にゃっき♪ さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
time behavior in a blind alley
洋画 Butterfly Effect (2004)も霞ませる時間遡行者、暁美ほむら。10話で彼女の真実が語られたときの衝撃は忘れられません。
この物語の真の主人公は暁美ほむらだったように思います。
最初のほむらにとって、鹿目まどかは初めての友人です。最強の魔女であるワルプルギスの夜に倒されるまで、ずっと自分を守ってくれたまどかを逆に守りたくて、彼女は魔法少女になる選択をしました。
時を遡った彼女はまどかたちと共に戦いますが、目の前で魔女に変わるまどかを見て、魔法少女が絶望をため込み魔女になる運命を知ってしまうのです。
何度も同じ時間を繰り返すなかで彼女は何度もまどかたちと出会い、何度も辛い目にあいながらも、強く変貌していきます。
美樹さやかには真実を話しても信じてもらえず、仲間割れさせるのが目的ではないかと疑われた事もありました。
魔女となった美樹さやかを目にして、魔法少女の運命を受け止めきれず、魔法少女の仲間たちが魔女になる前にメンバーと共に死ぬしかないと考えた巴マミには心中の道連れにされそうにもなりました。
そして、最強の魔女と呼ばれるワルプルギスの夜を一撃で倒し、それ以上に恐ろしい魔女に変わってしまう鹿目まどかを目にして、いっしょにワルプルギスの夜を倒しても何の解決にもならない事も知ってしまいました。
まどかが魔法少女になれば、いつか彼女に絶望が訪れます。まどかの絶望を阻止する、ただそれだけのために、自分ひとりでワルプルギスの夜を倒し、自分自身が魔女化する運命を受け入れて、時の迷路を彷徨い戦い続ける暁美ほむらの姿は、涙なしには見てはいられません。
ほむらの最初の登場でキュゥべえをつけ狙う敵のように見えた彼女を思うと、制作側にとことん騙されましたが、騙してくれた事を本当に感謝しています。
今までは髪の色でしかキャラを区別できないような作品は、作画力の怠慢ぐらいで片付けていて、まともに見ようともしなかった事を反省させられました。
魔女の結界内のアートは秀逸でアニメの底力を見せられた気がしました。着地点は話があまりに大袈裟ですが、気にならないほど些細なことに思えてしまいます。
全貌を知らずに吹き替えに挑んだ声優さん自身の心情が聞ける、セル特典のコメンタリーも興味深く、主人公が最終回まで魔法少女にならない事など、先入観を片っ端から裏切ってくれる素晴らしい作品だと思います。
最後にちょっと妄想です。
すべての魔女がもともとは魔法少女から生まれたと考えると、マミたち魔法少女の前に次々と現れた魔女たちは、もともとはどんな魔法少女だったのでしょう。
魔女が出現する直前に変身前の魔法少女が存在していない事から、時間を超えて過去や未来から来たことも考えられますし、ほむらが別の時間軸からやって来たように他の平行世界からやってきたのかもしれません。
ただ美樹さやかの魔女化した結界が上条恭介への思いを想起させる音楽世界だった事や、ほむらのループのなかで最強のワルプルギスの夜を倒したまどかがさらに恐ろしい魔女となった事を考えると、魔法少女になった時の望みや魔法少女の時の強さとの関連は間違いないでしょう。
そこでワルプルギスの夜も、もともとは魔法少女だったのかについて思い及んだ時に、飛んでもない事が思い浮かんでしまいました。
歴史の中で語り継がれ、ひっくり返った歯車のような姿。
暁美ほむらです。
別の時間軸で絶望のなかで魔女化したほむらが時を越え平行世界を跨いでやってきたのではないでしょうか。
まだまだ謎の多い作品であり、新作の映画版の公開が本当に楽しみです。