zunzun さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
美しき異端
アニメ STEINS;GATE の浜崎博嗣監督(佐藤卓哉監督と共同)のデビュー作品です。浜崎博嗣が、テクノライズ、佐藤卓哉が、NieA_7とデビュー作がどちらも、イラストレーターの安倍吉俊(灰羽連盟・serial experiments lain)絡みという因果。安倍吉俊さん絡みのアニメは伝説的、カルト的な作品が多い。。彼のイラスト自体の魅力、退廃的な美意識、惹き付ける力、今となっては後にも先にも、あの世紀末であった頃でしか産まれえなかった才能だろうと感じています。ご多分に漏れずこの作品も、そんな安倍吉俊イズムみたいなものを継承したアニメでしょう。
こういった事を踏まえてこのアニメについて触れていきたいと思う。
その前に題名のTEXHNOLYZEとは何か。簡単に言えば攻核なんかに出てくる義体が一番近いです。サイボーグ化することですね。他にも細かい違いはあるのですが、正直話の大筋を理解する上でそこまで重要じゃない!? と自分は思っているので省きます。
舞台は? 架空の街「流9州」という場所が舞台です。しかも地元ヤクザが実質支配する地獄みたいな場所です。瓦礫だらけで、空はネズミ色。
主人公は? 第一話冒頭に出てくる「流9州」出身の少年櫟士(見た目は青年)です
後から出てくるアウトレイジの北野武並みの無双、龍が如くシリーズの主人公も真っ青な立ち回りを見せる漢、大西ではありません。
ヒロインは? 居ない。と思った方が身の為です。
暴力、血、姦淫、韻鬱が肌に合わない人は、残念ですが視聴はオススメできません。そこに待っているのは暗く美しく退廃的で荒廃した全くの不毛地帯だけです。
そして、悲しい事にBDのリリースは未だ無く、DVDのみでレンタルも店を選ばないと無い程、世間的にマイナーなので注意。もう10年以上前の作品なので。
このよく分からないけど、なんとなく高そうなハードルを越えて、ようやく第1話に辿り着くわけですが、ここでまた問題が。台詞シーン3分も無いんじゃ?(30分アニメです笑)昨今の5分アニメ作品群の台頭と比較してこれがいかに凄い事かと。(尺を贅沢に使いすぎ的な意味で)
ここで多くの脱落者を当時も産み出してしまったのは間違いようの無い事実でしょう。ですが、ここはじっと我慢してください。
具体的な話が動き出すのは第8話位からです。そこまで視聴出来れば完走出来る筈です。 中にはこの8話までの「間」の批判もありますが、自分はあの「間」を無駄とは思っていません。 このアニメは所謂、娯楽エンタメ作品とは違う、計算された独特の「間」で作られていて、それがこのアニメ独特の世界観に浸るために一役買っているからです。一役どころでは無く全てが「間」なのかも知れません。このアニメ。
もちろん、作画の圧倒的な美しさあってのこの「間」ですが。でも「流9州」を描ききるには必要だったんでしょう。とにかく素晴らしいに尽きる。。その点では設定は凝り過ぎていて難解とも言えるかもしれませんが、ただの「雰囲気アニメ」とするには、その画作りという面ではセンスが桁違いに思えます。
一見小難しいと思わせて、それはフェイントで、そこまで頭で考えなくても、偏執的なまでに尖った画作りを徹底した世界観に一気に引き込まれるアニメ。だけど、小難しく考えたい人にもやはりオススメ。紳士の真性哲学アニメですから。日本より海外で評価されるのも頷けます。その独自性はAKIRAや攻核と並び立ち、同列には括れない、暴力的なまでに超異端なSFアニメ作品です。
特に19話、20話はここまで観て来て良かったと素直に思わせてくれる出来です。
しかし、最終話は救いが本当にありません。今まで頑張って観てきた視聴者ですら心が折れてしまう程に救いが無いです。いや、頑張って観てきた人だからこそつらいのかもしれません。救いを求めて、こんなアニメなんて見たりしませんが、やはり完走する頃には少なからず誰しもこの意味不明なアニメに愛着が芽生えているはずですから。
どう解釈してもラストに救いを見出す事は出来ない。 だが、道中は気持ちよく浸れる事は間違い無い。中毒性の高い作品だからこそ、過度に期待して火傷しないように。