ブリキ男 さんの感想・評価
4.2
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
どこにだって いつにだって れいんはそこにいる
日本の一般家庭にネット環境が少しずつ導入され始めた時代1998年。電脳世界に宿った精霊の様にどこからともなくレインは現れました。
本作品で描かれる世界はそれよりずっと後の時代、NAVI(PCの事)によるワイヤードと呼ばれるネットワークが広く普及した近未来のお話。人はワイヤードとリアルワールド(ワイヤードの対の意味で作中で用いられる言葉。)の狭間で悩み、傷つき、繋がって行きます。
lainで描かれるネットワークの概念は、私達が現在呼び習わしているWebを含みますが、定義としてはさらに広範な意味を持ち合わせており、もし別の言葉に置き換えるなら「繋がり」という言葉が最も適当かと思われます。
人と人とが会話をする時、噂話を聞きかじる時、テレビを見る時、書物に目を通す時、音を聞いたり、食べたり飲んだりする時にも、そこに繋がりが生まれるのです。人は孤独な生き物ですが、生きている内には、また死んだ後でも、いつだって何かと繋がっていて、残った者たちの心の中に長く概念として存在し続けます。恐らくは完全に消えてしまう事など無いのでしょう。あるいは私達の存在はもっと濃密なもので、生死の状態に関わらず、無意識の内に巨大な思念を持つ生き物(例えばこの地球とか)の糧になっているのかも知れません。レインとはそんな事を考えさせてくれるアニメなのです。
一度聞いたら耳から離れない不気味なイントロから始まって、物寂しげな響きが美しいOP曲「DUVETED」、本編を経て、終わりは慟哭の様なエンディングの「遠い叫び」、続くエンドカードと、どの部分を切り取っても斬新で、当時の目から見ても時代を行過ぎている印象が明白でした。10年あとに放映されれば、やっとこさ時代が追いついてもっと高い評価を得られたかも知れないであろう、言わずとも知れた名作中の名作ですが、ツイッターやLINE、ここ「あにこれ」の様なコミュニティサイトが次々と現れ、多くの人がそこに身を置く様になった今でこそ視聴して欲しい預言書の様な作品の一つでもあります。
本作品の監督、中村隆太郎氏の手がけた「神霊狩/GHOST HOUND」と神霊狩と原作(士郎正宗氏とProductionIG)を同じくする「RD潜脳調査室」も関連したテーマを扱っていますので、lainを見てご興味を持たれた方はそちらの視聴もお勧めします。
※作画や新人声優さん達の技量を含むので点数は低めですが、個人的には最高評価とします。
※ナレーションという言葉の使い方が不適切だったので修正しました。2016.05.10