「SHIROBAKO(TVアニメ動画)」

総合得点
91.4
感想・評価
3733
棚に入れた
15440
ランキング
34
★★★★★ 4.2 (3733)
物語
4.3
作画
4.2
声優
4.1
音楽
3.9
キャラ
4.2

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ネタバレ

えこてり さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

アニメが好き。アニメを作る人が好き。

だから応援したい。
P.A.WORKSの社長、堀川氏のこの想いに尽きます。

いささか大袈裟な表現になることを承知で、、

この作品は大人の愛情に包まれています。
この点が最大のフィクション、幻想と言えるかもしれませんが。
人間は自分が存在しているひとくくりの世界を保守、そして発展させていかなければという使命感に駆られるものです。
アニメ業界も然り。
制作者側のただならぬ作品愛、先人達への敬意、
そして未来を盛り上げていこうという前向きな気持ちで満ち溢れています。

これらに共感できる方なら必ず満足できる作品です。
私自身も久しぶりに心の底から感動しました。

メインキャラの女の子が判子絵でちょっと・・
「どんどんドーナツ」で引いちゃった方

分かります自分もそうでしたので。
放映当時も最初から評判が良かったわけではなく、
12話以降尻上がりによくなっていきます。BD売り上げもそれに比例してます。

まだ観てない方は是が非でも視聴をお薦めします!


後半は良回が目白押しなのですが、鉄板回は多くの方がレビューしてらっしゃるので、
今回の趣旨に最も叶う回をレビューしたいと思います。


{netabare}
第19話「釣れますか」

宮森の状況は、代わりの演出が見つからなかったり、背景美術を依頼した大倉さんが連絡つかなかったりと、切羽詰まって精神的に追い込まれつつある状態にあります。
また、全作中を通しての彼女の自問である「自分は何を目標にしていくのか」というテーマがあります。

先輩の矢野さんが復帰してお土産にアロマキャンドル。
疲弊した宮森にリラクゼーションを促します。
そしてレア演出家を無理矢理引っ張ってきて問題を一つ解決、宮森を支援します。矢野さん優しい有能。

Bパートでは丸川社長が倉庫に用事があるからと宮森を誘います。
ただの用事だけなら佐藤さんに運転をお願いすればいいので、
明らかに疲れている宮森を助けようとしています。

この倉庫が元武蔵野動画というアニメ制作会社でした。
そこで宮森は大好きなアンデスチャッキーのセル画を見つけ、
そのまま丸川社長の回想シーンに入ります。

そこには若かりし制作デスクの丸川
「孤高の職人を気取り(12話)そうな」杉江と
当時から的確なアドバイスをしていたその奥様。
「えくそだす」の納品前に小諸(長野県)からデータを届けてくれた百瀬とその奥様。

駆け出しの美術の大倉(いま行方不明で問題の人)が言う。
「旭川で吹雪で死にそうになった」


ここまではよくある回想モードだけどこの後が素晴らしい。

天候や光の加減が状況・心理を表す手法はよく使われる。
大倉の書いた暗く重々しい吹雪のシーンから今度はアンデスチャッキーの舞台に時間軸が移動。
吹雪の中、洞窟で暖を取る動物の面々は武蔵野動画メンバーとリンクしている。
吹雪は武蔵野動画の経営状況を表していて、どうも芳しくないようだ。
倒産を前にして、武蔵野のメンバーが言う。

百瀬:「田舎でも(アニメの)仕事ができればいいんだけどなぁ」
百瀬夫人:「諦めなければきっとできるわよ」
(PA堀川社長は既にこれを実現されてますね)
大倉:観た人の魂を揺さぶるような背景にしたい
丸川:「今作ってるのを越えるアニメを作って見せます!」
杉江夫妻:どこまでも付き合ってやるよと

みんなが前向きに考えたところで吹雪が止んだと
情けない顔をしたカエルのベソベソが知らせに駆け上がってくるのです。

宮森がチャッキーのフィルムを観て涙を流しているのは、
大好きだったアニメを観られたからという事だけではなく
過去から現在へ連綿と受け継がれる色々な事に感動したのでしょう。
宮森が観たのは我々視聴者が観たそれとは違うただのチャッキーのはずですが
何事かを感じ取る事ができたんだと思います。

このシーンにはもう一つの視点があります。
カエルのベソベソですが、このキャラはCVが宮森と同じ木村珠莉さんなので、二人はリンクしています。

武蔵野動画の面々が前向きに決意したとき、宮森の悩みの一つである
「自分は何を目標にしていくのか」という事の答えが少し見えてきたことを
吹雪が晴れ上がりベソベソが駆け上がっていく事で表現しています。

これらが全て繋がり、宮森がチャッキーを観終えて泣いているシーンでは、
こちらまで釣られて感動してしまうのです。23話と似てますね。

帰りの車の中で宮森は「あの頃を越えるアニメを、絶対に作ってみせますから!」
と昔の丸川と同じ事を言うのである。社長、優しすぎるだろ・・


残るは背景を依頼したまま行方不明の大倉さん。
吹雪のときと同じ旭川に取材旅行に行ってたのでした。

新人が大物に仕事を依頼して最初嫌がられるも、社長の古い知り合いで
最後はきっちり仕上げてくるなんてベタな話なのに、回想を他の話と合わせて上手く演出している為に何故か感動してしまう。

背景をみた宮森が「これがありあの故郷なんですね」
と涙ぐむのがまたいい。ありあも宮森と同じような心の問題を抱えているメタファーだからだ。

そして19話の引きは、SHIROBAKOお得意の無音完成品カット、
ありあの故郷、美しい廃墟の村。もう感無量である。


本作品は、このように幾重にも敷かれた多元的な構造がリンクしながら、一つの目的地、例えば「宮森頑張れ」という、たったそれだけの事に収束していき、それが何とも言えない感動を生む源になっているように思う。
23話もその最たる回だし、同じP.A.WORKSの作品「TARI TARI」の6話とかもそうなんですが、ベタで結果がほぼ分かっているのに、
こうも人を感動させるのはどうしてなのか・・。
クライマックスまでの話の運び方が本当に素晴らしいと感嘆せざるをえない。


おまけとして19話は作中唯一の特殊EDとなっている。
なんと「アンデスチャッキーのOP」なのだ。
12話で管野氏が言ってた杉江三日伝説だ。
ED後半では管野氏が熱く語ってた、ワンカットで坂道を転げ落ち、平原を仲間の動物たちが一斉に走り出す俯瞰のシーンもきっちり収録されている!!

EDのクレジットをよくみると、背景に「小倉宏昌」とある。
この方は美術背景の大倉さんの元ネタとなった方で、実際にこの回に参加しておられたようだ。なんという粋な計らいだろうか。


最終話「遠すぎた納品」

23話をあのような締め方をしたくせに予告がこのタイトルで一枚絵とか
洒落っ気を忘れないスタッフに乾杯。

最終回らしく大団円を迎えるわけですが、やはり重要なのは打ち上げでの宮森の挨拶でしょう。
PA堀川社長、並びにスタッフの方々がこの作品に込めた想いを、
主人公たる宮森が代弁します。
アニメを観る人、作る人、関わる全ての人々へ向けた暖かいメッセージのように思えます。

それらが根底にあったからこそ、本来作りづらいであろう自らの業界アニメという物を成功させることができたんだと思います。
そういう意味では比類無き作品になるのではないでしょうか。
私の中でも、最高のアニメーション作品になりました。


p.s. SHIROBAKO観ながら飲むビールは最高だぜ
{/netabare}

投稿 : 2016/02/01
閲覧 : 292
サンキュー:

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