「響け! ユーフォニアム(TVアニメ動画)」

総合得点
91.1
感想・評価
3141
棚に入れた
13950
ランキング
42
★★★★★ 4.2 (3141)
物語
4.1
作画
4.4
声優
4.1
音楽
4.3
キャラ
4.1

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ネタバレ

kurosuke40 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

タイトルなし

論点だけを備忘録的に
色々とありすぎてまとめる気力がない。

①特徴的な点は、冷めている久美子がユーフォを始めて数年経ってから初めて熱を持ったこと。他のスポ根みたいに幼少の頃の熱い気持ちがあった、わけではなく、この前提が多くの人にとって現実的なところから始まっている。

②個人的に滅茶苦茶面白かったのは、麗奈と明日香先輩の対比。弱肉強食の世界に生きたい麗奈と本当に弱肉強食の世界に生きている明日香先輩の違い。麗奈はニーチェで、明日香先輩はフォン・ノイマンやな。8話終わったあとにこの構造が見えたとき驚いた。

③強き者が全てみたいな価値観を押し付けていくと、ああいう強豪校でもない組織は瓦解していくということ。先生は強き者の論理の人だったけど、組織が瓦解せずに保てたのは、部長たちなどの助け合いの弱き者の論理のおかげであるという、ある意味皮肉でもあり、だが、人の組織として重要な点を見れた気がする。

④先生は上手かった。言質を取って発破をかけ、重要なところは雰囲気作りも上手い。途中、久美子のモノローグで「やってみると案外出来るもんだ」みたいな言葉が出たが、そういう経験をさせるには、先生みたいに生徒に「やらせてみる」必要があるわけで。全てを肯定するわけじゃないが、良い先生だ

⑤後読感が悪いのは、久美子が暴走したまま終わっているからだと思う。『耳をすませば』で言えば、小説書きなぐっているところで終わってしまった、みたいな。個人的には良くない状態なんだよね。1クールはこの内容の濃さで短すぎた。

元の小説が素晴らしかったのか、京アニの脚本化が素晴らしかったのか。
原作を読むしか無い。

追記:小説の1巻を読んで
{netabare}
小説は場の「空気」が中心で、アニメは麗奈の「矜持」や「熱意」が中心やね。

大筋は同じだけど、微妙にアニメと久美子の立ち位置が違う。
アニメは冷めている感じだったけど、小説は監獄にとらわれている普通の子って感じ。
まず序盤の、久美子の「本気で全国行けると思っていたの?」がどういう心境で発せられたかが違う。
小説はどっちかというと自分の正当性を保つために(ある意味監獄でのルールに従ってて正しいんだけど)何も考えず心無く発せられたが、
アニメは悟りの境地っぽい心境で言っている。諦念。冷めている。
また小説の久美子は初対面の葉月に「あんた友達いないの?」みたいなことを言うような(言えるような)子ではない。
アニメの「冷めていて、悟った風にずばずばと言ってしまうことがある」久美子像は麗奈による思い込みっぽくて、
小説は等身大の久美子って感じだけど、アニメは麗奈から見た久美子って感じかね。
小説からアニメ化する際に、冷めた久美子として物語が再構成されている。

アニメのオリジナル要素として、
・過去の"麗奈"への己の言動に捕らわれつづける久美子(目標を決めるときに手をあげれない)
・オーディション時に"麗奈"を思い出して覚悟を決める久美子(嫁カットイン)
・一部のパートをあなたは吹くなと言われて、中学の"麗奈"と同じ心境に至って悔しがる久美子(走らずにはいられない)
などがあり、小説と比べて麗奈が中心にいるように見える。

小説では久美子は滝先生による空気には当てられたが、麗奈の熱には当てられていない。眩しい止まり。
一方で、アニメでは麗奈は久美子の心の下支えになっている。
小説では久美子を後押しするものは、演奏中に感じる心地良さが中心であったが、
アニメでは(特に終盤では)、麗奈という生き方に共感し、追随せざるを得ないという衝動が中心になっている。(私的だが、やはり後者は危うい)

またアニメでは久美子もまた麗奈のメンター役にすっぽりと収まってたけど、小説にはそれがなくて、麗奈が一人で戦っている感がある。
小説では麗奈の心の奥深くは久美子の地の文で若干触れられるだけだが、
アニメでは「嫌われたらどうしよう」まで麗奈の口から言わせ、麗奈という生き方がどのようなものかを示すことに成功している。
麗奈は公平とかの価値観の価値もちゃんと認めていて、それでも「特別になりたい」という思いから心を殺している子で、
だからこそ、弱き者の論理に当てられたときに彼女は(ちゃんと認めているから)「うざい」と吠える。
明日香先輩のように「どうでもいい」にまでならない。それがわかりやすくアニメで示されている。
そして、そこに後押ししてくれる(後押しすることができる)メンターがさえいれば、麗奈は小説のように顔を強張らすことなく、
真っすぐに生きていけることまでアニメでは示している。
アニメ化による物語の再構成は麗奈のために行われたと言って過言はないんじゃない?

アニメ化なり、別メディアに再構成する際、全く同じテーマにしなければいけないわけではない。
ユーフォのアニメ化は、小説を元にした、麗奈を中心としたユーフォに化けている。
小説の中にあるいくつかの教訓のうち、京アニは麗奈を選んだ。
京アニは、麗奈が、麗奈の生き方が大好きなんだろうな。メンターという色までつけてあげて。
個人的にはユーフォで一番人生の折り合いの付け方がいろいろと上手いのは緑ちゃんな気がするけどね。


ただアニメ化で若干失敗しているのは、久美子の独白だと思う。
「等身大で、麗奈が心の支えになっていない」小説の久美子の独白をそのまま持って来ている。
アニメの久美子の独白には違和感があって、なぜか感情移入できなかったのはそれが理由な気がする。
確かに久美子の心境は小説とアニメで共通する部分はあるけど、彼女を後押しするものが全然違うから。
ソロの再オーディションのとき、小説では久美子はちゃんと音を聞いて麗奈を選んでいる。
一方でアニメは、音よりも麗奈の生き方に久美子は拍手している。
この違いが独白に反映されていないからだろう。


あと小説を読んで気付いたことは明日香先輩は、いろいろと超越した人だけど、
彼女もまた「超越している自分」という一貫性に捕らわれて、香織を素直に推せないってのは発見だったなー。
私はアニメでそこまで見抜けなかった。
言われてみれば当たり前なのど、明日香先輩も人なんだなぁ。

完全に蛇足だけど、ユーフォを読んだ後は、プラトンによる民主主義の批判を思い出す。私にも適切な指導者や場が過去にあったならば、と思ってしまう。

{/netabare}

投稿 : 2016/02/21
閲覧 : 342
サンキュー:

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