westkage。 さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
世界に誇りたい日本のアニメーション作品。リアリスティックな作画はもはや芸術の域に達している。‘TVドラマを完全に超えた’と言っても過言ではない、ハイレベルな作品☆
本作は新海誠によるアニメ映画作品です。新海誠の代表作としては「ほしのこえ・秒速5センチメートル」などがあります。2013年5月より公開、動員人数は12万人以上・興行収入は約1億5千万円を記録し、世界においても多々の受賞歴を持つ作品です。
あらすじ…高校一年生の主人公「秋月考雄(アキツキタカオ)」は雨の日になると、決まって午前中は学校をサボっていた。梅雨入りを迎えた6月のある朝、彼は学校に向かう地下鉄に乗らず、雨の日はいつも寄っている公園のベンチに向かっていた。学校をさぼって、雨をしのげる屋根付きベンチで靴のデッサンをすることが彼の習慣になっているのだ。タカオがベンチに到着すると見知らぬ女性が一人、ビールを飲みながらベンチに腰かけていた。しとしとと雨が降る早朝の公園、招かれざる先客が居た事にタカオは少し戸惑うが、この天候では他に居る場所も無い。いつも通りノートを広げ靴のデッサンを始めた。タカオは黙々と鉛筆を走らせるが、ビールを飲みながらうつろな目をしている女性がどうしても気になってしまう。横目で観察しているうちに、女性の顔がどこかで見たような顔である事に気付く。そしてタカオは尋ねる
「あの…どこかでお会いしましたっけ?」
「…え?…いいえ」
「あぁ、すいません。人違いです」
「いいえ」
わずかに言葉を交わし、またデッサンに戻る。すると女性は…
「…あっ。…会ってるかも」
タカオは驚き女性を見る。
女性は微笑を浮かべ立ちあがる。
そして彼女は傘を手に取り、去り際に詠った。
雷神の 少し響みて 降らずとも 我は留らむ 妹し留めば
(なるかみの すこしとよみて ふらずとも わはとどまらん いもしとどめば)
…やがて二人は、約束もないまま雨の日だけの逢瀬を重ねるようになるのだった。
総評として「世界に誇りたい日本のアニメーション作品。リアリスティックな作画はもはや芸術の域に達している。‘TVドラマを完全に超えた’と言っても過言ではない、ハイレベルな作品」です。
久しぶりに‘心震える良作’に出会えた感じがします。見てよかった。決してハートフルな作品でも無いのに私の胸は満足で一杯な気持ちになれました。作品の面白さがどうとか、凄くハマれる要素があったとか、そういう事では決して無いのです。逆に面白さだけで言えばもっともっと面白い作品は沢山あります。恐らく自分の今まで見たアニメの中でもベスト10位に入る事は無いかもしれません。しかし、もし私が「世界に紹介したいアニメ5選」を選ぶとしたら間違いなく「この作品を入れます」と言い切れるような作品でした。
私がそれほどまでに今作を気に入る事が出来たのは「圧倒的な完成度の高さ」だと思います。作画は勿論の事、物語の内容や構成、登場人物の心理描写なども含めて非常にハイレベルな仕上がりを見せているため「アニメとして…とかそういう問題じゃない。1つの作品として良かった!」と言い切れるのだと思います。ではアニメとして‘という問題では無い’と言う事であるならば、もし100%今作の登場人物と同じ演技力を持つ俳優が演じれば、表現する場所がTVドラマであっても同じく満足出来た作品だったのでしょうか?…それは絶対にNOです。ありえません。何故なら俳優は他の作品や時にはバラエティ番組にも出演しているからです。どれだけ上手く演じたとしても、私たちの脳からそのイメージが消え去る事はないのです。つまり俳優は所詮、その作品の人物を演じている以上の存在にはなりえないという事です。よって私は声を大にして言いたい!「ついにアニメはTVドラマに完全勝利したのだ!!」…と。
まだ視聴されていない方がいらっしゃるようであれば、是非視聴をおススメ致します。長さとしても1話完結の映画作品としては短めで約45分ほどです。きっと貴方の心に響く、ラブストーリーです。
*以下はネタバレレビューになるため閲覧注意です。
{netabare}
良かったシーンは沢山ありましたが、あえてひとつ挙げるなら
「タカオが告白したシーン」ですね。
ユキノは一瞬嬉しそうな顔を見せた後に、諭すように断ります。何故ならあまりにも歳が違いすぎるから、社会的な立場が違いすぎるから。きっと彼を苦しめるに違いないと、ユキノは大人の女性としてあるべき態度をとったのだと思います。しかしズタボロになっている彼女の精神では到底演じきれる…自分の気持ちを抑えきれる状況ではありません。そう言った雰囲気が流れているにも関わらず、タカオはあっさり引き下がります。ココはかなり評価高いですね。きっと大人の男性なら見抜くでしょう。ユキノが強引に迫って欲しい事に、私を泥沼から引き揚げて欲しい…でもこう言うしか無いんだ、という気持ちに。でもタカオはそれに気付けません。そりゃそうですよね。まだ子供ですし、12才も上のお姉さんにそう諭されては引き下がるしかないでしょう。凄く自然な展開だったと思います。あれで強引に迫ったら「ありえねーな」と思ってしまいます。その場合単純に‘女’として見ているだけなのか?とか思われそうですしね。
で、その後ユキノが必死に追いかけて階段の踊り場で再会。ここのタカオの反応も良かったです。子供っぽい態度でしたが…うん、これも自然だと思います。そして最後は涙で抱き合う二人…。いいなぁ、かなり良かったですよ。胸が熱くなりました。まぁ贅沢を言えばこのシーンで終わって、最後はホントちらっとだけその後の2人を匂わせるシーンを…なんてさりげない演出でも良かったかな~と思いましたが、いやいや十分満足なラストでした。
余談ではありますが、タカオから靴を作ってあげたいという申し出を受けて、ユキノが足の形を測らせるために靴を脱いだシーンがありましたが「ダイアナ」のパンプスでしたね。年齢やファッションを問わず人気のブランドで、価格帯としては15000円~20000円くらいです。確かに20代後半の女性が好みそうだな…と思いました。細かいですがその辺りのチョイスも良かったと思います。
{/netabare}