タナボソ さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
素晴らしいです
凄く良かったです。
幼少期に何気なく発した言葉によって思わぬ喪失を強いられ、喋ることが出来なくなってしまった少女、順。彼女を始めそれぞれ鬱屈した気持ちを抱える少年少女達が、地域交流会でのミュージカルを演じることを目指して徐々に心を開き、お互いを知り、様々なことへの気づきを通じて成長を遂げる青春群像劇。
まず、ど頭からから普段TVアニメを観ている人間にとって、脚本家、岡田麿里の名前を意識せざるを得ない展開がある訳ですよ。
順が喋れなくなってしまったきっかけ、コレが実に露悪的で意地が悪い。それでいて、一方では良かれと感じていたことが、別の側から見るとまるで違う意味になる仕掛けの上手さがある。
しかもそこで用いられているモチーフが、ただ不快感をもたらすためだけに持ち出された訳ではなく、後々にも活かされてくるんですよね。もうここだけですげー面白いなーって。なりました。
非常に練り込まれたシナリオ感強く感じましたね。
美しい秩父の背景も、ここぞの場面では回り込みなどの技法を駆使した作画も見応えありますし、ディテールがしっかりした映画だと思いますので、特にアニメを熱心に追いかけていない方にこそ実際にご覧になっていただきたいんですけど、気になるであろうこと、と言うか、鑑賞前個人的に凄く気になってたことがあるんですよね。
それは『あの花の名前を僕達はまだ知らない。』の主要制作スタッフによる作品だってことですね。力量については、知られたことで。長井龍雪監督、脚本家岡田麿里は、この10月からのTVアニメ 新ガンダム『鉄血のオルフェンズ』放送も控えてますし。
でも、ですね、私がそうですし、同様に感じる方いらっしゃると思うんですけど、あの花、凄いあざとくないですか。泣かそう泣かそう、ってのが露骨に感じられて仕方なくて、物凄い苦手でして。なんでそんな設定終盤に盛り込むんだよ、脚本の都合じゃねえか、的にですね、揚げ足取りばかりしてしまってまるで楽しめなかったんです。
ひとまず、どうせあの花と同じでしょ、心が叫びたがってるんだ、なるタイトルからして、少年少女達がクライマックスでぎゃんぎゃん叫びまくって的危惧なさる方いるかと思うし、自分自身思ってたんですけど、違いますよ、とはお伝えしたい。
[映画短評]『心が叫びたがってるんだ。』2015年のアニメ、いや日本映画を語るうえでマスト。/くれい響
http://m.cinematoday.jp/review/2214
あの花ファンへの目配せもしっかりあります。文言こそ書きませんが、Tシャツ、DTM研究会の片割れが着ます。またキャラにも合ってるんですよね。
DTM研なんて、オタク当たり前世代ならではでありながら、部室ではボカロに伊勢佐木町ブルースを歌わせながら、カード麻雀に興じるなんてのも岡田麿里脚本らしさかもしれません。
喋れない順でもLINEと思しきSNSを用いてコミュニケーション取るだとか、今ここ感ある現代的アイディアもいいです。
個人的グッときたのは、ふれあい交流会の出し物を決めるまだ話し合いの中で、ミュージカルの提案に消極的空気が広がる中、ダンスの振り付けや、DTM研が音楽等から参加への意志を示す場面。自分らの好きなモノを持ちよって新しいモノを作り上げるのっていいよなと。ここもオタクが当たり前世代的でもあるし。
自分が学生の頃思い出しちゃいました。何もせず、何も出来ず、ただ他グループの陰口でガス抜きに興じるだけだった頃のこと。何かをしてみても良かっただろうに、せめて冷笑的態度やめろよって今なら思えるんですけどね。
好き度6/7
2015.09.19 TOHO新宿