けみかけ さんの感想・評価
4.5
物語 : 3.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
時にはクサイ映画を観て想い耽る日があってもいいんじゃないか、そして映画音楽のパレードに浸れ、ミュージカルに奇跡はツキモノだからな
長井龍雪監督、岡田磨里脚本、田中将賀キャラデの『あの花』チームが贈る完全新作長篇映画
オリジナルアニメ映画なんて企画し辛い世の中ですが、“『あの花』チームが秩父を舞台にする”というだけで1本映画が作れてしまうのだから大したものですホント
幼少の頃にお喋りだったあまり、家庭崩壊のキッカケを作ってしまいそれ以来言葉を“呪い”で封印された少女、成瀬順
秋空のある日、学校で地域ふれあい交流会の出し物を企画する実行委員に指名されてしまい辞退を願っていた
同じく実行委員に指名されたクラスメイトの坂上拓実もまた、辞退を申し出るとこだった
が、普段まったく喋らない成瀬が思いの丈を言わんとする姿に心動かされ、渋々仕事を引き受ける
その逆に成瀬は拓実の音楽の才能の片鱗を見て一目惚れ、交流会の演目がミュージカルになるということにも興味を持ち、実行委員に参賀する
さらに批判的な態度のまま実行委員にされた故障中のエースピッチャー田崎大樹と、まとめ役の優等生として同じく実行委員に指名されたが坂上や田崎に意味深な距離を置く仁藤菜月が加わる
一見してまったく釣り合いの取れない問題だらけの4人組だが、徐々にミュージカルの魅力に気付き始め、クラスメイト達を先導していくのですが・・・
言葉に出来ないことも、歌に載せてなら届けられる
ってことでミュージカル映画です
クライマックスのミュージカルで流れる歌は誰もが聞き覚えのある数々の映画音楽やクラシックから名曲を拝借しつつアレンジしたものです
ベートーベンの悲愴
Over The Rainbow
Around The World
Swanee
Summertime
ダローガイ・ドリーンナィユ
Greensleeves
Arabesque
青春映画云々というより、これだけの名曲の数々が流れまくるというだけでも観る価値あります
劇伴はクラムボンのミトと横山克が手掛け、途中の挿入歌はコトリンゴが歌ってます
おまけ程度にGalileo Galileiが使われていたりと『あの花』と繋がってますよ感もアピール
で、内容の方は爽やかな音楽とは裏腹にマリー節炸裂しまくりのドロドロ青春群像劇
シリアスな家庭環境に追い込まれていく子供達
三角、さらに四角関係へと絡んでいく恋愛模様
内なる自分との葛藤
ミュージカル映画と言いましたが、最後に待ち構えているのはマリーらしい毒を吐き続ける会話劇
ドロドロした内容の割りにミュージカルの内容を順が語る場面では絵本的な映像が流れたり、順がLINEで会話したりする場面でメッセージがポップアップしたりと演出面でも飽きさせません
ただ、これは長井監督作品全般に言えることですが終盤になんでもかんでも詰め込みすぎてるような・・・『スィングガールズ』とか『リンダリンダリンダ』とか、比較対象になりそうな映画の類と比べてしまうとスカッとした終わり方では無いのは賛否が別れそうなところ
メインを務めた4人の声優の演技は本当に素晴らしく、水瀬いのりの息遣いとそれに加えて丁寧な芝居作画で描かれる順はとても愛らしい
でもオイラのお気に入りは田崎くんですね!
細谷佳正が低~い声で演じる不器用だけど根は真面目な田崎くん
それがまたかっけーんすよw
てかメインの4人のキャラデはまんま4人の声優の容姿をモデルにしてますよねw(細谷の頭が坊主という意味ではない)
良くも悪くも『あの花』チームらしい映画になったと思います
ファンの期待に応えつつ、映画音楽のオンパレードは少し監督の趣味に走り過ぎたのかなぁ、複雑なアレンジとかいらなかったんじゃねぇ・・・とも感じつつ、それすらも楽しめたのでまずまずといった感想
『あの花』もそうなんですけど、やりたいこと全部押し込めすぎなんですよね・・・ヴィジョンが無いというか、ブレてるというか
それでも最後まで楽しませよう、って演出の妙技は光ってるんですけど・・・これも『あの花』みたいにディレクターズカット版出るんだろうか;
アニメーションとして観ればかなりの傑作ですが、単に青春映画として観れば少し情報量が多過ぎ
なんかごめんなさい;
結局オイラは岡田麿里が書いた『TARITARI』が観たかっただけなんです
最後に主題歌が乃木坂って聞いて【絶望】してたんですが・・・実際のとこクサイ内容の映画に対してクサイ歌詞の歌が思いの外マッチしてたんで、意外にも清々しいエンドロールでしたねw