さて、物語ははるか未来。人類は肉体を捨ててその精神のみを電脳世界ディーヴァに移し、精神生命体としての栄華を誇っていた。ある日、地球からの不正ハッキングを受けたディーヴァは、捜査官アンジェラ・バルザックに調査を命じる。現在は荒廃した地上へと降りたアンジェラは現地のエージェントであるディンゴと合流し捜査を進める過程で、ディーヴァへとハッキングをしかけた謎の存在、フロンティアセッターと出会う――
まずこの作品を見て目を引くのがアンジェラの尻………ではなく、主だったキャラクター達のありがちですがなかなか巧い対比ですね。ディーヴァという世界のシステムの一部として合理的な考えを信奉するアンジェラ、アナログで有機的な感覚を好むディンゴ、機械として生まれながら人間という物を理解し賛美するフロンティアセッター。それぞれの立場や考えを明確にしつつ、それでいて物語としては否定も肯定もしない。いや、正確にはアナログ賛美寄りではありますが、互いの考えを否定したり受け入れたりして理解し奇妙な友情を育む様子はじんわりと胸に染みる物があります。
物語としてはまぁ、予想通りというかありがちというか、特に真新しさもなくかなり王道ですが、サイバーパンク物としては攻殻機動隊のようなかなり捻った作品が多い中で、至極基本に忠実に進んでいくので安心してみていられます。逆に複雑で重厚なストーリーを好む人には合わない作品でしょう。
気持よく始まり、気持よく終わる。そんな作品です。