どらむろ さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
下品だが活力溢れるB級サンライズ美少女ロボット物。良作ではないが印象に残る力作
サンライズお家芸のロボットアニメの中では(良い意味で)B級らしい活力を感じる力作でした。
ヒロイン・アンジュ初め、バイタリティー溢れるキャラクターや成長ぶりが魅力。
サンライズロボット物としてはクオリティー低めなのと、良くも悪くも古典的なお色気要素満載、これが下品に映るのが難かも。
ストーリーのドラマ性や意外性は抜群、序盤やや助走期間あるものの波に乗ってくれば以降はグイグイ引き込まれる面白さあり。
かなり好みが割れる作風で、万人には受けないと思われます。
嫌悪感感じた方は切った方が良いかも。
ただし序盤詰まらないだけなら、9話くらいまで待てばかなり面白くなる可能性あり。
{netabare}『物語』
設定や世界観は「機動戦士ガンダムSEED」を少し彷彿とするテーマ「差別や価値観の対立」
これに魔法やドラゴンなどのファンタジー要素を加味、でもロボットで戦うサンライズらしい作品です。
SFな「ガンダムSEED」に対し、本作は「ファンタジー」っぽく、やたら民度の低い民衆も含め、ガンダムSEEDで描きたかったテーマ「異なる存在への嫌悪や差別」をより分かり易く描写している印象でした。
…良くも悪くも分かり易い舞台背景なので、割とトンデモな展開やモブの反応には少々戸惑います。
だが、ここが実は本作の持ち味の一つです。
サンライズの前作「革命期ヴァルヴレイヴ」がツッコミ所だらけでギャグと化していたのに対し、本作は(まあ人々の価値観とか、こういう世界観なんだなー)と早い段階で割り切る事が出来たのが、本作の(B級ではあるが)エンタメとして楽しみ易かった所以なのでは…。
…世界観の遊び心も中々。
アウラの民に日本文化っぽいけど我々の時代とはヘンテコになって伝わってたり、諸々の要素も、SFとファンタジーらしさ出ていて面白い。
B級だけど。
本作の醍醐味はヒロイン・アンジュのキャラクターと成長にあり。
序盤はウジウジと不満ばかりで「痛姫」と視聴者からも作中キャラからも言われちゃうが、紆余曲折のドラマを経て、予想の斜め上をいく大成長を遂げていく。
…アンジュが覚醒前の序盤が今一つ面白くないのが難。
百合やアンジュが孤立する展開も観ていてあまり気分良くないのも難。
でも、ここで切ってしまうのは勿体無いです。
尻上がりにグングン面白くなりますから!
反目していたヒルダと仲良くなる辺りから、以降は面白いです。
アンジュのナイト役なタスクとのラブコメの波動が良い。
かなりコテコテなラッキースケベ展開など、悪く見ると下品…なのだが、これもギャグの一環として本作の持ち味なので。
サービス的に見ても、良くも悪くも意外に嬉しくない感じです。
昔のアニメの大らかなサービスシーンな感じ、これを下品と見るか時代遅れと見るか。
確かにそうかも知れない…けれど、まあ、こういうのもご愛敬だと生暖かい目で見るのも悪くは無いw
…アンジュとタスクの絆とラブコメ要素は、本作全編を通しての見所となっていくので、ベタでもジャレ合うイベントの積み重ねも無駄ではないです。
本作の魅力は「活力あふれる人間賛歌と、汚くても本音の生き様」
確かに全般的にあまり上品な作風では無いんですけど…
タテマエではなく、ちゃんと本音で向き合ったり生き抜く意志を感じます。
嫌いな相手はハッキリと嫌いと言い合ったうえで、共闘して絆が生まれたり。
世界観やテーマ自体が「偽りの世界を打ち砕け!」な意気込みに溢れている事もあり、(序盤以降は)あまりウジウジ悩まずに、真っ直ぐ迷わずに突き進む!
1話辺りのドラマ性が高く、終始物語に引き込まれる構成は見事です。
後半以降、世界の秘密と真の敵が判明していく流れは意外性あり興味深かった。
ラスボスを分かり易いゲスにする事で、アンジュ達が何をすべきかも分かり易いのも良い。
総じて
全編を通してのテーマ(アンジュが最終回までに出した生き方の結論)が終始ブレずに明確、序盤以降は高いドラマ性と意外性で飽きさせないストーリーでした。
全編に漂う下品さ(エロだけではなく、本音剥き出しのキャラドラマ)が好み割れるところかも。
…古い富野監督作品を少し彷彿とさせるので、本音剥き出しの上品では無いキャラドラマは悪くないと思った。
ただ、冨野節のような印象に残る気の利いたセリフ回しが無いので、特別に印象に残る作品とまではいかない。
…物語評価は4.5か迷うところ。
体感的に、序盤除けば文句なしに楽しませてくれたのですが…
では、もう一度繰り返し視聴したいかと言われると、一度で満足な気もします。
下品さとそれ故の活力あふれる魅力的なアニメでしたが、名作級には及ばないです。
(私的に、繰り返しの視聴に耐えうる事が名作の条件)
『作画』
サンライズにしては作画があまり良くないのが難。
キャラデザは十分美少女揃いだが、やや古く、安っぽい感じも。
ロボットバトルも最低限の盛り上がりはあるも、近年のサンライズロボット系としては見劣りする。
作画も不安定気味。
…とはいえ、これらも致命的な欠点ではないと思う。
お色気面では、良くも悪くも意外とエロくはない。
ただし、作画面で大満足ではないのが、繰り返しの視聴意欲に繋がらぬ所以でもあり。
ストーリーは既に分かってしまっているので、作画か良くないと…
『声優』
アンジュの水樹奈々さんが活き活きと熱演。
タスクの宮野真守さんとの掛け合いは絶品でした。
本作は水樹奈々さんあってのアンジュと言える位にはまり役なのでは。
ヒルダの田村ゆかりさんが一番熱演。
エンブリオのキモさも関俊彦さんお見事。
モモカの上坂すみれさんも可憐でした。
この他全般的に往年のサンライズアニメで活躍したベテラン多くて安定感あり。
『音楽』
水樹奈々さんの楽曲で押してきます。
流石は奈々さん良曲かつ見事な歌、ちゃんと主題にも沿っているので音楽面では優秀でしょう。
『キャラ』
なんといってもヒロイン・アンジュのキャラクターが鮮烈です。
終始クズです。多分アニメヒロイン史上でもかなり珍しいタイプなのでは。
序盤のクズっぷりは危うく視聴断念が脳裏を過ってしまったが…
「痛姫様」の覚醒と成長ぶりが素晴らしかった。
クズ…と言いましたが、単に「自身の感情に素直」なだけです。
理不尽な運命に最後の最後まで太々しく抗う。
嫌な事はハッキリと拒絶する。タテマエなんぞ知るか!
…好き嫌いは割れると思います。
正直あまり好きにはなれないです。
好きにはなれないけれど…強烈な魅力を感じる名ヒロインでもあります。
…彼女を持って5点か迷うレベルの名ヒロイン。
終始アンジュの騎士として頑張ったタスクは良い男だった。
普通ならありがちなキャラだが、アンジュとの絡みでこそ輝いた。
あとモモカちゃんマジ天使でした。彼女が居なければ割とマジで序盤切りしていた恐れが。
エンブリオは、とにかくキモかった。
ここまでキモい敵役は中々いまい!
でも、そこが良い。
全般に我儘なキャラ多いのが本作の魅力です。
特にヒルダとサラマンディーネは輝いていた。
クズな妹も最終回で意外なカッコ良さに成長。
モブの愚民っぷりもステキ。
全般にキャラの扱いに差があり、キャラクター層は不安定な感も(体感的な面白さの割に良作と評し難い所以){/netabare}