STONE さんの感想・評価
3.5
物語 : 4.0
作画 : 2.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
信長の先進性は未来人ゆえ?
原作は未読。
テレビ放送時は、位置付け的には同作品の実写ドラマ版の露払いみたいな扱いだったが、
内容は結構面白かった。
現代人が戦国時代にタイムスリップする設定実体は既に先行作品が幾つかあるために目新しい
感じはないが、従来作品の場合は先の歴史や科学技術などを中心とした進んだ知識を知っている
ことがアドバンテージになっているのに対して、本作品の主人公であるサブローは勉強が
嫌いだった高校生であるため、こういった強みをあまり利用できず、あくまで自身の人柄や
感性で、困難を乗り越えていくところが面白い。
ただサブローの持つこういった要素は現代に生きていたからこそ身に付いたものであることを
考えると、やはり未来から来た利点はあるのかな。
この現代から来た人間はサブローだけかと思っていたら、斉藤 道三を始め、続々と
現れたのはちょっと驚いた。
サブローは歴史を変えないようにと、自身の知っているわずかな知識の織田 信長であろうと
するが、現代人が知る信長のイメージは明智 光秀になった本当の信長より、サブローが扮する
信長の方が近く、ここで一種のパラドックスが生じているのが面白いところ。
史料などで知る信長の政策や行動からすると、感性や感覚が同時代人より進んでいることが
多く、正体が未来人であるからという本作品の設定はある意味利に叶っているのかな。
基本シリアスなSF要素の入った歴史ドラマだが、随所にコメディ要素もある。
まずサブロー自身の飄々とした性格それ自体はコメディ向きであるし、殊更笑いを取るような
シチュエーションを作らなくても、現代人と戦国時代人の感覚の違いで充分笑いが取れたり
するのが面白い。
設定自体は斬新ではないが、戦国ものとしては羽柴 秀吉と明智 光秀がこれまでにないもので
なかなか興味深い。
昔は信長の忠臣として善人として描かれることの多かった秀吉だが、本能寺の変に秀吉も
荷担していたという説が出てきたり、信長の死後に織田家を差し置いて天下取りを目指す行動
などから、野心を持つ一種の悪役として描く作品も増えてきた。
しかし、ここまで初期から腹に一物を持つ露骨な悪役として描いた作品はちょっと珍しい
ような。
この秀吉に対して、徹底して信長を守り助ける存在であろうとする光秀像というのもこれまた
珍しい。
話としては足利 義昭が画策する信長包囲網ができつつある過程で終わってしまったが、
史実としての信長の生涯はまだまだこれから、というわけで思いっきり途中で終わって
しまった感が強い。この先が気になる。
ロトスコープとCGを駆使した作画はかなり癖があり、好き嫌いが別れそうな印象。
個人的には特に嫌悪感はなかったが、前述の特性が活かされたとも言い難いかな。