STONE さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
りとうぐらし!
原作は未読。
作品を特徴付けるモチーフが「書道」に「島暮らし」と「また面白いものを
持ってきたな」というのが序盤の印象で、「作品の個性化のためのネタはいくらでもあるな」と
思った次第。
主人公である半田 清舟の五島で暮らす日々がメインだが、島での楽しい日々にはかなり
癒されるものがあり、この辺は「のんのんびより」に通じるものがあるかも。
この五島での交流は琴石 なるという少女がメイン。当初は大人と子供の関係から
「うさぎドロップ」的なものを想像していたが、いかんせん半田があまりにも精神的に
子供ゆえに全然そうならない。
しかし、この半田の精神的未熟さが、なるを始めとする島の子供達には、大人と子供といった
壁を取り払ってくれたようで、逆に効を奏していたみたい。
この二人のやり取りがこれまた楽しい。
精神的に幼かった半田の人間的成長も見どころの一つといった感じで、暴力事件の反省から、
父に五島に送られた半田だが、そこには書道家として一皮剝けるための措置としての意味合いも
あったみたい。
そんな半田が島での暮らしの中で色々な気付きがあり、書道家として変化を見せていくが、
書道に限らず、ある道を進む時に関係ないところに、道を進むためのヒントを見つけることは
よくあること。一見遠回りだと思われる行為が、実は一番の近道だったりする。
おそらく半田の未熟さは、これまでの人生において書道しかやってこなかったのが要因の
一つだと思われ、そんな半田にとっての島暮らしは幾つもの宝物を見つけたようなもの
なのかな。
終盤は一度東京へ帰った半田が再び島に戻ってくることで幕が閉じるが、ここでは感動の
再会といった感じの怒濤の盛り上げがなく、比較的淡々としたもの。
島に戻った半田が再び穏やかな日常に戻っていくことを示唆しているようで、個人的には
この穏やかな演出が結構好きでした。
コメディとしては都会人である半田と島の人々の文化の違いからくる笑いの部分が見所で、
ちょっとした異文化交流ものの趣きを感じる。
単に笑いだけでなく、五島独特の風俗もなかなか興味深いものがあった。
この五島らしさを感じさせる要素の一つとして、方言を前面に押し出したのもいい感じ。
割と最近の作品だと「いなり、こんこん、恋いろは。」、「坂道のアポロン」辺りも土地の
人間には方言を話させていたと記憶しているが、やはりこういう演出はその土地らしさを
感じさせてくれる。
逆に地方を舞台にしながら、全キャラ標準語の作品もあるが、標準語ゆえに文意を全国的に
伝えやすいというメリットがあるわけで、実際のところ、この作品も方言がきつすぎて、何を
言っているのか判らないこともしばしば。こういうのは一長一短なんでしょうね。
キャラも非常に魅力的で、特になるを始めとする島の子供達が印象的。この子供の中には
山村 美和と新井 珠子の中学生コンビも含む。
この子供達のキャスティングに本当の子供が声を当てていたのが印象的。
正直なところ子供ゆえに声優としての技量は低いが、本当の子供の演技は子供の声色を使った
大人の声優では出せない自然さがあった。特になるはキャラ自体が自然体な存在のため、見事に
はまった感が強い。
実際、子供声優の起用は作品によってはそこだけ浮いてしまうこともあるが、この作品に
関してはかなり良かったように思える。
全体的にはギャグものの面白さと、ハートフルストーリーのバランスが取れた良作といった
印象。