「秒速5センチメートル(アニメ映画)」

総合得点
87.0
感想・評価
3993
棚に入れた
18468
ランキング
173
★★★★☆ 3.9 (3993)
物語
3.9
作画
4.3
声優
3.5
音楽
4.1
キャラ
3.6

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ネタバレ

どらむろ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 3.5 音楽 : 4.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

男女のピュアな初恋と、男のほろ苦い人生。名作級恋愛映画ですが、ほろ苦い!

新海誠監督の第4作目。
ピュアで切なくも美しい初恋から、離れていく人生のほろ苦さを、美しい映像美で描いた1時間ほどの名作映画です。

非常に美しく、趣が深い名作なのですが…後味は、ほろ苦いです。
視聴者のこれまでの人生観によって、結構好みが割れるかも。
…それでも、アニメファンならば一度は必見の名作です。

{netabare}『物語』
大きく三部作に分かれる構成。
1話「桜花抄(おうかしょう)」
仲の良い初恋の小学生の男女が、転校によって引き離され、必死に逢いに行く。
非常~にピュアなラブストーリー。
まさにピュアな初恋の綺麗さを凝縮したような話でした。
…子供にとっての「転校」は人生の一大事ですな。
近年記憶に新しい限りでも「放課後のプレアデス」「天体のメソッド」など、少し前でも「夏色キセキ」とか。
子供の狭い世界観において、親しい友達や恋人との離別は圧倒的な壁です。
本作では最初、ヒロインの明里(あかり)が東京から栃木に引っ越した時点では普通に文通で済んでいたのに、主人公の貴樹(たかき)が鹿児島に引っ越す事が決まった時、貴樹は「二度と逢えなくなる」焦りから、行動を起こす…。
明里が栃木の時点でも一度も逢えてないし同じことなのに?
いやいや、栃木と鹿児島じゃあ、心理的にも絶望的な距離の差があるんですよ!
…第一話は、大人基準で考えたらアカンです。
貴樹が明里に逢いたい一心で泣きながら孤独な電車旅を続けた、明里が深夜まで待ち続けた、どちらにとっても正に人生を賭けた大冒険だったはず。
この一途さは、小学生ちょい過ぎた中学生という幼さ特有の純粋さあり、ハラハラドキドキしました。
…ついでに「携帯電話不所持」という時代背景もキモ。
ここで携帯なんてあったら、この第一話成立しませんねw

「どれほどの速さで生きれば、きみにまた会えるのか。」
というキャッチコピーですが、この時の二人は、全速超特急で突き進んだ結果、再会出来たのだと思う。
「初恋の純粋さ」という点では、桜花抄が…全盛期でしたねぇ。

…さて、ここで終わっていてもピュアで美しいラブストーリーだったのですが、そうはいかない!
「2話・コスモナウト」では鹿児島で高校三年になった貴樹に恋をする澄田花苗視点の、切ない青春恋愛劇に。
22分の短い尺の中、片思いと生き方に迷う少女のピュアなラブコメを描かれる。
あー、澄田ちゃん負けヒロインだわー。メタ視点で、1話観ている視聴者は、澄田ちゃんに目が無い事分かってしまうのが切ない。
貴樹めっちゃイケメンで優しい、これは罪作りな男ですなぁ…。
「初恋を引きずる少年と、負け確な少女の片思い」
…いやいや、実はこの時点ではそこまで引きずってはいなかったような?
貴樹は初志貫徹で明里との恋続ける(高3だし多分それなりに優秀だろうし、あと少しで実現可能)か、澄田ちゃんに乗り換えていれば丸く収まった。
…という冷めた展開には、実際なかなかいかないですね。

ラストの表題作「秒速5センチメートル」
大人になった三人の恋の行方は…!?
………ほ、ほろ苦い…。
桜舞い散る線路。花弁が秒速5センチメートルで落ちていく。
運命的?な再会を果たした二人が、振り返る…が、空気読まない(いやむしろ読んだのか?)電車が、ディスコミュニケーションを象徴していたのか…。
※魁!クロマティ高校風に
不良「あ!!ひょっとしてよ…中学生で別れた二人が大人になって再会、再び結ばれてめでたしめでたし!というラブストーリーなんだな!?」
北斗「普通に考えればそうなるだろう。だが…初恋は実らなかった」
不良「うわ~つまんね~~~いかにもホントっぽい初恋話だなー!」
北斗{netabare} 「明里は別の男と結婚していた。貴樹は別の女と付き合っていたが明里への未練を見透かされたか振られてしまった」 {/netabare}
不良「うっわ~つまんねー!けどすげ~~リアルな話だー!」
神山「確かに初恋の二人の恋が再び始まれば、ラブストーリーは格段にドラマチックになるだろう。でもそれは所詮ウソ…新海誠作品は甘くない」
(4巻89話より)

……すいません、ふざけすぎました。

初恋のほろ苦さってレベルの話じゃないですな。
実らないのは仕方が無いにしても、男の人生そのものが迷走していく様はちと残酷過ぎませんか…。
「1000回のメールでも、心の距離は秒速1センチも縮まらなかった」
うう~~~む。せつない。
「どれほどの速さで生きれば、きみにまた会えるのか。」
超特急しかないのでは。中学生の時のように。
物語ならばそうだろう。
けれど、リアルな人生だと、日々の生活に埋もれて、次第に生きる速さが失われていく。
面白くないけれどこれもまた人生…。

非常に示唆に富んだ名作で、おそらく私の理解は全然的外れかもですが。
「ガキの初恋の未練引きずってるんじゃねーよ」
というテーマかも?
いやいや、でも貴樹君の気持ちも分かる気がする…ところが、本作のほろ苦さなのかも。
…総じて間違いなく名作なのですが、後味は最悪なので、ちょっと評価は辛くしてしまった。
(それでも4点)


『作画』
非常に美しい作画が本作の持ち味です。
特に風景描写は抜群に美しく、ハッと目を見張る程です。
心情描写も過剰に説明しないで、背景の美しさで繊細に表現されているのが素晴らしい。
キャラ作画も明里ちゃんはめっちゃ美少女で萌えますし♪
作画が良いので、内容の好みに関わらずに高評価したくなります。

『声優』
水橋研二さん、近藤好美さん、花村怜美さんいずれもピュアで良い演技でした。
水野理紗さんはプロだけに一人抜きん出てました。

『音楽』
主題歌「One more time, One more chance」が抜群に心に響く。
あまりの切なさに涙腺が…!
ほろ苦いぃぃぃ!
映像美だけでなく音楽面でも良いです。

『キャラ』
貴樹は高校時代は理想のイケメンだったのに…。
私は男なので彼には同情的、女々しいとは思わんですよ。
頑張って生きていると思いますが…女性は良く見てますねぇ。

明里ちゃんはめっちゃ美少女、萌えアニメのヒロインに負けてない可愛さです。
中学生の女子で深夜まで一人待つ行為は、色んな意味で人生を賭けた大冒険でしたよ。
(このシーン不自然と見るのは無粋ですよ。多分このあとめっちゃ怒られた、けどそれ覚悟してたと予想)
…女性の方がしたたか、という事なのかなぁ。

澄田花苗ちゃんは負けヒロインですが、非常に良い子で可愛かった。
切ないけれど、人生の試練乗り越えて生きていける希望が。
お姉ちゃんが良いキャラでした。

…本作はキャラ自体の魅力はあまり関係なく、少年A、少女BとC、でも差し支えない構成。
決してキャラがダメという事では無くそういうタイプの作風だと思う。
私は貴樹も決して嫌いじゃないですよ!

『追記』
4.1点。私はあにこれの中では採点甘めなので普通レベルの良作にもホイホイ4点台付けてしまうので、これ程の名作級にしては意外と低過ぎる!もっと加点したい!
…我ながら意外でしたが、意外と好きにはなれなかったのかも。{/netabare}

投稿 : 2015/09/04
閲覧 : 382
サンキュー:

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